静岡市の巨大盛り土…業者親子を逮捕 地域住民「何かが変わるわけじゃない」怒りあらわに 【今週の静岡】

桜井健至記者(7日):「午前7時すぎです。容疑者を乗せたとみられる車が今、静岡中央警察署に到着しました」 

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容疑者「従業員・家族の生活のため」「行政が悪い」

画像: 容疑者「従業員・家族の生活のため」「行政が悪い」

 7日火曜、静岡県砂防指定地管理条例違反などの疑いで、静岡市葵区羽鳥の元会社社長の84歳の男と息子で現社長の41歳の男が逮捕されました。2人は静岡市葵区の山間部「杉尾地区」と「日向地区」に無許可で盛り土を造成するなどした疑いが持たれています。警察の調べに対し、2人ともおおむね容疑を認めているということです。

 息子の現社長(41)は「県と市から行政指導を受けていました。職員が現場に来ていないので、土砂搬入を続けました。違法な行為とわかっていたが、会社の経営や、従業員・家族の生活が苦しくなるため続けました」などと供述、その後の捜査関係者への取材で、父親の元社長(84)も、「行政が報告書の提出を求めなかったのが悪い」などと行政の責任を主張する趣旨の供述をしていることが分かりました。

これまでに最大14億円を売り上げたか

 警察によりますと、違法行為は日向地区で2005年から、杉尾地区では2018年に始まりました。2人は市内で出た建設残土を10トンのダンプ1台につき、1万円から2万円で受け入れ、これまでに最大14億円を売り上げたとみられています。

 そうして巨大化していった2つの盛り土。杉尾地区は広さ1.8ヘクタール、日向地区は6ヘクタールに及ぶとされています。県によりますと、杉尾地区の盛り土は土砂の量が5万立方メートルと推定されています。

盛り土の下流の住民「人が住んでいるのを分かってやっていた…」

 静岡市の山間地に違法に造成された大規模な盛り土。その盛り土の下に住む住民に話を聞くことができました。

住民:「気持ちはよくないよ、やっぱり。雨が降れば濁った水が一気に出てきますから。だから、それを考えればあんまり住みたくないよね」

画像: 盛り土の下流の住民「人が住んでいるのを分かってやっていた…」

 杉尾地区の盛り土の勾配は23度。国が土石流発生の目安としている15度~20度を上回っていて、熱海市伊豆山よりも急な傾斜だといいます。

住民:「そこに人が住んでいるのを分かってやっていたことだから、このけじめどう付けるんだと思いますよね、当然」

 県は杉尾地区の盛り土について、2019年に口頭で行政指導を実施。容疑者の会社は「検討する」と回答したそうですが、警察によれば、土砂の搬入は去年夏ごろまで続きました。県はこれまで強制力のある撤去命令は出していません。

静岡・川勝知事は…

画像: 静岡・川勝知事は…

静岡県 川勝平太知事(1月24日):「これまでは我々の盛り土条例のようなものがありませんでしたから、できる最良のことをしてきたというのが、これまでだったと思います」

Q.今回の杉尾・日向の場合は、職員が指導という形で関わり続けていたという点から対応には問題がないと?

A.「難しいですね。指導をしているわけですね。だけど、聞いていただけなかったというのが現実のようです」

住民は怒りあらわに…「逮捕されても変わらない」

 行政の対応に、杉尾地区の住民も怒りをあらわにしました。

住民:「(行政は)雨が降ったら早めに避難してくださいとか言ってきますけど、でも自分ら60年以上そこに住んでいるわけじゃないですか。言っちゃ悪いけど、人の頭の上に土砂積んどいて、危ないから逃げてくれって。かなり理不尽な話ですよね。だからはっきり言って、言っていることが腹立つしかないですよね」

 事業者が逮捕されても、盛り土が残ったままでは根本的な解決には至りません。

住民:「逮捕されたからって、何かが変わるわけじゃないでしょ、実際問題として。じゃあそれが全部撤去されるなんていう話には、絶対ならないと思うから、話が若干進んだって感じはするけど、でもまあそんなもんですよね」

画像: 住民は怒りあらわに…「逮捕されても変わらない」

 一方、土砂の量が熱海市伊豆山のおよそ5倍と推定される日向地区の盛り土。土地を開発する場合には、広さ1ヘクタールを境に、必要な届け出が変わってきます。

 静岡市によりますと、逮捕された2人は1ヘクタール以下の小規模な開発について、2003年から5回にわたって届け出ていました。しかし、日向地区での土地の改変が1ヘクタールを超える大規模なものになっても、2人は必要な手続きをせずに造成を続けていたといいます。

 ある捜査関係者は、父親の元社長が、手続きが必要なことを理解した上で、意図的にすり抜けようとしていた可能性を指摘します。

 市は2005年に住民からの通報を受け、日向地区の盛り土の存在を把握。2006年には会社に口頭注意と文書での指導を行いましたが、
2人は「自分の土地に土砂を捨てているだけ」と応じなかったということです。