シラス豊漁で漁協直営の食堂にぎわう…人気の新作「日本一丼」とは? 静岡・富士市 田子の浦港

 静岡県富士市の田子の浦港にある漁協直営食堂。開店は午前10時半からですが、わずか10分後には、平日にも関わらず多くのお客さんの姿が。皆さんのお目当ては…。

画像1: シラス豊漁で漁協直営の食堂にぎわう…人気の新作「日本一丼」とは? 静岡・富士市 田子の浦港

観光客 小田原から:「なかなかとれたてというのは食べられないから、ネットで見て来たら、本当においしかった」

観光客 大阪から:「前にも静岡で、ここではないが違うところでシラス丼を食べて結構おいしかったので、また来ようと思って」

Q.車で?
A.「車で。下道で来たので7時間半ぐらい」

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 その日にとれた新鮮なしらすを、そのまま丼ぶりに乗せた「生しらす丼」。これまでも通常の「生しらす丼」は食堂で販売していましたが、今年は“新たに登場した新作丼ぶり”が注目を集めています。

3倍の量の生しらす…「日本一丼」が人気

画像: 3倍の量の生しらす…「日本一丼」が人気

 それがコチラ! 通常の3倍の量の生しらすを贅沢に乗せたその名も「日本一丼」です。食堂の中には、はるばるアメリカ・ロサンゼルスから来たという観光客の姿も。

観光客 ロサンゼルスから:「最高だね! おいしい。おいしい。初めて食べたけどとても気に入ったよ。大好き」

 多くの人がとれたての生シラスに舌鼓を打っていましたが、実は、県内のシラス漁は近年不漁が続いていました。「日本一丼」を販売できるようになった背景には何が!? シラス漁の“今”を取材しました。

漁師も「今年はいいんじゃない」

画像: 漁師も「今年はいいんじゃない」

 早朝6時半の田子の浦港。漁師たちが次々と水揚げしているのは、この日とれたばかりの生シラスです。

漁師)量が少ねえ。
漁協)こんなにいっぱい持ってきて、ないとか言ってる?

Q.きょうは何キロぐらいとれた?
しらす漁師:「いま64キロ。(漁)解禁からしばらくずっとポツポツと(水揚げが)あるから今年はいいんじゃないかな」

漁協「去年に比べて3倍から4倍ぐらいとれてる」

 由比港では、サクラエビの水揚げが去年のおよそ44倍と、近年稀にみる豊漁となりましたが、3月21日から始まった県内のシラス漁は、その勢いに負けじと活気づいています。

画像1: 漁協「去年に比べて3倍から4倍ぐらいとれてる」

田子の浦漁業協同組合 芹澤豊組合長:「今年は(漁)解禁の初日は少し少なかったが、それからだんだん良くなってきて、きのう(11日)までは毎日1トンぐらいとれていた。去年に比べて3倍から4倍ぐらいとれている」

画像2: 漁協「去年に比べて3倍から4倍ぐらいとれてる」

 県内のシラス漁は5年ほど前から不漁が続いていて、田子の浦港では去年の水揚げ量が1年でおよそ24トンと、全盛期の10分の1ほどにまで落ち込んでいました。ところが、この日は次々と20kg超えのシラスのかごが運び込まれ、競り場も盛況。

 田子の浦漁業協同組合によると、今年は連日1トンを超える水揚げがあり、去年までの不漁から回復傾向にあるといいます。

画像3: 漁協「去年に比べて3倍から4倍ぐらいとれてる」

田子の浦漁業協同組合 芹澤豊組合長:「去年が悪かった分、今年は期待しないと。ちょうどコロナも終わりつつあって、お客さんがすごく出ているので、漁協も毎日お客さんがすごい。この時にとれてくれて本当にありがたい」

静岡県水産・海洋技術研究所は

 ここにきてなぜシラスが再び回復傾向となったのか? 県の水産・海洋技術研究所は…。

画像: 静岡県水産・海洋技術研究所は

静岡県水産・海洋技術研究所:「今年の3月上旬ごろにシラスの親であるマイワシが静岡県内で回遊するのが観測された。また、田子の浦港沖でマイワシの卵が多く観測された。イワシの量が増えているわけではなく、タイミングよく静岡に回遊してきたと考えている」

「釜揚げしらす」は在庫なく自転車操業状態

 一方で、不漁が続いていた影響は現在も尾を引いています。大量の湯気が立ち込めるこちらは、シラスの釜揚げ場。漁協の組合長である芹澤さんは個人経営で、とれたてのシラスを釜揚げにした、「釜揚げしらす」の製造・販売も行っています。

画像: 「釜揚げしらす」は在庫なく自転車操業状態

しらす販売店日の出丸 芹澤豊社長:「(在庫は)全然ゼロ。多分よその業者も手持ちはほとんどないと思う」

Q.ストックが作れない?
A.「作れない。とても作れない」

 水揚げ量は回復傾向にありますが、それでも在庫をつくれるほどまでには至らず、釜揚げシラスの販売はとれた分をその日に販売して終了という自転車操業状態だと言います。

 さらに、在庫不足によって起きているのが、取引価格の高騰です。

しらす販売店日の出丸 芹澤豊社長:「量が少ないのでシラスの値段が高い。そんなには儲からない。これがもう少し大漁になって値段が下がれば儲かるが。この倍ぐらい取れてくれれば助かる」

 この日のシラスの平均取引価格は1キロあたり1906円。記録的不漁だった去年と比べると1040円ほど安くなっていますが、ピーク時と比べると、いまだ1200円ほど高くなっています。(去年1キロあたり2946円、2014年1キロあたり710円) 

 そうした中でも、今年のシラス漁にはいつもと違った期待感があると芹澤さんは話します。

しらす販売店日の出丸 芹澤豊社長:「(しらす漁が)始まってからまだ1カ月経たない、それでもこんな状態でいるので、今年は安心できるんじゃないかと。やはりしらすが大量にとれて、市民の人たちにいっぱい、うちの場合はお客さんが待っているので 早く提供できればありがたい」

 釜揚げシラスにはまだまだ不安が残るものの、生シラスは「日本一丼」のようにこれまでよりも多くの観光客に提供できるまでに回復しつつある田子の浦港。県内のシラス漁は来年1月14日まで続きます。