【土石流2年】いまだ200人以上が『避難生活』 地域をつなぐ「喫茶店」 静岡・熱海市
おととし7月に発生した、熱海市伊豆山での土石流災害。28人が亡くなり、今も200人以上が避難生活を余儀なくされています。
お年寄りに食事を配達するボランティア活動
須藤誠人アナウンサー(熱海市伊豆山 2021年7月13日):「長い坂道、そして急な階段が続く伊豆山地区に住む高齢者の方々に昼食を届けにボランティアの方々が回っています」
発災直後から、お年寄りに食事を配達するボランティア活動をしていたのが、復興支援団体「テンカラセン」の代表、高橋一美さんです。6月30日も高橋さんは、お弁当を配達していました。経営する弁当店で注文を受けて、玄関先まで届けています。
高橋さん「おはようございます。お弁当。2つね」
こちらのお宅では、家族の介護のため、なかなか外出できないという理由で、高橋さんに、お弁当の配達を依頼しています。
弁当を注文した住民:「よく頑張るよね、このお兄さんね、助かっている、うんと助かっている。ここのウチ、忙しいんだよ、すごく、忙しいでしょ」
高橋さん「忙しくないよ」
住民「またそう言うんだよ、こんなちっちゃい時から知っているから産まれた時から知っているんだから」
高橋さん「ここの人たちにお世話になったからね」
住民「お世話になったのはこっち」
「1日に会うのが僕1人」…ついつい話す時間が長くなる
高橋さんは4年前、地元・伊豆山に戻り、実家の弁当店を受け継ぎました。
また、土石流災害のあとには、被災者支援を行う団体「テンカラセン」を立ち上げました。
高橋一美さん:「小さいころからお世話になった、おばちゃんや、おじちゃんたちがこの伊豆山にはいっぱいいるので、たった1つのお弁当を届けるにあたっても、1分、2分で終わるのが、そのおばちゃん、おじちゃんからすると、1日で会うのが僕1人だと思うと、話す時間が長くなってしまうので、そこはなるべく聞いてあげなきゃというのは、気にするようにしています」
Q.けっこうお弁当の配達で長くなってしまうことも?
A.「そうですね」
地域の人をつなぐ「あいぞめ珈琲店」
伊地アナ:「そんな高橋さんが地域の人たちをつなぐ場所をつくりました。それが、こちらのカフェ、あいぞめ珈琲店です」
2年前、土石流で寸断された国道沿いに建つビルの中に「あいぞめ珈琲店」があります。天気のいい日には、窓から相模湾が一望できる絶景のカフェ。高橋さんらが、クラウドファンディングで資金をつのり、去年4月にオープンしました。これまで、多くの地元の人たちや観光客が利用してきたんです。
高橋一美さん:「寄り添える場所、伊豆山の人たちが戻ってこれる場所をつくりたかった」
「あいぞめ珈琲店」のすぐ近くで、クリーニング店を営む岡本尚子さんも、常連客の1人です。
発災当日、クリーニング店には、大量の土砂が店の中にまで流れ込みました。連日、土砂を取り除く作業に追われ、営業を再開できたのは4カ月後のことでした。
岡本尚子さん
Q.どれくらいの頻度で行かれる?
A.「1週間に2回ぐらい」
Q.地域の人たちと話すことで得られることは?
A.「コミュニケーションの場として、私たちのような年齢の高い層から若い人からいろんな話ができる。話をすることだけで、ちょっと落ち着く面もありますので、それがとてもうれしかった。たわいないおしゃべりなんですけど、日常の小さなことでお話してると、日常でなかった日々が何カ月も続いて、そういう思いをしてきたので、それがうれしい。行けば行ったで知っている方が当然いらっしゃるから『元気してた?』とか声を掛け合えることができますし」
高橋一美さん:「地元の方に使っていただけるのは、うれしいことで、観光客の方も来ていただいて、地元の方と観光客の方が交わる場所、つながる場所として、会話していただける光景を見ることが、前に進んでいる感がある」
Q.あいぞめ珈琲店に来て被災された方同士で話をすることで
気持ちが楽になったというような声を聞くことは?
A.「すごくそれはありますね。前を向けたという言葉や、一歩が踏み出せたとか、家から出られなかったということが多かったんでしょうね。その一歩が、この珈琲店がきっかけになってもらえれば、そういった人がいるだけで僕らは救いにもなるし、これから警戒区域が解除されることで、またそういった人の少しでも救いになれば、きっかけになればと、それだけです」
熱海市は、伊豆山地区で設定している「警戒区域」を9月1日に解除する方針です。