【リニア】議論続く「田代ダム案」専門部会で前向きな意見も 川勝知事「JR東海は部外者、工事と取水抑制は別の事柄」”過去の水問題”も影響か…

川勝知事(16日):
「調査のためのボーリングでありますとか、そういう詭弁と言いますか、本当のことを隠して、調査の名を借りた工事をするという風なそういうのを、許さないようにしなくちゃならないということは、もう我々の中で共有していることであります。

画像: 【リニア】議論続く「田代ダム案」専門部会で前向きな意見も 川勝知事「JR東海は部外者、工事と取水抑制は別の事柄」”過去の水問題”も影響か…

川勝知事「ボーリングは工事の一環」

川勝知事が会見で言及した「ボーリング」について。

 JR東海が「調査」として実施を求めているのに対して、静岡県はこれを「工事」として認めていません。

 さらに。。。

川勝知事(16日):
「いわゆる高速長尺先進ボーリング。これは工事の一環としてする水抜き工事の可能性が極めて高い」

 南アルプスには破砕帯と呼ばれる部分があり、ここに大量の湧水が溜まっているとされています。
 
 静岡県側はJR東海が“調査”としているボーリングの目的が突発的な湧水を防ぐための「水抜き」であるという見解を示しています。

 これに、JR東海の金子慎社長は・・・

JR東海・金子慎社長(15日):
「やれば水は出るかもしれない。あるいは、そういう可能性はあるものですが、それを目的に行うものではなくて、地質とか湧水に関する有用な情報が出ることであって、その際に水が少し出るかもしれないけれども、だからといって情報を得ることをやめてしまってよいものかとっていうのが私たちの考えなので」

画像: 川勝知事「ボーリングは工事の一環」

流域市町からは

平行線を辿る「ボーリング」を巡った見解。

 ただ、先日行われた県の専門部会と大井川流域の市長らの話し合いではこんな意見も・・・

島田市・染谷絹代市長(11日)
「こんなに皆さんが不安を持っているものが少しでも科学的工学時に根拠が得られるならば、これはやる価値があるのではないかと。ボーリングは水抜きが目的というような、決めつけるような発言をすると私たち流域がまた戸惑うんです」

 専門部会の委員からは、一般的にボーリングは水抜きの意味合いもあるという見解が示されましたが、同時に“あの案”についても・・・

県専門部会・森下部会長(11日):
「どうしてもボーリングがしたければ、失われる水をリアルタイムで戻す方策とセットにして提案してください。その切り札は田代ダムからの取水を抑制する案であります」

画像: 流域市町からは

「田代ダム案」に前向きな意見も

JR東海が今年4月に示した、いわゆる「田代ダム案」。

 大井川上流の田代ダムで東京電力が水力発電のために山梨県側に流している水を抑制し、その分を大井川に還元する「水の戻し方」です。

 この案については大井川流域だけでなく、県の専門部会からも前向きな声が聞こえてきています。ところが、この人の考えは違うようです。

画像: 「田代ダム案」に前向きな意見も

「部外者」「工事と取水抑制は別の事柄」

川勝知事(16日):
「田代ダムの取水抑制をすると、それが全量戻しの代替案だという、そういう言い方をJR東海がなさったわけですね。しかしながら、そもそもJR東海さんが取水抑制をするべき田代ダムの水利権を持っているわけではありませんから、部外者なわけですね。南アルプストンネル工事と田代ダムの取水抑制は別の事柄です」

 JR東海に釘をさした川勝知事。

 ただ、JR東海側は・・・

JR東海・金子慎社長(15日):
「私たちは地域に提案してよろしいかということを東電さんにお願いをして、それはいいですよと仰っていただいているわけです」

 主張が異なる両者の考え。

 川勝知事は1年間、意見を一貫してきました。

川勝知事(4月28日):
「一民間企業が他の民間会社の財産 水利権に対してよくも言われたものだと思って、そこは実力に感じ入った次第です」

画像: 「部外者」「工事と取水抑制は別の事柄」

「その乱暴さには改めて会社の体質を垣間見る思い」

田代ダム案がJR東海から示されたのは4月に開かれた県の専門部会でのことでした。

JR東海静岡工事事務所 永長隆昭所長(4月):
「静岡県側から山梨県側に流出するトンネルの湧水量について、ちょうど同じ時期にちょうど同じ量の発電のための大井川からの取水について、田代ダムで抑制し、結果として大井川に還元する案でございます」

