観光バス横転事故で21人死傷…運転手を逮捕 「フェード現象」か…小山町の現場は下り坂でカーブが続く /今週の静岡

 13日午前11時50分ごろ、静岡県小山町須走の県道「ふじあざみライン」で、乗客ら36人を乗せた観光バスが横転しました。バスは道路左側ののり面にタイヤを乗り上げるようにして、運転席を下にする形で横転していました。県外からの旅行ツアーで、警察によりますと、乗客34人、運転手1人、添乗員1人が乗っていました。この事故で重傷者6人を含む20人がけがをし、埼玉県からツアーに参加した74歳の女性が死亡しました。運転していた会社は、埼玉県飯能市の美杉観光バス。会社によると、富士山5合目などを回るツアーだったということです。警察はバスの26歳の運転手を過失運転致傷の疑いで現行犯逮捕しました。

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埼玉・飯能市のバス会社を家宅捜索

 事故から一夜明けた14日、静岡県警はバスを運行していた埼玉県の「美杉観光バス」の本社と営業所に、過失運転致死の疑いで家宅捜索に入りました。バスの整備記録や安全管理状況に関する資料、現場で回収できなかったドライブレコーダーの映像などを押収したとみられます。

画像1: 埼玉・飯能市のバス会社を家宅捜索

 事故現場では3Dカメラを使って、道路の形や事故の痕跡などが撮影されていました。

 横転したバスはレッカー車で県東部の警察施設に移されました。激しく損傷した車体はブルーシートに覆われていました。警察では今後、検証を行う方針です。

画像2: 埼玉・飯能市のバス会社を家宅捜索

現場の道は…

画像: 現場の道は…

 現場となった「ふじあざみライン」、一体どのような道なのでしょうか。去年11月に走った映像を見ると、富士山5合目を出発。片側1車線の急勾配の下り坂。きついカーブがつづら折りになっています。

動画撮影者:「勾配が大きいため2速でもすさまじい勢いで加速します」

 さらに、先ほどより道が狭くなり、小刻みに急なカーブを繰り返すと、左側に看板が…。

「急な下り坂 ブレーキの過熱に注意」。

 看板で注意を促すほど、急な下り坂だということが分かります。その後も急なカーブを繰り返し、視界が開け直線になったところが今回事故が起きた現場です。

 ドライバー歴40年。観光バスで「ふじあざみライン」をよく利用するという、地元のベテラン運転手は「カーブがきつくて勾配がきついんですよ。フットブレーキをあまり過度に使いすぎると、ブレーキを焼いちゃうんです。焼いちゃうとブレーキが利かなくなる」と指摘、「今回のドライバーさんもだいぶ若かったみたいですけど、想像ですけど、ブレーキを多用に使い過ぎたかなと思うんですよ」と話しました。

亡くなった女性の夫は

 警察によると、亡くなった女性は右側の座席に座っていました。死因は、右腕の損傷などによる失血死の可能性があるということです。

女性の夫は「テレビで事故を知り、何度も妻に電話しましたが、つながりませんでした。結婚してから50年で、今度記念の旅行に行こうと2人で話していました。朝、バス停まで見送って、バスに乗る姿を見ました。妻は明るい人で、今回の旅行も妻が計画して、友達を連れて行きました。まだ震えが止まらなくて、受け止められません」と話しています。

富士山五合目と駿河湾巡るツアー

 バスツアー中に起きた今回の事故。このツアーは、今週火曜から始まった「全国旅行支援」の対象になっていました。

画像: 富士山五合目と駿河湾巡るツアー

 ツアーを主催した旅行会社「クラブツーリズム」のホームページには、「フルーツ、海鮮お持ち帰り!ふじあざみラインで行く!富士山5合目&駿河湾クルーズ」と掲載されています。

クラブツーリズム 酒井博社長:「この度は当社が企画した旅行中にバスの横転事故が発生し、お客様のお一人がお亡くなりになり、深くお詫びを申し上げます」

 観光バスは午前7時半に埼玉県を出発。10時40分頃に富士山須走口5合目に到着し、散策を楽しむところまでは順調でした。事故が起きたのはそこから次の目的地の沼津市へと向かう途中。出発してから10分ほど山道を下ったところでした。

 参加した34人のうち、70代が15人と最も多く、高齢の方が目立ちます。平日にも関わらず、定員の85%が埋まる盛況ぶりでした。

運転手は直前「ブレーキが利かない」

画像: 運転手は直前「ブレーキが利かない」

 一体なぜ、バスは横転したのでしょうか。事故の直前、ある異変が起きていたといいます。

美杉観光バス 吉田典弘社長:「添乗員が『ドライバーさんがブレーキが利かない』と言っていたと報告があったのは、富士山の5合目から下に下っていく途中で『ブレーキが利かない』と、ドライバーが言っていたということですから、事故の直前」

 逮捕されたバスの運転手は、警察の調べにも「ブレーキが利かなかった」と話し、容疑を認めているということです。

美杉観光バス 吉田典弘社長:「去年7月に当社に入社しまして、送迎・観光合わせながら乗務をしていた。春くらいから観光の乗務の仕事が多くなったというふうに聞いている」

 逮捕された運転手が今回のコースを運転するのはこの日が初めてでした。バス会社によれば、運転手の体調に問題はなく、運行前の点検ではブレーキに異常はなかったということです。

 警察はブレーキの使い過ぎでブレーキが利かなくなる、「フェード現象」が起きた可能性もあるとみて、捜査を続けています。

事故現場にはタイヤ痕が… ブレーキは機能していたか

画像: 事故現場にはタイヤ痕が… ブレーキは機能していたか

白鳥衛記者(14日):「私がいる場所は観光バスが横転した場所からおよそ100m手前、この道路を見ると、白いチョークの跡が残っていて、これは観光バスのタイヤの跡かと思われる。この場所からすでに観光バスが反対車線にはみ出していた可能性がある」

 その後の捜査関係者への取材で、現場に直線的なタイヤ痕が残っていたことから、バスのブレーキが機能していた可能性があることが分かりました。運転手の「ブレーキが利かなかった」との供述と食い違っていて、バスの検証を通じて、ブレーキに異常があったのかどうか、明らかにする方針です。

                       (10月15日放送)