【特集】土石流災害で被災…クリーニング店営業再開までの4カ月に密着 準半壊に至らず市の支援受けられず 静岡・熱海市

特集は熱海市伊豆山地区で4カ月ぶりに営業を再開した老舗クリーニング店です。「再開の瞬間を待っていた」奮闘する夫婦の4カ月を追いました。

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 静岡県熱海市伊豆山地区でクリーニング店を営む、岡本尚子(おかもと・ひさこ)さん(69)。父親の代から続く70年の老舗です。

岡本尚子さん:「最初はとにかく早く泥を出して、本当に(再開)出来るんだろうかっていう焦りみたいのもあって不安でしたけれども、やっと皆さんに協力していただいて」

発災から4カ月。8日、ようやく店を再開させました。

店内は大量の土砂。店舗再開のめどは立たず

 7月3日。熱海市で発生した大規模な土石流。大量の土砂が入り込んだ店内。店にとってなくてはならないアイロン台やプレス機が壊れました。

 発災から6日。夫の政夫(まさお)さんは…。

Q.お店の再開の目途は?

A.「まだ、それは目途がついてない」

 目途が立たない店の再開。そんな中、2人を支えてくれたのは市内の他のクリーニング店でした。

 発災当時、店で預かっていた客の服は数十着。仲間の店が代わりに預かってくれることになりました。

長沼浩樹さん:「とにかくうちで出来ることはもう全て協力しますから」

岡本政夫さん:「申し訳ありません。甘えさせてもらいます。」

長沼浩樹さん:「お互い様だから、いいじゃないですか。頑張りましょう」

「お互いさま」。仲間に支えられながら、再開を目指します。

1カ月後…熱海市は「準半壊に至らない」と認定

 8月3日。1カ月が経ちました。この日は、保険会社が被害状況の確認に来ました。

岡本尚子さん:「きょうは査定をして、後は業者さんに見積もりを取って、それがどのくらい出るのかどうかで、私たちは1カ月が経っても前に進めているかどうか分からない」

 8月、被災地域の住宅の罹災証明を進めていた熱海市は岡本さんの店を「準半壊に至らない」と認定しました。その結果、修理費用にかかる市の支援が受けられなくなりました。

岡本尚子さん:「準半壊以下ていう判定が出ました。でも、結局、床まで行ったから、普通は床上浸水と同程度のはずなんですけれども。まあ極端に言うと瓦1枚、飛んだという一部損壊と同程度なんですから一円も出ませんて」

 店に欠かせない乾燥機やアイロン台は1台100万円を超えるものもあり、壁や床も取りかえるとなると総額1000万円がかかる見込み。

 再開に向けた長い道のりが続きます。

発災3カ月後の10月 補助金説明会に参加

 発災から3カ月。10月15日。被災した小規模事業者を対象にした補助金制度の説明会に岡本さんも参加していました。

岡本尚子さん:「結局、自分たちの保険で出来るものは保険でやって、もしそれが賄えないんだったら、こちらが補助しますってことですから。あとは機械の方を出来れば面倒を見て頂ければ」

 この支援制度を使って、一部が壊れた乾燥機やボイラーを修理。再開に向けた大きな一歩です。

(機械総額200万円のうち75%の150万円が補助金)

11月8日 被災4カ月…店舗再開に

アイロンをかける岡本さん…。

岡本政夫さん:「この瞬間は今まで待って待ってね。待ってたんだから。頑張ってやりますよ。いつも通り、これまで通り」

8日、待ちに待った再開です。

新規客:「いろいろ大変ですね」

岡本さん:「本当にありがとうございます」

新規客:「きょう、お花が出てたから、気持ちだけでもと思って」

 再開初日、丁寧に仕上げた甚兵衛やタオルを昔から付き合いのある旅館に届けます。

岡本政夫さんと旅館やりとり
旅館:「良かったね」
岡本さん:「お陰様で」
旅館:「うちも頑張りますから」
岡本さん:「こちらこそよろしくお願いします。本当にお陰様で何とか」
旅館:「大変だったね」

岡本尚子さん:「まだまだ全部(機材)揃ってないし、位置的にも雑然としてますけど、この店の中で仕事を出来たことは良かったと思っています」

 ようやく再開したお店。発災から4カ月が経っていました。