東京高裁が袴田事件の再審開始決定…東京高検の「特別抗告検討」の動きに弁護団らが反発 /今週の静岡

伊地健治アナウンサー(東京高裁 13日):「再審開始!再審です! 東京高裁は袴田事件の再審開始を認めました」

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東京高裁が袴田事件の再審開始決定…東京高検の「特別抗告検討」の動きに弁護団らが反発 /今週の静岡

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 1966年、旧清水市のみそ会社の専務一家4人が殺害された事件で死刑が確定し、無実を訴えてきた元プロボクサー、袴田巌さん。現在87歳。東京高裁は13日、再審=裁判のやり直しを認める決定を出しました。

姉の袴田ひで子さん:「皆さまありがとうございます。再審開始になりました。本当にうれしいです」

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袴田巌さん・ひで子さん(14日):「うんといいことあったの、ね。当たり前だけどさ、もう心配いらんよ。何にも心配いらん。ね?」

支援者「検事長、恥を知れ」

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 しかし、17日…。

袴田巌さんの支援団体 山崎俊樹事務局長(都内 14日午後1時ごろ):「まさに私は検事長、恥を知れと言いたい。検事総長恥を知れと。よくそんなこと言えるなと思いますよ」

「この試合ノックアウトで終わらせたい」

「袴田事件」の再審開始を認めた東京高裁の決定。東京高検はこれを不服として、最高裁に特別抗告する方向で検討していることがわかりました。事件から57年。またしても裁判やり直しの扉は閉ざされるのでしょうか。

日本プロボクシング協会 袴田巌支援委員会 新田渉世委員長:「高裁の再審開始決定が出て、いいパンチを当てられたと思ったが相手が反撃、カウンターパンチを打って来そうな、パンチを出す構えを見せたということなので、何としてもこの試合ノックアウトで終わらせないと、本当に早くこのラウンドで終わらせたい、決着をつけたい」

弁護団事務局長 小川秀世弁護士(静岡・葵区 17日正午ごろ):「僕はビックリした! (仮に)組織やあるいは警察を守るということを考えてやるなら、本当に組織として検察庁を許せない」

弁護団「正当な理由がないまま特別抗告に動いている」

 東京高裁の再審決定から4日後、弁護団や支援者は、記者会見を開き、「検察が正当な理由がないまま特別抗告に動いている」と指摘しました。

画像: 弁護団「正当な理由がないまま特別抗告に動いている」

弁護団 村﨑修弁護士(都内 17日午後1時ごろ):「形式だけ刑事訴訟法の条文を見て特別抗告っていう規定があるからやろうとしてる。理由なき特別抗告ですよ。理由なし」

 特別抗告をしないよう求める弁護団や支援者の動きは、東京高裁の再審決定が出た月曜日以降、各方面に広がっていました。「袴田巌死刑囚救援議員連盟」に所属する国会議員らも、法務大臣あてに特別抗告をさせないよう「検察を監督する指揮権の発動」などを求める要請書を出しています。

はけないズボン

 弁護団や支援者らは、これまで裁判のやり直しに必要な「新たな証拠」を探し続けてきました。

画像1: はけないズボン

1991年 裏木戸実験
 「どうしてもここからは抜けられない。16cmから18cmですね」

 検察が犯行時の侵入・脱出経路とした裏木戸は、留め金がかかっていて、人が通れない状態だったこと、凶器とされる「くり小刀」の刃渡りよりも深い傷が遺体にあったことなどを指摘しました。

画像2: はけないズボン

 そして、最も重要な証拠とされていた、5点の衣類。事件から1年2カ月後に現場近くの工場のみそタンクから見つかりました。それまで検察は、犯行時の着衣はパジャマだったとしていましたが、これ以降、袴田さんが来ていたのはこの5点の衣類だったと、主張を変えました。

