思い出の帯で世界に一つだけの椅子を 「母が大事にしていた帯なので…」 静岡・藤枝市、静岡市

 繊細な刺繍(ししゅう)が生み出す色鮮やかな絵柄。着物を彩った帯が、椅子として生まれ変わりました。

画像1: 思い出の帯で世界に一つだけの椅子を 「母が大事にしていた帯なので…」 静岡・藤枝市、静岡市
画像: 松田和佳アナ(右)

松田和佳アナ(右)

松田和佳アナウンサー:この椅子は帯一本使って作られている?

オフィス・デコ 白井純子代表:「そうなんです。余分な生地は使ってないですね。見た目だけではなくて、座り心地がいいようにこだわっているので、是非お座りになってみてください」

松田アナ:ほんとだ、思いのほか自分が沈むような、安心感のある座り心地があります。

白井さん:「背筋も伸びますよね」

松田アナ:そうですね! 何より贅沢な帯が使われているので気持ちもシャキッとします。

画像2: 思い出の帯で世界に一つだけの椅子を 「母が大事にしていた帯なので…」 静岡・藤枝市、静岡市

 同じ柄はなく、まさに「世界に一つだけの椅子」。自分が持っている帯を使って作ってもらえるのが最大の魅力です。

 仕掛け人は、店舗などの内装デザインを手掛ける白井純子さん(65)。このいすを「obi:s」と名付けました。デザインのきっかけは、よく着物を着ていたという母の生前の言葉でした。

白井さん:「母が生前にタンスの整理をしている時に『(帯は)なかなか小物ぐらいにしかリメイク出来ないので、何か利用できないかしら』っていう母の言葉が、ちょっと頭のこの辺にあったんですね。メーカーさんの(椅子の)張地見本を見て、あっ、これもしかしたら帯もいけるんじゃないかな、ということで、それがきっかけで」

 3年前にアイデアを形にすると、その年に国内最大級の生活雑貨の国際見本市で、約260社の中から「ベストサスティナビリティ賞」を受賞。見た目の美しさに加えて、古き良き日本の伝統を再生させたことが高く評価されました。

 「obi:s」の生産は、ウェブサイトや展示会を通じた完全受注制。取材に訪れたこの日も、帯を持ち込んだ人が。

白井さん:「これ名古屋帯なんですね。これを前にしてもいいですけど、残った無地の部分は座面と脇」

お客さん:「すごくきれいですよね。こういう風にして再生出来て、毎日それを見て生活できるのもいいですよね」

帯を椅子に甦らせるのは、藤枝市の職人

画像1: 帯を椅子に甦らせるのは、藤枝市の職人

藤枝市「村松椅子店」

白井さん「村松さんお世話になります~こんにちは!」

松田アナ:これが実際にお客様の帯ですか?

白井さん:「そうです。裏生地を、こういう感じで織り込んでもらって、この上からステッチをかけて(縫い合わせて)もらって」

村松椅子店 村松廣次さん:「そうすると厚みが増えるんです。厚くなる分だけ重量感がでる。無理なことを注文聞いてくださって」

白井さん:「無理な注文も聞いてくださって」

村松さん「試行錯誤で!(笑)」

画像2: 帯を椅子に甦らせるのは、藤枝市の職人

 静岡市の木工業者が作ったフレームに、藤枝市の職人が帯を張って仕上げる「obi:s」。白井さんは完成時に最も帯の絵柄が美しく見えるようにデザインしています。

画像3: 帯を椅子に甦らせるのは、藤枝市の職人

白井さん:「思い出の帯、思い入れのある帯なので、形にしてあげたいというのがある。(村松さんには)本当にわがままを聞いていただいています」

村松さん「 (帯を張地にするのは)今までにないです。初めてです。うまくできるかなっていう不安はありましたけども、(お客さんに)喜んでもらえる、そういう気持ちは十分ありますからね」

 値段は、一脚15万円。個人からの注文を中心に、これまでに20脚ほど受注しました。

静岡市の女性は亡くなった義母の帯をリメイク

 実際に「obi:s」を購入した静岡市の横山さん。数年前に亡くなった、義理の母親の帯をリメイクしたといいます。

横山さん:「遺品を整理していて、着物とかお洋服とかいっぱいあったんですね。(自宅に)親戚も見えますし、お母さんの大事にしていた帯という感じで喜んでいるもんですから、本当に良かったと思います」

画像1: 静岡市の女性は亡くなった義母の帯をリメイク

横山さん:「仏さんの前に置いて、お線香をあげたりするのに、これを置いて、この椅子で拝んだりします。(義理の母親は)おおらかで、とても良くしていただいたんです、私。それだから余計に記念のものを作りたいと思ったんです」

画像2: 静岡市の女性は亡くなった義母の帯をリメイク

 日本の伝統文化である着物。着る機会が減りつつある中、家のたんすで眠っているのはもったいない。思い出と一緒に帯をよみがえらせることが白井さんの仕事です。

白井さん:「若いころに使われていたものとか、タンスに眠っているものを、処分される前に思い出を可視化してあげたい。家族の中に椅子という形でそばに置いて、思い出を語り継いでもらいたいというのが理想ですよね」