4月入学はわずか2人 新入生が来日できず…30人超が半年遅れ 静岡市の日本語学校

静岡市にある日本語学校「静岡インターナショナルスクール」。1991年に開校し、インドネシアやミャンマーなどから、例年90人ほどの留学生を受け入れています。川島範士校長は、感慨深そうに留学生を見つめます。

画像: 4月入学はわずか2人 新入生が来日できず…30人超が半年遅れ 静岡市の日本語学校

静岡インターナショナルスクール 川島範士校長
「こうして学校に登校できるようになったのが、11月4日からです。これが普通だが今年に限ってはうれしい」

4月入学の新入生「もっと友達と一緒に授業したかった」

画像: 4月入学の新入生「もっと友達と一緒に授業したかった」

 世界的に蔓延した新型コロナウイルス。感染拡大を防ぐため、日本も厳しい入国制限が設けられました。県内に58ある日本語学校でも、多くの留学生が来日できない事態となりました。この学校も予定していた64人のうち62人が母国での待機を余儀なくされ、4月に入学できたのは、わずか2人でした。

Q 入学したときに教室に2人しかいないことを知ったときどんな気持ちだった?

4月入学の1年生:「寂しかったです。もっと友達と一緒に授業したかった」

 日本語を学ぶ意欲を失わないように、学校では入国を待つ生徒に週1回オンラインで授業をしました。予定より半年遅れて今月入学したスリランカ出身のニローミさんは、当時をこう振り返ります。

Q 日本に来る前は大変でしたか?

11月入学のニローミさん:「大変でした…」

Q 学校で勉強するのは楽しみだった?

ニローミさん:「はい」

来日後、2週間は自宅待機

静岡インターナショナルスクール 川島範士校長
「(入学が)半年遅れるというのは想定になかった。日本留学のモチベーションを少しでも高めていこうという発想だったが、やはり早く行きたいという声が圧倒的に多かった」

画像: 来日後、2週間は自宅待機

 政府は主に留学など長期滞在者を対象に、先月から入国制限を緩和しました。ただ、空港での検疫体制を確保するため、入国できるのは1日1000人程度。これまでに来日できた留学生は、8000人ほどにとどまり、例年の15分の1ほどです。

静岡インターナショナルスクール 川島範士校長
「今、待機の学生が何人もいるので、宿題を届けたり、様子を見たり、健康チェックに行きます」

 この学校にも、ようやく新入生が入ってきました。先月中旬から30人以上が来日。ただ、すぐに授業を受けることはできません。2週間の自宅待機による経過観察が義務付けられているからです。学校ではその間、生活必需品や宿題を週に1度、生徒の宿舎まで届けています。

静岡インターナショナルスクール 川島範士校長
「はい、おはよ?。健康チェック」

Q 挨拶を交わすのは?

川島校長:「誰かが声かけて見てくれているという安心感は大きいでしょうね。ずっと1人で部屋にいたんじゃ…。本当に知らないところで、不安ですよね」

 2週間の待機期間を終え、学校生活をスタートさせた生徒たち。語学力に差がある4月入学の同級生と今は別々の教室で授業を受けますが、学校はカリキュラムの遅れを取り戻せるようにする考えです。

Q 友達はできた?

11月入学のニローミさん:「はい。できました」

Q みんなと勉強できて楽しいですか?

11月入学のニローミさん:「はい。楽しいです!」

4月に入学した1年生:「(これからは)色々な国の友達と一緒に勉強できるのは楽しみ」

 戻りつつある日常生活。しかし、失った半年間の影響は小さくありません。

「夢」と「責任感」が原動力に

静岡インターナショナルスクール 川島範士校長:「大きな目標が日本語能力試験。できるだけ高いレベルに合格しようということと自分の進路の決定です。それが4月に緊急事態宣言が出て授業が休止に追い込まれて…」

 在学期間は2年。2年生は貴重な1カ月間が休校となりました。さらに、専門学校や大学に進む判断材料となる年2回の「日本語能力試験」は1回目が中止となりました。

 そんな逆風を乗り越えたインドネシア人のファジリさん。先月、専門学校の試験に合格しました。原動力となったのは「夢」と「責任感」でした。

2年生 ファジリさん(インドネシア):「留学生にとって、コロナの影響で本当に大変なことになっています。専門学校卒業してから、日本で就職しようと思っている。私たちにとって日本語学校は本当に大切なもので、後輩も面倒見なきゃいけないから、お互いに助け合わなきゃいけない」

夢は研究者

苦境に立たされながら、新たな一歩を踏み出した新入生もビジョンを描いています。

11月入学のニローミさん:「私の夢は有名な(経済学の)研究者になることです。(これから)もっと友達と勉強します!」

 夢への大切なステップを失いかけた留学生。危機に直面したのは学校側も同じでした。

画像: 夢は研究者

 学校を知ってもらう最大の機会となる現地での入学説明会を、今年は中止せざるを得ない状況です。そんなピンチを救ってくれたが卒業生でした。

静岡インターナショナルスクール 川島範士校長
「アジアで主に6カ国ぐらいから受け入れているが、そのほとんどが私たちの卒業生が関連する機関から受け入れる。こういう事態になっても、すぐに学校の事情をその卒業生を通じて詳しく話もできる」

 卒業しても途切れないつながり。母国に戻った卒業生たちが学校に代わって、生徒の募集をサポートしています。

 世界的に収束の兆しがみえない新型コロナの感染。この学校でも、新入生の3分の1にあたる20人ほどは、まだ来日できていません。それでも、後ろ向きにならない理由。それは危機感を上回る使命感です。

静岡インターナショナルスクール 川島範士校長:
「安全な生活を維持していくために学ばなければならないことは、日本語だけじゃありません。日本社会で安心に安全に生活するための考え方を身につけさせていくんだということは、日本語の勉強のほかに大きな一つの重点とする目標です」