【完全版】未来を模索するお茶業界…「世界でいちばん濃い」ジェラートや1本1万9800円の超高級ボトリングティー 新しい楽しみ方に活路 静岡

 18日、静岡市葵区の静岡茶市場で新茶の初取引が行われました。新型コロナの影響で、去年は人数が制限されていましたが、今年はおよそ350人が参加。去年は禁止されていた試飲が解禁されたこともあり、茶市場は活気に包まれていました。

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未来を模索するお茶業界…「世界でいちばん濃い」ジェラートに 1本1万9800円…超高級ボトリングティー 新しい楽しみ方に活路 静岡

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 最高値で取引されたのは、JAふじ伊豆から出品された手もみ茶「さえみどり」。価格はなんと1キロあたり196万8000円。静岡茶市場での取引史上 最も高い価格となりました。

JAふじ伊豆 鈴木正三組合長:「4月1日に東部地域8JAが合併して、それのお祝いを兼ねていただいた。香りは本当に素晴らしいし色も鮮やか。言うことないんじゃないかな」

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2019年は初めて2位に陥落

 新茶シーズンの到来に花を添える話題ですが、静岡のお茶業界は今、深刻な問題を抱えています。農林水産省が発表した2019年のお茶の産出額で日本一となったのは鹿児島県。統計が残る1967年以降、全国1位を続けてきた静岡県が初めて2位に陥落したのです。静岡と鹿児島のお茶について、静岡県立大学で茶学総合研究センター長も務める中村順行特任教授に話を聞きました。

鹿児島は機械化 静岡は機械化しにくい場所も

静岡県立大 中村順行特任教授:「鹿児島の場合は静岡と違い、広大な茶園面積を誇るなかで非常に機械化されている。人が乗って刈り取るような機械で、非常に効率的にお茶を収穫していく。一方、静岡の場合は広大な場所、牧之原台地のような広大な場所もあるが、中山間地にも茶園が広がっていて、なかなか機械化できにくい所もある。収量的にも傾斜地などでは上がらないということでどうしても鹿児島に負けてしまう」

画像: 鹿児島は機械化 静岡は機械化しにくい場所も

 2020年の産出額では、静岡県が首位に返り咲き、鹿児島県は2位。しかし どちらも前の年を下回る結果となりました。お茶業界の衰退が続く現状について中村特任教授は…。
              
静岡県立大 中村順行特任教授:「私自身 お茶離れという印象はあまり強くは持っていない。ただし急須離れは確実に進んでいると思う。飲み方が昔とどんどん変わってきているという印象は強く受けている。単純に『お茶を飲め飲め』と言うよりも、むしろ楽しみながら、お茶を嗜好品として飲んでいく。『のどが渇いたときは水を飲めばいい。心の渇きを癒やすにはお茶がいい』みたいな言葉もあるぐらいだから(新しい)販売方法・飲み方を提案していければ、全然お茶は捨てたものじゃない」

抹茶を使ったスイーツ…新しい楽しみ方を提案する企業も

 お茶の新しい楽しみ方を提案している企業があります。静岡市の中心街にある「ななや」を取材しました。抹茶を使ったスイーツが人気のこのお店。ロールケーキやチョコレートなどが並ぶなか、一番人気は「ジェラート」です。抹茶の濃さが7段階に分かれていて、味の違いを楽しめることが魅力の ななやのジェラート。

画像: 抹茶を使ったスイーツ…新しい楽しみ方を提案する企業も

 この味を求めて、県内はもちろん 県外からも多くのお客さんが訪れます。「ななや」を運営するのは、藤枝市に本拠地を置く「丸七製茶」。創業1907年の老舗製茶会社です。抹茶の製造を始めたのは1988年。現在の抹茶ブームを迎えるより前のことです。

