土石流災害から1年2カ月 「まだモヤモヤしっぱなし…」 母親と弟を亡くした女性の思いとは 静岡・熱海市
母親と弟を失った女性
酒井真理乃さん:「息子からツイッター(土石流の動画)を見せられて、これおばあちゃん家だよねって、もうなんて言うの映画を見てるみたいな感じで。
(発災から)2日後に行った時に上(高台)から撮った動画がこれですね。多分、ここらへんかな家が。土台もまだ全然見えなくて。ここが道ですよね」
2021年熱海市で発生した土石流災害で、母の太田佐江子さんと弟の太田幸義さんを失いました。現在酒井さんは都内で夫と息子の3人で暮らしています。
酒井真理乃さん:「まだ受け止められない。だから本当に突然で急な出来事で、何の予兆もなかったので受け止めはできないですね」
2021年7月3日。熱海市で発生した大規模な土石流。27人が亡くなり、未だ太田和子さんの行方が分かっていません。
ふるさとの景色が一変
発災から5ヵ月後。酒井さんや遺族らでつくる被害者の会は、土石流の原因を明らかにするため盛り土の現在と前の土地所有者を殺人罪で刑事告訴しました。
酒井真理乃さん:「いつも熱海で生まれ育って必ず帰るところがあると思っていたのが、全部なくなった。これは絶対天災じゃなくて人災だと思います」
【※現場で花手向ける】
そして2021年12月。この日、酒井さんは佐江子さんや幸義さんが見つかった場所に初めて花を手向けました。
酒井真理乃さん:「改めていなくなっちゃったんだなって。天国で安らかにしてね。それだけです」
思い出が詰まった伊豆山。ふるさとの景色が一変しました。
酒井真理乃さん:「普段生活しているのは向こう(東京)ですので、まだここに来れば会える。うちがある。分からない。何が起こったのか」
母の遺影見ながら花瓶を置く
酒井真理乃さん:「母は本当に庭の手入れが大好きだったので、あそこ(自宅周辺)はみかん畑いっぱいになってて、全部なくなっちゃったのがすごく残念ですね」
18歳まで伊豆山で生活していた酒井さん。夢だった音楽を学ぶために神奈川の短期大学へ進学。佐江子さんはかけがえのない存在でした。
酒井真理乃さん:「小さい頃から私はピアノを習わしてもらって。当時、音大行くのも大変で父は反対したんですけれど、母があとをおしてくれて、こっち(神奈川)に来させてくれて、一応やっぱりお金もかかるし、いろいろやってくれたので、すごく母には感謝して」
嬉しい知らせもモヤモヤは晴れず…
そして発災からちょうど10カ月が経った2022年5月3日。酒井さんに嬉しい知らせが。
酒井真理乃さん:「孫が生まれたんですけど、本当に母が(遺体で)見つかった前後に、おめでたが分かって」
孫の愛唯(めい)ちゃん。2022年5月3日に誕生しました。
酒井真理乃さん:「変な言い方ですけど母の生まれ変わりみたいな。母も見守ってくれていると思いますので。(母と弟は)天国で仲良く安らかに過ごしてほしいですね。こっちは頑張ってやるので」
酒井さんの1年2カ月。
酒井真理乃さん:「気持ち的にはまだモヤモヤしっぱなしで、もちろんすっきりしてませんし、1年本当にあっという間でしたね。(裁判で)原因究明してくれて、そしてやっぱり(違法な盛り土に関わってきた人は)個々の方にも謝罪してほしいし、責任を取っていただきたいと言うことですね」
原因究明が進まないかぎり遺族の時間は止まったままです。