【リニア】どうする「発生土置き場」 静岡市長「候補地否定する理由ない」 川勝知事「否定する理由ないが懸念ある」 静岡

静岡・川勝平太知事(22日):「勘案をしないわけにはいかないでしょう。ですから、勘案するということは、これは懸念があるからです。その懸念を私は思っています」

 いま、リニア中央新幹線の工事をめぐり課題となっているのが、工事によって発生した“土”の置き場についてです。

静岡市 難波喬司市長(6日):「その盛り土の候補地として否定する理由はないと思います」

静岡・川勝平太知事(22日):「難波さんに言われる通りでありまして、否定する理由は全くありません」

 「否定」はしないとした上で“懸念”という言葉を使った川勝知事。県側と静岡市側、それぞれの考えとは!?

県「候補地に深層崩壊が発生する懸念」

 リニア工事をめぐり、今注目を集めているのが、工事によって発生した土砂をどこに置くのか。現在、南アルプストンネルの工事で出た発生土については、静岡市葵区の「ツバクロ」が候補地の1つとなっています。ところがこの場所では土壌の中が崩れる、深層崩壊が発生する懸念があるとして、県は実際に災害が起きた場合の環境保全策をJR東海に明らかにするよう求めていますが、これに“あの人”が苦言を呈しています。

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静岡・難波市長「県にも責任」

静岡市 難波喬司市長(6日):「環境保全措置を、県がJR東海に求めるのであれば、河川管理者である県は、盛り土なし状態だが、その状態において、現在の河川の管理状況はどの程度の安全水準を確保しているかを示すべきである。JR東海に対処だけ求めるというのは、河川管理者としての(県の)責任がどうなのか問題にせざるを得ない」

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川勝知事「もっともなご発言」

 県に注文をつけていた静岡市の難波市長。これに対し、川勝知事は…。

川勝知事
「もっともなご発言であるというふうに受け止めております。 まず河川を管理している県としましては、100年に1度の雨が河川で流れることを確認しておりまして、現時点では河川改修等を行う予定はありません。また深層崩壊が起きた場合の河川への影響につきましては、県内の他の河川と同様具体的な評価は行っておりません。土石流が発生した場合に、下流への影響等を考慮して関係機関と連携して速やかに対応に当たるという姿勢でおります」

 河川管理法によると、河川整備の指針は国が作り、それに基づいて河川管理者である県が管理するということになっています。現時点で、県は土石流の「発生後」に対応という形をとっていますが、今後、安全性を検討する姿勢を示しました。

川勝知事:「近年、やはり災害の激甚化、頻発化というのもございまして新たなステージに入ったという認識を持っています。関係部局には来年度に向けた対策の検討を指示したところであります。これに加えて是非この深層崩壊に関わる件につきましては難波市長さんも優れた技術官僚としての知見もお持ちで一緒にシミュレーションをしていければというふうには思っております。」

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静岡・難波市長「ツバクロは発生土置き場候補地として否定する理由ない」

 また、難波市長は県がJR東海に、残土置き場の候補地の再検討を求めていることに対しても疑問を投げかけています。

難波市長
Q.市長は候補地にツバクロが良いと、ツバクロで今後協議していきたい?

A.「ツバクロはもう以前からここと言うことで、2014年から候補地の選定をしていますから、ここの場所がだめだということにはなっていないと思います。ですから、ここは候補地として成り立ちうるという前提で、じゃあその時の環境影響評価はどうですか? ということになっていますから、ここをその盛り土の候補地として否定する理由はないと思います」

【リニア】どうする「発生土置き場」 静岡市長「候補地否定する理由ない」 川勝知事「否定する理由ないが懸念ある」 静岡

川勝知事「難波さんの言う通り。否定する理由ない」が「懸念ある」

 これまで副知事や理事として最前線でリニアに向き合って来た難波市長。元部下の発言に、元上司の川勝知事は…。

川勝知事:「ツバクロ発生土置き場につきましては、難波さんに言われる通りでありまして、否定する理由は全くありません」

Q.前回の知事会見では、深層崩壊や同時多発的な崩壊の懸念から適地ではないというような見方を示されていたかと思いますが、それはその見方から変わったということなんでしょうか?

