【2021年静岡】熱海市土石流災害を振り返る(1) 未曽有の被害は“自然災害”ではなく「盛り土」による“人災”か

先週末、熱海市で開かれた集会。参加していたのは7月に起きた土石流の遺族や被害者です。

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静岡・熱海市土石流災害を振り返る(1) 未曽有の被害は“自然災害”ではなく「盛り土」による“人災”か

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娘を亡くした小磯洋子さん:「上に盛り土があって、これが流れたら下の人に甚大な被害があって、死亡者も多数出るというのを承知の上で業者はやっていた、未必の故意ということで、告訴している」

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 娘の友紀さん(44歳)を亡くした、小磯洋子さん。盛り土の現在と前の所有者を殺人容疑で刑事告訴している「被害者の会」の一人です。

娘を亡くした小磯洋子さん:「事件から5カ月経つが、悲しみや苦しみはまったくあの日と変わっていません。娘の未来50年を返してほしい」(12月6日 刑事告訴時の会見)

すべては、あの日…

視聴者映像 熱海市伊豆山 7月3日
「見て、上…」「怖い…、平気?」「ねぇ大丈夫?」「嘘でしょ…」

画像1: すべては、あの日…

 あの日、熱海市伊豆山を襲った土石流。ふるさとの日常を一変させました。26人が亡くなり、今も太田和子さんの安否が分かっていません。

画像2: すべては、あの日…

片山真人アナ:「熱海市の伊豆山上空です。いま映し出されているのが起点となった伊豆山第一配水池です。大きな陥没が見受けられます。山肌があらわになっています」

 当初は記録的な長雨によって起きた大規模な自然災害とみられていました。しかし、発生から4日後―

自然災害ではなく「人災」

難波喬司副知事 7月7日「災害を甚大化させたのは盛り土。これは確実だと思います」

 熱海市に盛り土の申請をしたのは、神奈川県小田原市にある不動産会社。この土地の前の所有者です。

 8月、盛り土問題は事件化に向けて動き出しました。遺族らによる「被害者の会」の代表が前の土地所有者を業務上過失致死の疑いで、現在の土地の所有者を重過失致死の疑いで刑事告訴したのです。

画像: 自然災害ではなく「人災」

土石流で母を亡くした 「被害者の会」 
瀬下雄史代表:「実態としては土石流そのものが盛り土。それが全てなので、それは許せない思いがある」

10月強制捜査

画像: 10月強制捜査

静岡県警は異例の早さでこれを受理すると、強制捜査に踏み切ります。

林輝彦アナ:「小田原市のこちらの会社に捜査関係者が入りました。そして、盛り土の前の土地所有者も建物に入っているものと思われます」(神奈川・小田原市 10月)

 今月6日には殺人容疑での告訴も受理し、捜査を進めています。

行政側の過失も…

ずさんな行為があったとはいえ、行政の過失も否めません。10月、県と熱海市は盛り土を造成した業者への対応をめぐる中間報告を公表。

 熱海市の指導を受けて業者が提出した計画では許容量を大幅に上回る土砂を搬入できるとする内容になっていましたが、見落とされ、そのまま受理されていたことがわかりました。

 その後、現在の所有者が土地を取得。市は排水設備の改修工事が開始されたとして、条例に基づく措置命令を見送っていました。

画像: 行政側の過失も…

熱海市 斉藤栄市長:「客観的な評価が必要だと考えていますが、この時点で大きな今回起こったような土石流が発生することは想定しておりませんでした」(10月)

教訓をどう生かすか…富士市の取り組み

県内にも今回の土石流をきっかけに、対応の強化に取り組む自治体があります。

斉藤慎一朗記者:「富士市の山中にある盛り土。道路側からは段差が確認できるが、奥は土砂が放棄されたまま整地されていない」

 富士山麓を抱え、不適切な盛り土に長年悩まされてきた富士市。熱海市の土石流発生後、富士市では現場調査の回数を2倍に増やしたそうです。

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 県内の業者が所有するこちらの土地では市への申請がないまま、数万立方メートルの盛り土がされています。富士市内で確認されている、届け出がない盛り土は23カ所。先ほどとは別の場所でも…。

点検の職員やりとり:「変わったちょっと?」「あまり変化は感じない。トラックがいなくなっただけで。これといって崩れた感じもないもんで」

 県外の業者が所有するこの土地には首都圏ナンバーのトラックがおととしの夏ごろから土砂を運び入れているそうです。盛り土の高さはおよそ30メートル。その量はおよそ6万立方メートルと推定されています。

富士市土地対策課 
増田圭佑さん:「(トラックの)運転手にもどこから持ってきたのと聞くが、やましい運び方なので一切教えてもらえない。私たちも捜査権限があるわけではないのでちゃんと聞けないんですよね。情報提供をお願いするレベルでしかないので、そこはもどかしいところ」

 市は業者に対して土砂搬入の「中止命令」と「原状回復命令」を出しましたが、業者が応じることはなかったといいます。富士市には不適切な盛り土を規制する条例がありますが、罰則は最も重くて「2年以下の懲役または100万円以下の罰金」。抑止力としては不十分なのが実態です。

国や県も盛り土をめぐる法整備を

政府は盛り土をめぐる規制の強化を検討しています。

岸田総理:「今夏の熱海市における土石流災害を踏まえ、これまで規制が及ばなかった区域においても盛り土規制を行うための法整備を進めます」

画像: 国や県も盛り土をめぐる法整備を

静岡県も盛り土の「許可制」を柱とした新条例を来年7月にも施行する方針です。

富士市土地対策課
増田圭佑さん:「(行政が)違反にならないような指導をしていくことが大事。いかに初期段階で現場を止めること、原状に戻すことができるか、そこのスピード勝負になってくる」