老舗ホテル「ホテルニューアカオ」復活…「昭和の良さ」そのままに 静岡・熱海市の宿泊客はコロナ禍前の8割強にまで回復
観光客(男性東京から 女性奈良から 20代カップル):「ちょっと日本っぽい感じの温泉旅行とかしたいなという感じで、熱海にしました」
観光客(東京から50代):「ゴルフをしに来ました。温暖な気候と食べ物がおいしい」
熱海の観光はコロナ禍前の8割にまで回復
“東洋のモナコ”とも称される「熱海」は、昭和30年代(1955年~)に新婚旅行先の定番となり、さらに高度経済成長期の団体旅行や企業の保養所としても需要が拡大しました。これを背景に国内有数の観光地として大きな賑わいを見せていました。バブル崩壊後は観光客数が激減したものの、2015年には宿泊客数が300万人台にまで回復。若い世代にも人気のスポットとして定着していきます。
ところが、観光業界に、またしても大きなダメージを与える出来事が…。それが、「新型コロナウイルスの感染拡大」です。2020年度は宿泊客数がおよそ149万人まで落ち込み、過去最少を記録。徐々に行動制限の緩和がされてきたことで、2022年度は国や県による旅行支援などで、宿泊者数はおよそ249万人となり、コロナ禍前の83%まで回復しました。
時代とともに変化する旅のスタイル。宿泊者の減少で大きな打撃を受けたのは、熱海でシンボル的存在だった老舗ホテルも例外ではありませんでした。
おととし「営業終了」の老舗ホテルが「昭和の良さ」残して再開
2018年、台風の高波によって海に面したレストランの窓ガラスが割れ、建物内には海水が流れ込み、大きな被害を受けた「ホテルニューアカオ」。そこへコロナ禍が追い打ちをかけ、2021年に営業終了へと追い込まれました。
昭和の熱海観光を代表する施設の1つであった「ニューアカオ」。7月、新たな動きがありました。
リニューアルオープンしたんです。都内の企業が運営を引き継いだ形での再出発です。オープンを祝うセレモニーが行われた先週、昭和の熱海を彩った「ホテルニューアカオ」の新たな門出をおよそ250人の招待客が祝いました。
マイステイズ・ホテル・マネジメント 古澤周一取締役
「館内随所にあります昭和としての美意識、美しい空間がたくさんありますので、来館してもらって、写真を撮るなり、空間を楽しんでもらって、食事であったり、温泉に入ってもらって楽しんでもらいたい」
20階建てに250室の客室を備えるこのホテル。今回の改装では、設備面や厨房を重点的に行い、客室やメインダイニングは、昭和の良さをそのまま残したといいます。
大きな窓の向こうに相模湾の絶景
ホテルニューアカオスタッフ 藤本佑里さん:「それではご案内させていただきます。こちらのお部屋がインペリアルスイートルームでございます」
203平方メートルの広さを誇るスイートルーム。大きな窓の向こうには相模湾の絶景が広がり、内装や家具などは、昭和の良さをたっぷり感じられます。
ホテルニューアカオ 土橋裕樹総支配人:「昔、ここに来た方が、また来た際には懐かしいと思ってもらえるようなホテル、そして今回初めて来るような方には新しいと感じてもらえるようなホテル、そういったいろいろなものがこのホテルに詰まっているというような、まるで昭和の時代のおもちゃ箱のようなホテルの存在を目指していきたい」
観光業の大きなポイントは「体験」
リニューアルオープンとはいえ、ほぼ以前と変わらない装いで、再出発した「ホテルニューアカオ」。実は「体験をする」ということが今、観光業にとって重要なポイントになっているようです。
実際に熱海の観光客に聞いてみると…。
熱海市 熱海駅前(12日)
観光客(千葉から30代 夫婦と子供2人):「海と海産物ですかね。ローカルなお店も多くて、落ち着く雰囲気がすごくいいなと思う。やっぱり町並みじゃないですか。町並みとか景色だと思う」
観光客(東京から夫70代妻60代):「魚介のおいしいのを食べたかった」
観光客(男性東京から 女性奈良から 20代カップル)
「4年間留学に行っていたので、ちょっと日本っぽい感じの温泉旅行とかしたいなという感じで熱海にしました」
「私は海鮮が食べたいなと思って来ました」
観光客(東京から50代):「ゴルフをしに来ました。温暖な気候と食べ物がおいしい」
多くの人が、旅館やホテルに、ただ泊まるだけの旅行ではなく、旅行先で「何が体験できるのか」ということに注目しているようです。
ホテルニューアカオ「昭和の街を再現」
実際にホテルニューアカオで「にぎわい横丁」と呼ばれる場所に射的やゲームコーナーに加え、ちょい飲みバー「缶蔵」など、昭和の街を再現しました。
そして、国内では珍しい扇状のレストラン「メインダイニング錦」では、名勝「錦ヶ浦」を劇場のような段差のある客席から見下ろすことができます。
ホテルニューアカオ 土橋裕樹総支配人:「熱海に来るという旅行ですが、そんな中にはホテルだけではなく、熱海という町の楽しさですとか、過ごし方も含まれて、一つのコンテンツとなっているので、お互いに協力しながら、この熱海という町の魅力を高めていきたい」
「新しい文化」と「昔の文化」が同居する「熱海」。一度は立ち止まったホテル側も、この魅力を最大限生かしていきたいとしています。
マイステイズ・ホテル・マネジメント 古澤周一取締役:「やはり古くからの人気スポットというのは、多くの魅力があるがゆえに人気スポットであり続けた、と我々は思っているので、いろいろ歴史はあったものの、これからさらに熱海という地は、大きな魅力をさらにのばした形で、人を惹きつけていくのではないかと思う」
今、熱海ではアメリカや中国など、外国資本のホテルが相次いで参入しています。国内の企業がこうした企業にどう対抗していくのか。今後の熱海にも目が離せなさそうです。