丸七製茶 鈴木成彦社長:「私どもの抹茶作りは、藤枝市の山間地に岡部町があるが京都・八女・岡部は三大玉露産地と言われていて有名な産地だったが、1988年以前から 贈答品を中心に玉露の需要が落ちていき、岡部の玉露の衰退が始まり、生産農家から『助けてくれないか』という声があり、私どものアイデアで、玉露の栽培方法と抹茶の原料となる甜茶が同じような方法なので、(抹茶に)転換してみたらどうかと提案して、そこから始まった」

「世界でいちばん濃い」ジェラート

 岡部の玉露農家を助けるために始めた抹茶づくり。しかし、最初の10年ほどは思うように成果は上がりませんでした。静岡の抹茶が無名だったからです。その後 品質の向上や技術革新を重ねることで、だんだんと市場で認められるようになった「静岡の抹茶」。その魅力をもっと広く知ってもらうために取り組んだのが「世界でいちばん濃い」をキャッチフレーズにしたジェラートでした。
                            
丸七製茶 鈴木成彦社長:「品質の良さを伝えるには、濃くすればするほど品質の良さが明らかに分かるようになるので、それを皆さんに伝えていって、おかげさまで今は全国各地からお客さんが来るようになった」

テーバッグのお茶をおいしく入れる方法は「三三七拍子」

 100年以上続く丸七製茶では、もちろん飲むお茶に対する取り組みも進めています。

丸七製茶 鈴木成彦社長:「1つは、急須で楽しむお茶に一番近いティーバッグがある。ティーバッグは一般的に、手軽に飲める安いお茶というイメージがあるが、素材を選び 入れ方を変えれば急須と全く同じような味わいで気軽に楽しめる。私どもでは三三七拍子で入れるというのをPRしている」

 「ちゃっちゃっちゃ、と3回やるわけです」

画像: テーバッグのお茶をおいしく入れる方法は「三三七拍子」

 テーバッグのお茶を よりおいしく入れる方法が「三三七拍子」。お湯を注いだカップにティーバッグを入れ、三三七拍子のリズムで上下させます。これを3回行えば ちょうど飲み頃。茶葉がじわーっと広がり、うまみが溶け出すまでの時間を作るためなんです。

「お茶は無料」という常識を変えるガラスボトル入りのお茶

 もう1つの取り組みは、お金を払ってでも飲む価値があるお茶を作ること。飲食店などで提供されるお茶は無料だというこれまでの常識を変える試みです。

丸七製茶 鈴木成彦社長:「例えばフランス料理で水を頼むと、無料の水と有料の水がある。お茶も立派な商品だから、きちっとお金を払ってより高品質なお茶を楽しんでいただく。静岡は特に高品質なお茶の産地だから、そういう取り組みをすべき」

画像: 「お茶は無料」という常識を変えるガラスボトル入りのお茶

 こうした考えから作られたのが、ガラス製ボトルのお茶。丸七製茶で作るガラスボトルに入ったお茶は、常温で1年間保存しても品質を維持できると言います。去年1月から本格的に製造を始め、すでに高級レストランやホテルなどで提供されています。また、インターネット販売の売り上げも 少しずつ伸びてきているそうです。ガラスボトルを使うのには、他にも理由が…。

丸七製茶 鈴木成彦社長:「私どもでは、ボトリングティーをクラフト・ブリュー・ティーという名前で商品化している。透明なボトルは白ワイン風の作り方、黒いボトルは赤ワイン風の作り方をしている。白ワイン風はクリアなすきっとした味わいで、その中に熟成した風味を感じられるような、どちらかと言うと香りを楽しんでもらうお茶。赤ワイン風はタンニンがしっかり感じられるようなボディ感のある味わいで、例えば肉料理に合うような力強い味わい。ソムリエの方にも分かりやすく
お茶の楽しみ方を伝えられるように作っている」

 茶葉の選び方や抽出方法などを変えることで、それぞれのお茶の個性を引き出し、まるでワインのようにバリエーションに富んだボトリングティーができ上ります。合わせる料理やシチュエーションによって お茶を選び、その価値に見合った料金を支払う。まさに、お茶の新しい楽しみ方と言えます。

