死者・行方不明者28人…土石流災害から10カ月 いまだ避難生活続く「先が見えない…ここでないと生活できない」 静岡・熱海市
死者27人、行方不明1人の大惨事となった静岡県熱海市の土石流災害。いまだ避難生活を続ける伊豆山地区の男性についてです。戻りたいけど戻れない現実、あれから10カ月が経ちました。
あれから10カ月…家族4人の暮らしが
太田滋さん:「ここからうちの畑です。これはライム。こっちはレモン」
熱海市伊豆山地区。
太田さん:「今、花が咲き初めまして」
太田滋さん(65)。伊豆山に建てた一軒家で、家族4人で暮らしていました。
30年以上前からここで、レモンやライムなど5種類の果物を育てています。
太田滋さん:「毎日、畑に来て。木の顔を見るというか、そういう作業が農家はそれが一番、毎日来て、とにかく何でもこう見て観察するのが、必要だと思います」
太田滋さん:「このレモンは、すっぱいにはすっぱいが糖度も甘みもある。いろいろ深みもある」
自宅は警戒区域…今も避難生活「戻れるのかな、という気がします」
自宅は、畑から500メートル離れた警戒区域の中。発災10カ月、避難生活を余儀なくされています。
太田滋さん:「10カ月経って戻れるのかなという気がしますね。これで本当に安全だといえて、今まで同じような生活ができるのか。何人が戻ってくるのか。ねえ。まだ先が見えないですね」
太田滋さん:「まだ太田和子さんはそこにお住まいで、ここから流されたと思うがまだ見つからない」
家族で暮らした伊豆山の「今」。
太田滋さん:「でも、いつかはここに戻って来ないといけないとは思っています。私はここでないと生活できないと。他のところを知らないから、ここには戻りたいと。いずれかは戻りたいと
思っています」
被害者の会の副会長に就任「普通の生活がなぜこんなことに…」
去年8月。遺族や被害にあった住民らが設立した「被害者の会」。太田さんは副会長に就きました。
太田滋さん:「普通の生活、そんなに裕福でもなく、みんなで家族含め、町内会、近所のコミュニティでやってきたのが、なぜ急にこんなことになってしまうのかというやるせないと言うか、怒りというか、そういう気持ちです。被害者が集まることで大きな力になって、よりよい地域が出来ればと思っている」
会は、被害を甚大化させたと指摘されている盛り土があった土地の現在と前の所有者を殺人の疑いで刑事告訴。さらに、慰謝料を求める集団訴訟も起こしています。
「いつ戻れるのか…あと2年くらいかかるのか」
12月から1月が収穫時期のレモン。避難先と畑が離れてしまったため、今も多くが残ったままです。
太田滋さん:「本当は実がとれていないといけないが、4カ月5カ月遅れています。怠けちゃったということですよね。土石流をいいことに怠けちゃったと。本来ならもっと計画的にしなくてはいけないのを、それを言い訳にはならないですけど、怠けちゃったということです」
収穫時期がずれても、一つ一つ丁寧に。
太田滋さん:「土石流を言い訳に自分の人生を失いたくない」
そして、きょう。
太田滋さん:「警戒区域がいつになったら解除されて、戻れるのか、本当に自分自身だけのことでも、いつ戻れるのか、全体の方、伊豆山今離れている方もいつ戻れるのか、先が見えない、2年、2年先に、早くても2年、あと2年くらいかかるのかなって思っていて、難しいと思います」