まもなく発災から1年となる静岡県熱海市の土石流災害。特集は被災したクリーニング店についてです。葛藤を抱えながら4カ月後に店を再開。そして1年、以前の伊豆山にはまだ戻っていないと話します。
画像: 熱海土石流災害から1年…伊豆山地区でたった一つのクリーニング店 被災後4カ月での営業再開にも葛藤が 静岡・熱海市 youtu.be

熱海土石流災害から1年…伊豆山地区でたった一つのクリーニング店 被災後4カ月での営業再開にも葛藤が 静岡・熱海市

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伊豆山地区でたった一つのクリーニング店

 熱海市伊豆山の逢初橋の近く。国道沿いにあるお店。午前8時、開店。伊豆山地区にたった一つのクリーニング店です。

岡本政夫さん(70)と妻の尚子さん(69)。尚子さんの親の代から72年続く老舗です。取り扱うのは、熱海市内の旅館のタオルや浴衣、それに伊豆山地区の住民の服など、さまざまです。政夫さんは配達に。尚子さんは、その支度を整えたり、伝票を書いたり…。忙しい毎日を送っています。

 国道を埋め尽くす土砂。店の中にも流れ込み、商売道具が使い物にならなくなりました。

岡本尚子さん:「目の前真っ暗でしたよ。どうしようと思って。泥が入った瞬間に私、思ったんですけど、変な話、入ってここにぺたっと、こう座り込んで。いやあどうしよう。父から受け継いだお店が、こんな泥だらけになって。どうしたらいいんだろうって。自分たちの先のことを考えても、私たちに今何かやれっていったら、洗濯屋なら主人と2人でどうにか力を合わせて出来るけれども、それ以外のことは本当に一から始めなきゃならないから。どうにか、そういう補償制度とか、自分たちの保険とかで目途がついたならもう、それに向かってやっていこうって。もうそれだけでした」

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預かっていたお客さんの服を市内の同業者が…

 発災から6日。政夫さんが店の荷物を車に積み込んでいました。

岡本政夫さん:「もう一週間も過ぎちゃっているから、お客さんだってね、制服とかそういう物もどんどんもう届けてやらなくちゃならない。まだ復興していないのに、自分たちの仕事だけやって・・・ということも、批判も出ると思いますけど…」

 向かったのは、熱海市内の同業者のところ。発災当時、預かっていた数十着のお客さんの服を、仲間の店が代わりに預かってくれることになりました。

岡本政夫さん:「この帽子はこういう感じで仕上げてもらいたい」
同業者:「とにかく、うちでできることはもう、すべて協力しますから」
岡本政夫さん:「申し訳ありません。甘えさせてもらいます」
同業者:「我々からすれば、早く岡本さんが、元の仕事にちゃんと戻って、できるように」

岡本政夫さん「お客さん(のおかげ)で、私たちはこうやって生活もできているし。そういう意味でお客さんはやっぱり、災害時に励ましの言葉をかけてくれたし。その言葉に返すつもりで、また頑張ってやりたいと思います。」

 少しずつ、着実に。一歩ずつ一歩ずつ…。発災1カ月。店内の土砂はかき出しましたが、再開のめどは立ちませんでした。

岡本尚子さん:「これでどのくらい市から(支援金が)出るんですかって聞いたら、準半壊に至らずで瓦一枚飛んだのと同じ程度ですから、1円も出ませんって言われました。本当どうしようって頭の中が真っ白で、どうやって帰ったかもよく覚えてないもん」

画像: 預かっていたお客さんの服を市内の同業者が…

あまり交流のない方からお花が届き

 去年11月。発災から4カ月が経ちました。店の再開です。届いた花は、店内にひっそりと…。内装は全てリフォームしました。

岡本尚子さん:「結局、家の建て直しから機械から何からで、やっぱり1千万円近くかかりました」

綺麗になった店内。それでも…

岡本尚子さん:「こういう車のこの中に入っているのよ。まだ出てくる。泥がまだ出てくる」

ひとつひとつ、丁寧に。

岡本尚子さん:「こうやってお持ちするわけです。15枚ずつ。こんな感じです」

再開初日、浴衣やタオルを旅館に届けます。

岡本政夫さん:「こんにちは」
旅館の従業員:「良かったね」
岡本政夫さん:「お陰様で」
旅館の従業員:「うちも頑張りますから」
岡本政夫さん:「こちらこそよろしくお願いします」

岡本政夫さん:「一安心ですね」「これだけお客さんが待っていてくれたってことは。文句ひとつ言われないで、ご苦労様って言ってくれた。本当にそれは感謝ですね」

伊豆山地区にたった一つのクリーニング店。

岡本尚子さん:「仕事ができて嬉しかったけども、反面後ろめたい。もっと私たちよりずっとね、親族流されたりとか、仕事が全部なくなったりした方がいらっしゃるわけじゃないですか。だから自分たちだけ(仕事を)始めて戻って・・・。お花なんかもいただいたけれども、表に出さないで家の中に置いとく。ただその中にもね、あまり交流がないのにお花をいただいたんですよ、生花を。なぜかなと思って、お電話したら、岡本さんたちが始めたって聞いたから、俺も気持ちが萎えていたけど頑張ろうと思って、花を贈らせてもらったんだよって。その言葉がすごく嬉しかったですね」

画像: あまり交流のない方からお花が届き

「伊豆山の街が、前みたいににぎやかになれば…」

 東海地方が梅雨入りした今月14日。忙しい日が続いています。

岡本尚子さん:「お天気悪いしね、寒いし」
岡本政夫さん:(Q:きょうから梅雨入りですね)「そうそうそう、そんなような話でしたね」
岡本尚子さん:「東海はまだ出ていなかったんだっけ」「でも熱海はどちらかといったら関東なんだよね。天気予報を見るのは」

お弁当屋さん:「お待ちどうさまです」
岡本尚子さん:「ありがとう、ごめんね。遅くに」「ありがとう、すみませんね、どうも」

忙しい時は、近所の店のお弁当が昼ご飯です。2人揃って、自宅での食事。

岡本政夫さん「まだ家に帰れない人もいるんだから」
尚子さん「商売できるだけありがたいですよ」

間もなく、1年です。
岡本政夫さん:「あっという間だ」
岡本尚子さん:「止まったままの方もいるしね、帰ってこない命もあるしね。本当に、複雑には複雑です」
岡本政夫さん:「土砂の災害があった人たちは本当にね、今も見る影もなく。本当に、ただ本当に、土砂を片付けたっていう感じだもんで、そこを見るたびにああ、居ても立っても居られない。また我々のこうやって、住んできた町が、こんな風になっちゃうのかなって」
岡本尚子さん:「前に住んでいた方たちがまた元通り早く、伊豆山の街が前みたいに賑やかに。おはよう、こんにちはって声掛け合う人たちが戻ってきて、普通に暮らせたらいいなと思うよね」

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