静岡県知事選挙の争点の現場を行くシリーズ。1回目はリニア問題です。この計画の影響を受けている様々な立場の人々を取材しました。

争点の現場(1)ウナギ養殖業

争点の現場の人たちはどんな思いで、今回の選挙を見ているのでしょうか。

画像: 争点の現場(1)ウナギ養殖業

 大井川の恩恵を受けてきた流域市町。焼津市でウナギの養殖をする「共水(きょうすい)」もその1つです。

共水
永井光彦所長:「こっちが自噴といって、ひねれば勝手に出てくる水ですね。基本ここにウナギがあるときは出しっぱなしで、毎分3トンくらいの水が出るといわれている」

 敷地内に32ある養鰻場(ようまんじょう)。湧き出ているのは地下125メールから汲み上げた大井川の地下水です。
 池を満たす水に加え、ウナギを新鮮な状態で出荷するために行う「活かし」と呼ばれる工程でも、大量の水が必要になります。1日に使用する水はおよそ2000トンです。

共水
片岡征哉代表取締役:「南アルプスに降雨した雨や雪がずっとしみ込んでこの地に湧き出ているといわれている、その間にいろんなミネラルがこの水に含まれて湧き出ているので、人工的にウナギに与えられないようないい成分がウナギに与えることができる」

 去年10月27日、国の有識者会議は地下水について、「大井川の中下流域の河川流量が維持されれば、トンネル掘削による中下流域の地下水量への影響は極めて小さい」との座長コメントを出しています。
 これに対し県は「流量が維持されるという前提が現実的ではない」と反論しています。

共水
片岡代表取締役:「地下水の水の重要性をよく知っていただいて、JRや国に対して時には厳しい意見をしっかり言っていただいて私たちが安心して暮らして生きていけるような、私たちの産業がこれからも続けて行けるような状況を作り出してほしい」

争点の現場(2)茶農家

茶農家にとっても水が減少すれば、死活問題となります。

佐京園
佐京裕一郎さん:「(リニア工事は)反対ですね、デメリットは感じるがメリットは感じないというか必要なのかもぴんと来ない」

画像: 争点の現場(2)茶農家

 およそ300年続く島田市の農園。普通の茶に比べて甘味のある深蒸し茶が売りですが、この味にも大井川の水が深く関わっているといいます。

佐京園
佐京裕一郎さん:「最初にやる工程が蒸し、蒸す工程になるが、その時に使われる機械ですね。お湯になって湯気になって減ったらまた自動にどんどん水位を保っているので、ジャバジャバジャバジャバ水を使って蒸気を作っている感じですね」

 茶の消毒などとも合わせると、1日数百リットルの水を使うといいます。

佐京園 
佐京裕一郎さん:「(次のリーダーは)ちゃんと誰が見ても納得できるような数字なり根拠なりを示してそれに沿ってやっていってほしいと思います」

争点の現場(3)静岡市井川地区

一方、リニア工事によって恩恵を受ける地区もあります。

画像1: 争点の現場(3)静岡市井川地区

井川自治会連合会
栗下浩信会長:「水が本当になくなってしまったり、それはダメだと思う。だけどそういうものをちゃんと担保すればリニアはすごくワクワクしますけどね」

 静岡市の山あい井川地区で自治会長を務める栗下浩信さん(60)。リニア新幹線の工事をめぐり、7年ほど前からJR東海と協議を重ねてきました。契機となったのは、市とJR東海が合意した井川地区の「県道トンネル」です。

齊藤慎一朗記者:「静岡市の中心部と井川地区を結ぶ道は急カーブの山道が長距離にわたって続く。ここにトンネルができることで、交通アクセスが良くなることを井川地区の住民は期待している」

画像2: 争点の現場(3)静岡市井川地区

 2018年に静岡市とJR東海が井川地区にトンネルを作ることで合意。工事費用140億円はJR東海が全額負担します。この合意は事実上、リニア工事の推進が前提となっているのです。
 トンネルの距離は4,6キロ。道路幅は現在よりも広くなる予定です。リニア本体工事を行う際も、大型トラックがこの道を通過できるというJR側のメリットもあります。井川地区にとって、このトンネル開通は悲願だったと話します。

井川自治会連合会
栗下会長:「井川の地域も昔からの念願というか思いが叶うし。(静岡市との)交流人口も増えてくれば井川自体の経済も潤って仕事もでき、人口も増えて行って地域として成り立っていくかなと、トンネルにはそのような効果があるのではないかなと思います」 

 県道トンネルは、今後手続きが整い次第着工し4年後の完成を予定しています。

 新型コロナの打撃を受けている井川の旅館からは、開通を急ぐ声も上がっています。

大西屋旅館
海野利重女将:「(トンネルの)工期は先が長いので、コロナの影響次第で底まで経営体力が持つかなと不安はものすごくあるかなと思うが」

画像3: 争点の現場(3)静岡市井川地区

この旅館の売りであるジビエ料理は、冬に旬を迎えます。書き入れ時の冬に抱える不安が、雪で通行止めのおそれのある井川の山道です。

大西屋旅館 
海野女将:「観光業としては外からお客様を呼んでくださる、外からというのは県内も含めてだがお客様を呼んでくださる活動をしてくださる方、期待しております」

 栗下さんは水問題についての議論は大切としたうえで、こう指摘します。

井川自治会連合会  
栗下会長:「早く前に進まないとやっぱり水の問題だってリニアの問題だって静岡だけの問題ではないと思う。議論している人はいいが周りに生活している人がいる、生活している人がそういう議論をしている間に苦しむ人が出てくれば本末転倒だと思う」

環境問題に地域振興、生活に直結する不安、様々な住民の思いが絡み合うリニア問題。4日後、県民が選ぶ次のリーダーは、こうした問題とどう向き合うのか。静岡県知事選の投票は今度の日曜日20日です。

This article is a sponsored article by
''.