【袴田事件】再審認めた元裁判長「私に使命与えてくれた事件」 再審法は改正が必要
袴田巌さんは87歳に…60年ぶりのお花見も
満開の桜の木の下で和菓子をほおばり、支援者がたてた抹茶をゆっくりと飲み干す87歳の袴田巌さん。先週、浜松市北区にある都田川沿いで、およそ60年ぶりの花見を楽しみました。
姉 ひで子さん:「今までお花見するって言っても、それどころじゃないとかなんとかって、必ず言うんです。(花見に行ったのは)それだけのんきになったと思う。拘禁症というのも少しずつ少しずつだけど、薄れてきたと思う。これで再審開始になって、無罪放免ってことになるとまた一層良くなると思う」
東京高裁が再審開始決定
伊地健治アナウンサー:「再審開始!再審です! 東京高裁は袴田事件の再審開始を認めました」
1966年、旧清水市でみそ会社専務一家4人が殺害された事件で、袴田巌さんの再審開始が3月、確定しました。
袴田巌さん:「喜ばしい日になった。闘いはあくまで勝たなきゃいかんということで、毎日挑戦してきた。これで私も満足した」
10日、静岡地裁で裁判官、検察、弁護団による三者協議が開かれ、再審に向けて審理の方向性や今後のスケジュールについて、事前に話し合うことになっています。
東京高裁は、3月13日の再審開始決定で、犯行着衣とされた5点の衣類は、捜査機関を含む第三者によって捏造された可能性が高いなどと指摘。三者協議では、検察側が袴田さんの有罪を求めるかどうかが焦点となります。
2014年に静岡地裁が再審決定 死刑囚のまま釈放も
死刑が確定していた袴田事件が、再審に向けて大きく動いたのは2014年のことでした。静岡地裁は、袴田さんの再審開始を認めた上で「死刑囚」という肩書のまま、48年ぶりに釈放するという極めて異例な決定を出しました。
村山浩昭元裁判長:「これ以上、拘置を続けるのは耐えがたいほど正義に反する」
村山浩昭元裁判長は…
当時、こう決定に盛り込んだ村山浩昭元裁判長に、事件への思い、そして再審の抱える課題について取材をしました。
Q.袴田事件を担当したことについて
A.私に使命を与えてくれた事件。『再審法』改正が必要だと訴える原点に袴田事件がある。ああいう(えん罪)事件を二度と起こしてはいけない、というつもりで事件に向き合っているし、私が有罪判決を出した人が再審請求したときにきちんと審理・判断が受けられるようになってほしい。
Q.ひで子さんについて
A.(ひで子さんは)「検察官が抗告しても検察官個人はうらめない、組織ですから」と言った。ふつうはそうは言えない。それを難なく言っているところが、並の方ではない、とういう卓越した人格の方だと思う。
Q.2014年の再審開始決定について
A.できるだけ審理を充実させて、早く結論を出さなければいけない、という意気込みだったことは間違いない。
再審法で変えるべき点は
また、再審法の問題点について、村山元裁判長は以下の2点を指摘しました。
「証拠開示の拡充整備」
規定が定められていないため、検察に証拠開示の勧告をどれだけするか、裁判官の裁量に委ねられている。
「検察の不服申し立て(抗告)禁止」
検察の主張は再審公判の場ですべき。(検察が)抗告することで解決が長引き、えん罪の救済が遅れてしまう。