浜松医療センター感染拡大78人 新規入院患者の受け入れ停止、手術の中止…外科系病棟にも広がるクラスター

鈴木誠記者:「浜松市の拠点病院である浜松医療センターが非常に深刻な状況に陥っています。クラスターが拡大し、救急患者の受け入れのほか、手術も中止するなど、影響が広がっています」

画像: 浜松医療センター感染拡大78人 新規入院患者の受け入れ停止、手術の中止…外科系病棟にも広がるクラスター

 3月7日、浜松医療センターの院長が緊急の会見を開きました。

海野直樹院長(7日):「今回、記者会見は、当院における新型コロナ感染が新たに深刻な状態になったということをお知らせすべく開きました」

 一体何が深刻になったというのでしょうか。

海野院長:「17人は今まで出ていなかった病棟から一気に出た。最初にクラスターが発生した病棟は内科系の病棟でした。きのう新たに多くのコロナ患者が発生した病棟は外科系の病棟。その病棟でコロナのクラスターが出たことを我々、非常に深刻に考えた」

深刻…重篤化しやすい人工透析の患者が多い外科系病棟への拡大

 これまで感染者が出ていなかった外科系の病棟にも感染が広がったというのです。問題は、外科系の病棟には手術室があるということです。

海野院長:「手術室を使うことが困難になったと考えて、当院の使命である救急医療、高度な地域医療が継続が困難だと考えた。苦渋の決断だが、今後しばらくの間、手術、内視鏡の検査を一切中止することにした。職員もこの間に全体で18人感染してしまい。病院の患者を診る戦力がかなり低下していると言わざるを得ません。いつになったら収束するのかは、今のところ見通せない状況です」

 また、外科系の病棟には、新型コロナに感染した場合に重篤化しやすい人工透析の患者が多くいることも深刻なのだといいます。

海野院長:「コロナ患者で最も重症化しやすいといわれている透析の患者が多数いる病棟にクラスターが波及したということが、当院のクラスターの現状のグレードを一段階も二段階も重篤なものにした。通常通りの診療は続けられないと考えた」

 救急患者と新規の入院患者の受け入れ停止、そして手術の中止。ベッド数600床の静岡県西部の拠点病院が、病院としての重要な機能を止めざるを得なくなってしまったのです。

海野院長:「地域の皆様方に通常の医療を提供できなくなったこと、近隣の病院の皆様にその分、負担をかけることになったことを大変残念に思っている。今回、誠に申し訳ございませんでした」

 浜松医療センターのクラスターは3月8日現在で78人に上っています。このうち医療従事者が24人、患者48人、家族など2次感染が6人だということです。

画像: 深刻…重篤化しやすい人工透析の患者が多い外科系病棟への拡大

病院を利用している浜松市民は…

30代女性:「(病院から)機能が停止していると言われたので」
Q.機能が一部停止というところの話はでた?
30代女性:「はい。でも検診は絶対にいかなきゃいけなかったので、仕方がないなと思いつつ、気をつけながら行こうという気持ちできました」

夫:80代 妻:70代 
Q.対策しっかりしていた?
夫妻:「相当やっていると思いました。熱と手洗いと一人ずつ点検していましたし。なんでそうなっちゃうのかなって。わからんね」

「検査が陰性、陰性、陰性、その次の日に陽性になる」

 なぜ、外科系の病棟にも感染は広がってしまったのか。内科病棟と外科病棟は同じフロアにありますが、感染が広がらないよう防火シャッターを下ろして、遮断していたといいます。

Q.外に広がったのは医療従事者が出入りしたことで感染した可能性が考えられる?
海野院長:「その可能性は否定できない。防火シャッターを閉めるまでは水平移動をしていた」

 また、共用トイレや廊下の手すりなどを通じて院内感染が広がったとの見方を示しました。

さらに…。

海野院長:「検査で陰性というのは、我々としてはほとんど意味ないなと。だからこれで大丈夫という安心感は得られないというのが、私たちの率直な感想。中には4回以上(の検査)で、ようやく陽性化した方もいる」

 病院では、クラスター発生後、陽性者を早期に発見するために、原則3日ごとに医療従事者や患者らにPCR検査をしていました。この検査で陰性を確認しても、「ほとんど意味がなかった」というのです。

矢野邦夫院長補佐:「検査陰性ということが感染していないことにならない。ウイルスは発症する1日前2日前からウイルスを出してくるので、検査が陰性、陰性、陰性、その次の日に陽性になる。これは衝撃的で、そういう人がいっぱいいた」

出港前に検査…クラスター発生 県担当者「検査はその時点でウイルスが検出できなかっただけ。安心しないで」

 検査で陰性だからと言って、安心はできない。これは先週金曜日に発生した県内初の漁船クラスターでも同じ教訓があります。

画像: 出港前に検査…クラスター発生 県担当者「検査はその時点でウイルスが検出できなかっただけ。安心しないで」

静岡県疾病対策課 後藤幹生課長(3月5日):「この漁船クラスターは非常に示唆に富む。漁船の方々は出港前に、20数名全員が抗原検査をしている。そこで陰性を確認してから出港したと聞いている。なので、安心したのかもしれないが、船内ではマスクをしていないことが多かったと聞いていますし、わりと接近して食べていたと聞いています」

 この漁船は県内の港を出発し、出港5日後に乗組員に症状が出て引き返しました。乗組員10人に感染が広がりましたが、出港前に全員が抗原検査を受け、陰性が確認されていたのです。

後藤課長:「あくまでPCR検査や抗原検査などは、その時点でのウイルスが検出できなかっただけですので、その後、マスクをしなくていいことにはならないということを、この例は教訓として示している。ですので、一時的な検査の陰性で、その後マスクをしないといったことは厳に慎んでいただきたいと考えている」