A.「いえいえ。ツバクロ発生土置き場をですね。JR東海さんが提案されているもので、発生土置き場としてこれから適切かどうか議論するということなんですけれども、(JRのデータは)小規模崩壊というのを前提にされているわけですね。国策であり、国際的責務として生態系の保全をしなくてはならないと、それから深層崩壊をした記録が2000年に4回起こっていると、それからもう一つはいわゆる深層崩壊頻度マップで、一番高い確率で深層崩壊が起こる場所であると言われていることですから。そうしたものを勘案をしないわけにはいかないでしょう。ですから、勘案するということは、これは懸念があるからです。その懸念を私は思っています」

 「否定」ではなく「懸念」をしていると話した川勝知事。田代ダム案の協議が進み、水問題に関しては出口が見える中、残土をめぐる問題の解決にはまだまだ時間がかかりそうです。

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流域市町はJR東海と意見交換

 一方で、ここのところ、大井川流域市町はJR東海との歩みを進めています。9日、静岡市では大井川流域の市長や町長らとJR東海がリニア中央新幹線の工事をめぐる意見交換会を行いました。

 大井川流域からは、リニア工事に関する懸念や不安について定期的に意思疎通を図れるよう、事務レベルの「連絡調整会議」を設置するよう提案。そのうえで、この会談を次のように“評価”していました。

島田市 染谷絹代市長「まず率直に申し上げて、2年前の金子社長との意見交換会は緊張感がみなぎっていたと思います。きょうは柔らかい感じで話し合いができた。JRのこの2年間の地域に寄り添おう、そして私たちの不安を払拭しようと努力されているということについては、皆さんがそれを認めて、きょうの雰囲気になったのかなと感じた」

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 丹羽俊介社長が就任してから初めてとなった意見交換会。これについて川勝知事は「双方の信頼関係ができた」と評価しました。

川勝知事:「双方にとってよかったのではないかと受け止めております。JRのこの2年間の地域によりそおうという努力というよりも、島田の染谷さんを中心にした、流域市町の首長さんが国あるいはJR東海の方に、一貫して双方のコミュニケーションを図ろうということで努力されて、それが大きく今回実ったかなと私は受け止めております。やはり、丹羽社長が言われるように、科学的工学的にどうだということをしっかりとご説明され、そして流域の皆様方が納得すると、あるいは利水関係者全部が納得するということがとても必要なわけですね。そういう場を持ちたいとおっしゃっていますし、信頼関係ができた。これは今回の最高の成果じゃないかと思いますね」

【リニア】どうする「発生土置き場」 静岡市長「候補地否定する理由ない」 川勝知事「否定する理由ないが懸念ある」 静岡

ところで年頭の首相発言はどうなった

 大井川流域とJR東海の信頼関係が強まった一方で、静岡県と国との溝は埋まらないようです。

岸田文雄総理大臣(1月4日):「本年はリニア中央新幹線の全線開業に向け、大きな一歩を踏み出す年にしたい。その中で静岡工区に関しては、水資源と環境保全について、地元自治体との調整あるいは国交省の有識者会議での議論をさらに進める。また、リニア開業後の東海道新幹線における静岡県内の駅等の停車頻度の増加について、今年夏をめどに一定の取りまとめを行い、関係者に丁寧な説明を行っていきたい」

 今年1月に開かれた岸田総理の年頭会見。その場で飛び出したのが静岡県の新幹線をめぐる発言です。リニア開業後に、静岡県内の駅に停車する東海道新幹線の便数をどのぐらい増加できるのか、今年の夏をめどに取りまとめることを明言していました。

 あの取りまとめはどうなったのか─、川勝知事が言及しました。

川勝知事
Q.間もなく10月になって秋になろうとしていますが、国から県の方に何かアクションはありましたでしょうか。

A.「いいご質問をいただきまして、ありがとうございました。9月23日は秋分の日じゃないでしょうか。ですから、もう秋なんですね。暦の上では。ですから、夏までというのはどうなっているんでしょうか。これはやはりきっちりと、なぜ遅れているのかも含めて、首相としてはぜひおっしゃったことを我々にお示しいただきたいと思っております」

 これまで注目を集めていた「水問題」が解決に向かう中、リニアをめぐっては様々な“新たな視点”が注目を集めはじめています。

  (9月25日放送)

【リニア】どうする「発生土置き場」 静岡市長「候補地否定する理由ない」 川勝知事「否定する理由ないが懸念ある」 静岡