 しかし…

袴田さんの意見書
「ズボンは私にまったくはくことのできないものである」

 ズボンは、袴田さんがはけないほど、小さいものでした。

みそ漬け実験を開始

画像: みそ漬け実験を開始

 さらに弁護団は、独自に血のついた衣類のみそ漬け実験を開始。

小川秀世弁護士:「5点の衣類が発見された状態が、20分で出来るということを示した証拠。5点の衣類が1年2カ月漬かったものではないということが言えるんではないかと」

 わずか20分ほどで血は、ほとんど赤みが消えることを確認。5点の衣類についていた血が赤いことへの矛盾を指摘しました。

静岡地裁が再審開始決定

画像: 静岡地裁が再審開始決定

2014年
「再審開始。再審開始」

2014年、静岡地裁が一度は再審=裁判のやり直しを認めます。さらに…。

「これ以上拘置を続けることは、耐えがたいほど正義に反する」

 袴田さんを、死刑囚のまま48年ぶりに釈放します。

東京高裁が再審開始決定を取り消し

 しかし…。

2018年 東京高裁
「不当決定、不当決定ということです。再審開始は認められませんでした」

 東京高裁は、検察の抗告を受け、再審開始の決定を取り消します。

弁護団長 西嶋勝彦弁護士(2018年):「とても私たちはこれを承服できませんので、直ちに特別抗告をすると同時に、巌さんの身柄が再び拘束されることがないように最大の努力をしていきたいと思っております」

弁護団はすぐに最高裁へ抗告。これを受け、2020年、最高裁は高裁に審理を差し戻しました。その“理由”が…。

「5点の衣類について審理が尽くされていない」

争点は「5点の衣類についた血の色」

 争点は、みそ漬けになった5点の衣類についた血の色。

弁護側の鑑定人は…。

画像: 争点は「5点の衣類についた血の色」

旭川医科大学 奥田勝博助教:「今赤いのがだんだん黒っぽく変わっていく。10日も経つと真っ黒という状況になっている」

 1年以上みそに漬かった血液は黒くなり、「赤みが残ることはない」と主張。
この鑑定結果を、再審開始を訴える際に求められる「新しい証拠」として示しました。

 検察側も、おととし9月、血のついた布をみそに漬ける実験を開始。1年2カ月後に取り出した結果、「血痕には赤みが残る可能性がある」と反論しました。

東京高裁が再審決定「事実上、捜査関係者がみそ漬けにした可能性が極めて高い」

 結果は…。

伊地健治アナウンサー(東京高裁 13日)
「再審開始!再審開始です!東京高裁は袴田事件の再審開始を認めました」

 東京高裁は、弁護側の主張を認めた上で、5点の衣類について、「袴田さんの犯行着衣であることに合理的な疑いが生じる」「事実上、捜査関係者がみそ漬けにした可能性が極めて高い」と言及しました。

特別抗告の動きに弁護団・支援者は

 その上で、検察が特別抗告を検討していることについて弁護側は、強い憤りをあらわにしています。

弁護団 村﨑修弁護士(都内 17日午後1時ごろ):「特別抗告をする理由がない。理由。理由がなしに特別抗告すると、特別抗告するっていうのは許されるわけがない。本当に。それを検察官はしようとしている」

支援団体 山崎俊樹事務局長:「検察官は我々と同じ条件で実験している。むしろ我々よりも厳しい条件で実験して、それで血液が黒くなってる。血液が酸性に触れると黒くなるってことは、これはもう否定のしようが無い事実。それでも彼ら赤みが残るって言い張るんだったら、それはね、嘘も百回言えば本当になると、まさに私は検事長、恥を知れと言いたいです」

画像: 特別抗告の動きに弁護団・支援者は

弁護団事務局長 小川秀世弁護士:「僕はビックリした。袴田さんの人生や命を一体どう考えているんだと検察庁は。そのことについて全然考慮しないで、(仮に)組織やあるいは警察を守るということを考えてやるなら、本当に組織として検察庁を許せない」

             (3月18日放送)