大学再編巡り静岡市と浜松市の対立激化 浜松市長「静岡大学長は失格。責任を放棄」 静岡市長「大学の自治を尊重し両大学で決めるべき」

 長らく膠着状態となっていた静岡大学と浜松医科大学の統合・再編。しかし、ここに来て静岡側と浜松側の対立が鮮明になっています。きっかけは、浜松側による統合・再編を推進する期成同盟会の発足です。

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静岡市 田辺信宏市長(2月27日):「当事者の意に反する動きについて非常に残念に思っております。大学の自治が尊重されなければなりません。つまり、大学のことは両大学において決めるべきだ」

浜松・鈴木市長「静大学長の資質が問われる」

 27日に開かれた、浜松市の鈴木康友市長の定例会見。鈴木康友市長が批判の矛先を向けたのは、静岡大学の日詰一幸学長です。

画像: 浜松・鈴木市長「静大学長の資質が問われる」

浜松市 鈴木康友市長(27日)
Q.静岡市の田辺市長が期成同盟会をつくることに、いかがなものかというような発言をされている。この点について市長はどう感じている?

A.「これ、ちょっと長くなっていいですか? ちょっと説明させていただきたいんですけど」

 ここから一気に発言がヒートアップします。

浜松市 鈴木康友市長:「田辺さんの発言もそうですけど、前提として、(静大学長の)日詰さんの会見があったと思うんですよね。私はあの会見は大変遺憾だったと思っています。本当に学長としての資質が問われるくらいに思っております」

2019年に「1法人2大学」で合意も…日詰学長が「1法人1大学」案

 怒りの発端は、静岡大学の日詰一幸学長の発言です。

画像1: 2019年に「1法人2大学」で合意も…日詰学長が「1法人1大学」案

静岡大学 日詰一幸学長(9日):「2つの大学を1つの大学にしていくことがひとつの選択肢、あるいは最善の選択肢としてあるのではないか」

 あくまで個人の考えとして、2019年に合意した静岡・浜松それぞれで新しい大学をつくる「1法人2大学」案ではなく、「1法人1大学」案を打ち出していました。

画像2: 2019年に「1法人2大学」で合意も…日詰学長が「1法人1大学」案

浜松市 鈴木康友市長:「静岡大学の最高責任者である日詰さんが『何を考えているんですか』と私は思った。日詰さんも学長になる時に、(2019年の)基本合意は遵守しますと言っているわけですね。私案を正当化したいのであれば、まず静岡大学の中で正当な手続きを踏んで、基本合意は間違っていました、破棄したいということを評議会や理事会で大学としての機関決定をした上で、浜松医大にきちっと申し入れをするというのが筋であって、全くですね、責任を放棄していると言わざるを得ない。だから学長として、私は失格だと」

浜松・鈴木市長 日詰学長の案は「ありえない」

 「学長失格」と断じた、鈴木市長。2019年の合意に沿って、統合・再編を進めるべきと強調します。

浜松市 鈴木康友市長:「大学どうしの話し合いで決めるべきというような話をされましたけど、これは天につば吐くような話で、大学どうしの話はもう終わっているんですよ。お互い機関決定をして合意書を結んでいるわけですから。粛々と合意書に基づいて計画を進めていただきたいということです」

 静岡大学と浜松医大の再編・統合をめぐる動きは2020年の静岡大学の学長選で、再編に反対の立場を取る日詰学長が選出されたことで流れが変わりました。

静岡大学 日詰一幸教授(2020年):「反対意見もあれば賛成意見もあるわけだから、双方の合意点を導き出せないものだろうかと思っている」

 すでに医療や工学といった分野で協力関係を築いている静大浜松キャンパスと浜松医科大学の統合はメリットが分かりやすいのに対して、静大静岡キャンパス側には、その意味が見いだしにくいのです。

浜松市 鈴木康友市長
Q.日詰学長がおっしゃっているのは、大学自体をひとつにするということだが、これについて市長としてどういうデメリットがあると…

A.「もうこれはありえない話ですよね。じゃあ三重大学をつくるんですか、岐阜大学をつくるんですか、信州大学をつくるんですか、山梨大学をつくるんですかという話ですよね。医学部を入れただけで大学が底上げされるわけがなく、だったら三重大学も山梨大学も信州大学も、そういった地方大学がなぜ地盤沈下していくのかと。今の問題は一県一大学みたいな形で特徴のない総合大学がいっぱいあることが問題であって、これでは生き残っていけないので、もっととがった先鋭的な大学をつくるべきというところから話が始まっているわけですよね。何でこんなものを出してきたのかさっぱり分かりません、というのが私の率直な感想であります」

 両大学の統合・再編はおととし1月に延期が発表され、膠着状態に。この状況を打開しようと、浜松側が打った次の一手が期成同盟会の発足です。浜松市は県内21の市や町に参加を呼び掛け、県西部のすべての市や町、それに県東部の御殿場市や富士宮市なども参加することに。さらに経済界や各市町の議会にも賛同が広がっています。

静岡・田辺市長「大学の自治を尊重して両大学で決めるべき」

 この動きに苦言を呈しているのが静岡市の田辺信宏市長です。27日の会見では冒頭、こう切り出しました。

画像: 静岡・田辺市長「大学の自治を尊重して両大学で決めるべき」

静岡市 田辺信宏市長(2月27日):「浜松市が結成を目指している期成同盟会は、静岡大学の意向に関係なく進められようとしているものです。このような当事者の意に反する動きについて非常に残念に思っています。統合・再編といったテーマにあっては、大学の自治が尊重されなければなりません。つまり、大学のことは両大学において決めるべきだということであります」

 その上で、2019年の合意が棚上げとなっている現状について、こう説明します。

静岡市 田辺信宏市長:「まず、石井前学長時代に静岡大学の中の理解が不十分だったということ。それにも増して、静岡市や地域の自治体に対する説明も不足していたこと。そのまま浜松医科大学との合意案に突っ走ってしまった。それがボタンの掛け違いです」

 静岡側と浜松側の対立が鮮明となってきた、大学再編問題。期成同盟会の発足式はあさって浜松市で開かれます。

           (2月28日放送)