JR社長「(地元の懸念は)想像以上」 川勝知事「社長は目が覚めたのでは」 リニア巡りJRと市長町長が初めての意見交換会 静岡県
18日、静岡市内のホテルで、JR東海の金子社長と、静岡県の大井川流域市町の市長町長による初の意見交換会が開かれました。冒頭の金子社長の挨拶は、まずお詫びから入りました。
JR東海 金子慎社長:「JR東海社長の金子でございます。まず中央新幹線の計画に起因をして、流域の皆さまには水利用の問題を中心に大変ご心配をお掛けしていることについて、お詫びを申し上げます」
そして、こう続けました。
JR東海 金子慎社長:「これまで私ども皆さまと直接お会いをして、お話をすることができておりませんでしたが、まず皆さま方のお話を聞かせていただくことがスタートであると」
大井川の流量が減る恐れがある問題で、現在、工事がストップしているリニア新幹線静岡工区。これまで流域市町との対話の窓口は、県に一本化されていました。
ただ、去年6月には、川勝知事と金子社長のトップ会談が行われ、会談は決裂。
JR東海は、流域市町に直接説明する機会を得たいとして、今回、初めての意見交換会が実現しました。金子社長は、「地元の同意なしに着工はない」との考えを直接、市長らに伝えました。
JR東海 金子慎社長:「流域の皆さんのご心配ご懸念をそのままにして、工事を進めてはならない」
意見交換会の撮影は金子社長の挨拶までで、その後は非公開でした。
島田市長「何を一番心配しているのかストレートにぶつけた」
1時間半にわたった会議終了後、流域市町の市長らは…。
島田市 染谷絹代市長:「現実にまずはお会いして、流域のこれまでの思い、何を一番心配しているのかと言うことをストレートにぶつけてきた、そういう場だったと思っています。」
出席者によると、市長らからは厳しい意見が相次ぎ、金子社長は主に聞き役にまわっていたといいます。
島田市 染谷絹代市長:「これなら大丈夫だと思えるだけの説明を尽くしていただかなければならないわけで、そこの努力をお願いいたしました」
川根本町 鈴木敏夫町長:「1つには残土の処理の関係、管理をちゃんとしてほしい」
藤枝市 北村正平市長:「例えば、今度の県知事選で、ルート変更もかなり議論がされている。そういうような事はJR東海自身が1つの選択肢として持って、これから議論した方が割と円滑にいくんではないかと。JRはリニア建設ありき、そこら辺と(地元の)思いのギャップをきょうは感じてくれたんではないかなと」
流域市町の声を聞いた金子社長は…。
JR東海 金子慎社長:「いろいろお話を伺って、まさしく想像以上と言うか、こういうところが本当に心配で こういう流域の皆様の心配を抱えて発言をされている首長の発言なので、しっかり話を聞いて、第一歩ということかと思います」
水問題などへの地元の懸念は、「想像以上」だったと感じたといいます。
JR東海 金子慎社長:「やはりそこは私どもの至らないところがあったかもしれないので、そこはしっかり心して対応していかなくてはならないと改めて思いました。またそういう思いもあって、なんとか理解を深めるために、こういう会を重ねることをしていただけないかと」
金子社長は、今後もこうした対話の場を持ちたいと要望したといいます。
島田市 染谷絹代市長:「第一歩として流域の思いが少しでも伝わったなら、やって良かったのではと思います。次があるかどうか分かりません。ご要望はいただいておきました。(市町の)総意がなければ次はない、そう思っていますので」
双方が今回の対話を「第一歩」と表現しましたが、市町側は、次の開催について明言を避けました。リニア開業に向けて、これが突破口となるかは不透明な状況です。
川勝知事「JR社長は目が覚めたのでは」
一方、川勝知事は、県抜きで行われた今回の意見交換会を、皮肉たっぷりにこう評価しました。
静岡県 川勝平太知事(21日)
「今回の会は有効であった。なんといってもJR東海社長の目が覚めたのではないか。説明すればわかってくれるだろうという非常になめた感じの住民に対する見通しをもっていたのでは。思っている以上に懸念が深かった、強かったと言った、それは知るのが遅い。この間の知事選を何と心得えているのか」
川勝知事は、リニア問題が最大の争点となった今年6月の知事選の直後、JR東海に「ルート変更」を要請する意向を明らかにしました。
静岡県 川勝平太知事(21日)
「1人の市長が、ルート変更について考えるべきじゃないかと言った。これは当然出るべくして出た議論。静岡県では、ルート変更や工事を中止しろとかそういうところまで踏み込まれている。今まで通りやっていくとだけ言っているのは、これは人間としての誠意に欠けるのではないか」