「全量戻しにはならない」から一転「検討に値する」 静岡・川勝知事の発言の真意は? リニア水問題

静岡県 川勝平太知事(4月28日):「これは我々も含めて乱暴な議論だと思う」

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 4月、JR東海の提案に対して、こう語っていた静岡県の川勝平太知事。ところが…。

静岡県 川勝平太知事(5月12日)
Q.でもJR東海が案を出してきたことは評価する?
A.検討に値すると申し上げているわけです。

 突然の方針転換。その真意は?

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「全量戻しにはならない」から一転「検討に値する」 静岡・川勝知事の発言の真意は? リニア水問題

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川勝知事「別次元の話」

静岡県 川勝平太知事(5月12日):「別次元の話なんです。ですからリニアのトンネル工事と直接関係するものではありません。これは静岡県民、特に流域の人たちにとっては極めて大きな関心事なわけですね」

 5月12日、川勝知事が『別次元の話』と表現したのは、4月、リニア新幹線工事を巡る県の専門部会でJR東海側が示した『全量戻し』に関する案について。

JR東海 静岡工事事務所 永長隆昭所長(4月26日):「静岡県側から山梨県側に流出するトンネルの湧水量につきまして、流出量を計測しておきまして、ちょうど同じ時期にちょうど同じ量の発電のための大井川からの取水について田代ダムのところで抑制し、結果として大井川に還元する案でございます」

画像: 川勝知事「別次元の話」

 大井川上流にあり、東京電力が管理する田代ダム。発電のために静岡県側から山梨県側に水を放流しています。

 JR東海の提案はトンネル工事で流れ出る湧水と同じ量を、田代ダムで工事期間中に取水制限することで大井川の流量を維持するというもの。『全量戻し』の具体案として初めて示されました。

難波副知事「案としては十分あり得るが、現実性があるかは別問題」

 これについては、難波副知事も…

静岡県 難波喬司副知事(4月26日)

Q.田代ダム活用は関係者の中でアイデアとしてはあった。可能性の一つになりうるか?

A.案としては十分あり得るものだと思っています。ただ現実性があるかどうかは別問題ですので、これから話を深めていかないといけないと思います

画像: 難波副知事「案としては十分あり得るが、現実性があるかは別問題」

 このように話し、一定の評価をする姿勢を示していました。ところが、川勝知事は…

川勝知事(4月28日)

Q.今まで知事は全量戻しを求めてきましたが、それに叶う解決策になるのか? どういうご見解をお持ちか。

A.「ならないと思います。結論は全量戻しにはならないと思います。全量戻しというのはトンネルを掘削中に出る水を、トンネルから出る水を全量戻すということ。突然足蹴りされて、ちゃぶ台をひっくり返して、『これ持っていくぞ』という感じになっている。その乱暴さには改めて会社の体質を垣間見る思いがしました。人の水利権を奪ってやってくるというものであって、これはもう我々も含めて乱暴な議論であると」

 この発言が12日の会見では注目の的に…

川勝知事「リニアトンネル工事とは別の話」

川勝知事(5月12日)

Q.この案を出したことについては副知事のほか、島田市長や焼津市長なども評価していますけど、知事だけはあの時の会見で「乱暴な議論」と一蹴しました。知事は常々流域の声を代弁しているという趣旨の発言をされていますけど、この状況で本当に代弁できているのでしょうか?

A.「もちろんですよ。これは田代ダムに流れている水をもっと戻してほしいというのが住民側の意見でございますから。しかしながら、これはJR東海のリニアトンネル工事とは別の話です。言ってみれば、エビで鯛を釣る形ですね。しばらくの間、取水制限をして、その間戻すからトンネルを掘らせろという話ですから、そういう意味では乱暴な議論だと思いますね」

 田代ダムをめぐっては県と東京電力で放水量の協議が行われた過去があります。

川勝知事(5月12日)
「これ(田代ダム)は100年近く前にダムができまして、発電所ができまして、そして平成17年(2005年)にようやく様々な調整を県が致しまして、そしてようやく取り決められたもの。難波副知事が現場に入られたそうです。東電の関係者は『これは血の一滴なので一滴も譲れない』とおっしゃったと聞きまして、やっぱり(県と)同じだなと思っておりました。それが今回JR東海が『戻せる』という意味合いのことを言われましたので、非常に強い関心があります」

JR東海は東京電力と協議

 今回の提案にあたってJR東海はこれまでに「東京電力と協議を進めてきた」といいます。

JR東海 金子慎社長(4月26日)
「流れ出た水を確実にしっかり戻す方法がありますよ、ということを提示するということが大切なので、どちらの案にしろ、しっかり戻しますよというのが私たちの伝えたいメッセージです」

画像1: JR東海は東京電力と協議

 田代ダムで取水された水は山梨県の早川へ流れます。ただ、この早川は富士川水系。結果的には静岡県へ戻ってきます。これに川勝知事は…

川勝知事(5月12日)
「向こうの理屈では水を富士川という静岡県側に戻しているんだからいいだろという話。だけど大井川の流域と富士川の流域では生活も産業も違います。ですから大井川に戻してほしいというのは住民の悲願ですよ。しかし、これは水利権の話ですからトンネルの話とは関係ないです。トンネルを掘削中に出るその全量を戻すという約束をして、それがトンネル掘削中に出る湧水は全量戻すというのが中間報告における有識者会議の理解でもあるわけですね。しかし、これができるんだと、田代側に流している水が本県に戻すことができるんだというそういう情報ですから、これは極めて我々にとっては朗報とも言える。ですからこれはしっかりと議論をして戻せるものなら戻していただきたいと」

Q.そうなると知事が言っていた「乱暴な議論」のとこの話の整合性が全くつかないと思うが?

A.そんなことありませんよ。トンネル工事で出る水と関係のない所から水を持ってくるというのは乱暴だと思いますね。

 あくまでもJR東海の提案は「乱暴」と表現した上で、こんな話も…

Q.案に対してはどう思っている
A.ありがたいですね。
Q.ありがたい…では評価する?
A.水が戻ってくること自体はありがたいですよね。
Q.いや…その…全量戻しではないかもしれないが水問題の解決先の1つとしては評価するということですか?
A.解決策と言いましても、これはまだまだ詰めなくちゃいけないことがあるんじゃないですか。そもそも実現できるのかどうかも入り口のところで分かりませんね。
Q.でもJR東海が案を出してきたことは評価する?
A.検討に値すると申し上げているわけです。

画像2: JR東海は東京電力と協議

 突然の“方針転換”ともとれる発言も飛び出す中で、最後はこう付け加えました。

川勝知事(5月12日)
「だけど、これは全量戻しという中身について、本来の掘削中に出る湧水は全量戻すということができないという意味では敗北宣言ですね」

 新たなフェーズに入ったリニア問題。JRの提案が果たして解決の糸口になるのでしょうか…

              (5月14日放送)