 この案が出た当初から、川勝知事はJR東海をけん制していました。

Q:今まで知事は全量戻しを求めてきたが、それに叶う解決策になる?
川勝知事(4月28日):
「ならないと思います。突然足蹴にされて、ちゃぶ台をひっくり返して「これ持っていくぞ」という感じになっている。その乱暴さには改めて会社の体質を垣間見る思いがした」

 別の日にも・・・

川勝知事(5月25日):
「これはトンネル工事とは別です。これを戻すからトンネル工事していいということは全くありませんね。(『全量戻し』は)トンネル工事中に出る湧水を戻すという、これが国の有識者会議でもそういう中身ですよって言われていますから。ですから、この表流水の話は、これはJR東海さんの力による地域貢献の1つということで、これが本当に戻ってくるなら、これはもう本当にありがたく感謝したいと思います」

画像: 「その乱暴さには改めて会社の体質を垣間見る思い」

”過去の水問題”も影響

知事が口にした「地域貢献」という言葉。

 その背景には「過去の水問題」があります。

 大井川に30近くあるダムの中で最も上流に位置する田代ダムは1928年に完成した歴史のあるダムです。

 ただ、大井川の水を山梨県側に送っていることから過去には…

旧中川根町・杉山嘉英元町長(2005年6月):
「この状況をなんとか打開しようではないかということで緊急決議がなされて、この署名を展開し、約4万3000人の署名を集めまして、知事に提出しました」

 かつて、田代ダムの取水によって大井川の水量が減少しているとして、大井川流域の2市6町(当時)が県側に支援を要請。

 当時の石川嘉延知事も不安解消に乗り出しました。

画像: ”過去の水問題”も影響

「あくまでもJR東海は第三者」

ターニングポイントとなった2005年は、国と東京電力による30年に1度の水利権更新のタイミング。

 しかし地元自治体と東京電力の話し合いは平行線でした。

石川嘉延元知事(2005年):
「最後にお互いに歩み寄るところはないかと。最後の段階と思って私は乗り出した」

 石川元知事が東京電力を訪れ「大井川の水量の確保」や「水利権の許可期間を10年に短縮する」ことなどを要望。

 協議を重ねて住民の要望に近い放流量で東電と地元は合意しています。

 このことから、川勝知事は田代ダムの水に関してはJR東海はあくまで第三者であることを強調しているのです。

画像: 「あくまでもJR東海は第三者」

「田代ダム案は全量戻しではない」

川勝知事(8月8日):
「今6?7割。きょうの(ダムの)取水量は。ほとんどが田代ダムの方に取られている」

 川勝知事は今年8月、2年ぶりに南アルプスを視察し自らメガホンをとり、説明していました。

 そんな思い入れの強い田代ダム。

 あくまでも全量戻しではないことを何度も強調しています。

画像: 「田代ダム案は全量戻しではない」

「田代ダム案」は解決方法となりえるか

川勝知事(16日):
「全量戻しは掘削中にでる水を戻すってことでありますから、それができないということを踏まえた上で、それでこの田代ダム云々ということになると、まったく別な別の話だということ」

Q:田代ダム案がこれは全量戻しの解決方法でもなりえないと言うんでしたら、水資源の専門部会で議論するのやめたほうがいいと思うんですけれども、そういったお考えないんでしょうか
「ありません。これは水資源にかかわる問題ですから、水資源部会がやるべき問題です」

 議論が続く「田代ダム案」。

 これが、この先のリニア問題を大きく左右するキーワードとなりそうです。

画像: 「田代ダム案」は解決方法となりえるか