「本当に綱渡り状態」 感染者急増…濃厚接触者の調査に1時間 深夜未明も電話対応 保健所に密着 静岡・沼津市

 段ボールの中にびっしり詰められた大量の紙。これは静岡県東部保健所管内で今月、新型コロナに感染した人の調査票です。患者1人につき1枚で、その数はおよそ1300枚にも上ります。

画像: 「本当に綱渡り状態」 感染者急増…濃厚接触者の調査に1時間 深夜未明も電話対応 保健所に密着 静岡・沼津市

発生届は1日60件

 沼津市や三島市など8つの市と町を管轄する東部保健所。新型コロナ感染拡大が続いておよそ1年半。日々、膨大な業務に追われていますが、第5波の到来でその負担は跳ね上がっています。

静岡県東部健康福祉センター医療健康部 神田洋美部長:「毎日の発生届がボードにずっとザーっと書かれる。それを見ただけで先が見えない。本当、みんなで倒れないように、早く解放されたいという思いはみんなそう思っていると思う。でもなんとかみなさんに良くなってもらいたいという思いで活動している」

 取材した25日は三島市でクラスターが発生し、いっそう慌ただしい様子でした。感染者の発生届は7月に入ってから1日およそ60件。

 濃厚接触者などの調査は1人につき1時間ほどかかり、現在は土日も当番制で対応。残業時間が100時間を超える職員も少なくありません。

静岡県東部健康福祉センター医療健康部 神田洋美部長:「私も子どもがいるが、すべてほったらかしで、夕食とか家のことはすべてやってもらっている。やはり家族にも負担がかかっているなと思う」

人出不足も深刻

 こちらは東部保健所が入る庁舎の一室です。

画像: 人出不足も深刻

職員(電話の声)
「濃厚接触ですが、先ほど聞いた限りだと職場内ではマスクをされていたようなので、いない。同居家族の方だけでいいかなと」

 症状などの聞き取りを行っているのは、県庁から応援にきた職員。保健所の職員だけでは対応できず、人手不足が深刻になっています。

 臨時で設けられたこの部屋には固定電話がなく、対応に使っているのは携帯電話です。

職員が一番つらいと話すのは

 さらに職員が今一番つらいと話す、大きな課題が―。

職員(電話の声)
「午後2時に入院ということでお願いしますということでした。なので2時に着くように、またこちらの職員が家に伺いまして、ご体調芳しくないところ、お待たせして申し訳ございません」

 感染者の急増でこの患者のように入院できるケースは少なく、多くの人は自宅での療養を強いられています。

職員
「今、病床がすごくいっぱいの状態で、体調が悪いと連絡いただいてもすぐに入院というのがすごく難しい状態。なので本当に(患者が)つらい中、すぐに対応できないのが、対応してるこちらとしても、すごく心苦しい。もちろん一番つらいのは患者さん・ご家族というのは分かっているが、こちらとしても非常に厳しい。精いっぱいですね、なんかもう…」

安否確認も…

画像: 安否確認も…

 一方、紙袋を片手に保健所を出ていく職員の姿が。

Q.今からどちらに?

A.「連絡がつかない患者がいるので、安否確認に行ってきます。体調が悪いと電話に出られない方が多いので、連絡がつかない方には直接会いに行っている」

 この患者の元へ安否確認に行くのは3回目。忙しい中でも患者の命が心配だと言います。

 他にも一人で病院に行けない患者の送迎も担うなど、業務は広範囲に渡ります。

「なにもできないもどかしさ」

 駿東田方地域では現在8割ほどの病床が埋まっていて、ステージ4の基準となる50%をはるかに超える数字が続いています。

静岡県東部健康福祉センター医療健康部 神田洋美部長:「『入院できないのか』『何とかしてもらえないのか』『いますぐ受診・入院ができないのか』というお叱りの言葉が多くて、『息苦しい』『つらい』『熱が高くて耐えられない』『ごはんも食べれない』という声が多いので、助けてあげたいけど、助ける手段がない。本当につらくなる。泣きたくなるくらいつらい。何もできないもどかしさやつらさがある。それは職員皆同じだと思う」

 現在、医師会の協力で自宅療養の患者に対し、健康観察や薬の処方の対応をする医師が少しずつ増えているものの、保健所の負担は増すばかりです。

深夜、未明でも電話対応

 専門家からは「保健所の対応能力の限界」を指摘する声も出ています。

静岡県東部健康福祉センター医療健康部 神田洋美部長:「在宅療養者の方には、夜の緊急連絡先といって携帯の電話番号を教えている。毎日当番を組んで、受けるようにしている。もう深夜も未明も時間構わず、かかってくる」

Q.寝れないですよね?

A.「そうですね。(携帯を)持った職員はとても疲弊している。今、在宅で亡くなるという方はいらっしゃらないが、いずれはそういうものが来るのではないかと毎日ドキドキしながらやっている。本当に綱渡り状態で皆やっている」