丸七製茶 鈴木成彦社長:「手軽でほどほどの味というと、ぺットボトルを消費者が選んでいるし、また安価なティーバッグももう日本中に流通しているので、そういうもので手軽に召し上がってもらえればいいが、そういうものに使われている原料は農家の収入の7%にしかならない。残りの93%は、もっとハイグレードな茶葉で収入を得ている。お茶業界がここまで衰退してきているので、本当に品質のいいお茶をきちっと流通させるためには、ボトリングをして、日本だけでなく世界中に流通させられるような取り組みをするには もう今しかないと。ちゃんと価値を生み出して、お客さんに喜んでお買い上げいただいて召し上がっていただくという市場を作らないと、どんどん衰退が続く。そういう考え方で高級なティーバッグやボトリングティーを作って、よりグレードの高いお茶を楽しんでもらうことにチャレンジしている」

1本1万9800円…超高級ボトリングティー「山河のお茶」

画像1: 1本1万9800円…超高級ボトリングティー「山河のお茶」

 静岡生まれのボトリングティーと言えば、こんなものも…。1本1万9800円という超高級茶です。
            
林輝彦アナウンサー:「ガラスボトルに入った高級なお茶をプロデュースした方がこちらのお店にいらっしゃるということです」

 この方が、高級なボトリングティーをプロデュースした藤田陽介さん。静岡市の繁華街にある洋風居酒屋「オッサン」のオーナーです。カジュアルなフレンチをお酒と一緒に味わえるこのお店で、藤田さんは、オーナー、シェフ、ソムリエの一人三役をこなしています。藤田さんがプロデュースしたボトリングティーがこちら。その名も「山河(やまが)のお茶」。値段は 500ミリリットル入りのボトル1本で、なんと1万9800円です。気になる その味は…。

画像2: 1本1万9800円…超高級ボトリングティー「山河のお茶」

林アナ:「すごく深い味わいです。口に入れた瞬間にお茶のうまみが広がります。いつまでもお茶のいいうまみが口の中にとどまっています」

藤田さん「もともとの茶葉が、川根町の山間地で浅蒸しで作られた茶葉なので、非常に上品な香りが特徴です」

川根茶を選んだ理由は

 この「山河のお茶」を作るのに、川根茶を選んだ理由を聞きました。

オッサン 藤田陽介さん:「私の実家が川根町上河内地区で お茶農家をやっている。お茶とソムリエを掛け合わせたときに
何か新しいお茶の楽しみ方を提案できないかと思い開発した」

 島田市の川根町上河内(かみごうち)地区は、寒暖差が激しく、標高が高いところ。その急斜面で栽培されるお茶は、豊かな香りと、美しい黄色をしているという特徴を持っていて、「山河のお茶」にもしっかりと現れています。地元のお茶を使った商品を作った理由が、もう1つ。

「戻ってきたり県外から移住したり、そういう未来も考えられる」

オッサン 藤田陽介さん:「私の実家がある集落でも、農家を辞める方が非常に増えている。高齢化で辞める方が増えているので、ただ無くなっていくのを眺めているのではなく、僕ら世代が(地元に)戻ってきて、大変だって言ってやるのではなく、楽しみながら新しいお茶を提供できればいい。そこに注目が集まれば、人が戻ってきたりとか、あるいは県外から移住してきたりとか、そういう未来も考えられるのかなと思います」

画像: 「戻ってきたり県外から移住したり、そういう未来も考えられる」

 地元のお茶農家が抱える後継者の問題を少しでも何とかしたいという思いも込められている「山河のお茶」。藤田さんのお店では、グラスで注文することができます。まずはこのお茶の存在を知ってもらおうと、期間限定で1杯1200円で提供中。インターネットでボトルの販売も行っています。また、いつかは海外にも販路を広げたいという夢もあり、ラベルのデザインにもこだわりました。新茶のシーズンを迎え、お店の運営とボトリングティー作りの二刀流を続ける藤田さんも忙しくなりそうです。

オッサン 藤田陽介さん:「おそらく今月末くらいから摘み取りが始まると思うので、そのときは手伝いに行こうと思っています。」