ビッグモーター提訴の翌月に亡くなった店長 LINEに残された上司の厳しい言葉…父「あれが暴言じゃないなら何が暴言か」 静岡
店長となり喜んだのも束の間…
憤りを口にするのは、掛川市に住んでいた井川翔馬さん(29)の父親です。翔馬さんは2017年にビッグモーターに入社し、2019年から岐阜県の各務原店の店長に昇格しました。
こちらがその時、翔馬さんが父親に送ったメッセージです。
(LINEで父親とのやり取り 井川翔馬さん)
「岐阜県各務原店の店長に昇格しました!」
店長となって喜んだのも束の間、翔馬さんはうつ病を発症。父親によると、その原因とされているのが、ビッグモーターによる“パワハラ”です。
LINEで「暴言」
これはビッグモーターの他の店の店長や上司などが入るLINEのグループです。そこには翔馬さんに向けられた数々の厳しい言葉が。
上司 「何年店長やってんだよ」「いい加減にしろよ」
上司 「日本語まともに喋れないなら店長職 務まりませんが」
上司 「会話すら成立しないなら店長下りろタコが」
井川翔馬さんの父
「もう最初に思ったのは常識では考えられない。普通の会社じゃないっていう、あんな言葉遣いは普通だったらしないし、あれが暴言じゃないんだったら、何が暴言なんですか? と言いたい」
亡くなる前月に会社を提訴
去年8月、翔馬さんはビッグモーターに対し、パワハラを受けたことに対する慰謝料や未払いの残業代として、およそ2100万円を求める裁判を岐阜地裁に起こしました。しかしその翌月、翔馬さんは掛川市のため池に車で転落し、亡くなりました。
井川翔馬さんの父
「僕らはパワハラと言っているが、精神を病んで仕事ができなくなった。非常に深刻な状況だったというのは、家に連れて帰って来た時にそう思ったのが事実。それまで正直気づくことができなかった、気づいてあげることができなかった。私自身もそういった病気を抱えている方の接し方、メンタル疾患を受けた方の接し方というのを知ってはいたので、あまりこちらからあーだこーだ聞くよりも、なんか相談がないか? と聞くよりも、彼が話したくなった時にしっかり話を聞いてあげようという、そういうスタンスでいたので正直、その期間、多くのことを彼から聞いたかというと。そうではなかった、今からして思えば。やっぱりもう少し何かこう踏み込んで、いろんなこと聞いてあげれば良かったかなというふうな若干の悔いは残っている」
後悔を口にする翔馬さんの父親。翔馬さんが“亡くなった日”は特別な日だったと話します。
井川翔馬さんの父
「彼が死んだ9月24日は夫婦の結婚記念日の日だった。病院から僕の携帯に電話がかかってきました。電話の向こうで、とにかく来てくださいとしか言わないんですね。病院に行ったらもう冷たくなっていて、もうなんて言っていいか、もうその時は分かりません。涙も出ませんでしたね、もう。無言でもうあいつの遺体を触っておくことしか、もう僕にはその時はできませんでした。今回のこの一連の報道が、なんでもっと早く出なかったんだろうって思うんですよね。もう少し社会の目に早く触れて、ことが大きくなっていれば、9月24日のあのタイミングで溺死するっていうような、そういう死に方はしなかったんじゃないかって思うと、そこは無念ですね。はい。悔しいです」
Q.(亡くなった)翔馬さんを見た時、怒りも湧いた?
A.「いや、怒りもなかった正直。本当にあのもう(という思い)。空っぽみたいな感じ。もうちょっと、あいつからいろんなことを言ってきて、親に迷惑をかけてくれればよかったのになと思うと、ちょっと涙がぼろぼろと流れてくる事は、今でもある」
両親が裁判引き継ぎ
現在、翔馬さんが起こした裁判は両親が引き継いでいます。
井川翔馬さんの父
「生前に言っていたのは、ビッグモーターという会社自体を嫌いなわけでもないし、中古車販売業、営業という仕事が好きだって言った。そのパワハラが許せないんだと。実際自分の仲間が、多くの人が同じ目にあっている。だからそういう体質なり人なりを変えてもらえさえすれば、僕自身はビッグモーターという会社に潰れてほしいとか、嫌いだという感情はないと彼は言っていた。翔馬の代わりにという中での思いは、やっぱりビッグモーターには体質、人を変えてもらって、全部変えてもらって、きれいな体になってお客と従業員をちゃんと見てくれると、そういう会社になって立ち直ってもらいたいと思うようにはしている。思うようにはしているが、、やっぱり父親の気持ちとしては憤りというか、潰れてしまえという気持ちはある」
ビッグモーターの社内では、パワハラともとれるLINEでのやり取りはあったのでしょうか。7月の会見時に兼重宏行前社長は次のように回答しています。
ビッグモーター 兼重宏行前社長(7月26日)
Q.企業風土に会社の中で、店長以上、社員以下のグループラインがあると聞いたが事実か?
A.「LINEで情報交換はやっている」
Q.ラインの中で業績・ノルマに関することを投稿して、その中で社会的常識からは到底考えられない言葉で罵倒されるような、そういうことがあったと伺ったが、社長自身こういった事実があるかどうか?
A.「そういう内容は、私が入っているLINEではやり取りはありません」
「自身が入るLINEのグループでは、そうしたやり取りはなかった」とした兼重前社長。しかし、その兼重前社長自身が発信したとされるLINEのメッセージではこんなことも…。
(兼重前社長が発信したとされるメッセージ)
「営業の適性が無い人は、お客様にご迷惑をお掛けするので絶対に放置してはいけない! バカ(営業担当者)が言うことに対して客様は絶対に納得されないので、これは結果で即判断してください!バカは年を取っても賢くならない!」
翔馬さんの父親は、この世を去った息子や、現在もパワハラなどで苦しんでいる人たちにメッセージを送りました。
井川翔馬さんの父
「やり遂げるということは約束したいと思う。最後まで。例えば向こうが和解を申し込んできたとしても、そこはお断りして、しっかり最後まで戦いましょう。戦い抜きましょうというのが僕の気持ちであり、もし、彼が聞けているとするならば、お父さんそこまでやるぞと伝えたい。多くの方がもし翔馬みたいな目にあっていて、声を出せない人がいるのであれば、報道を通じて勇気をもって声を上げてほしいと思う。ビッグモーターについては、その言葉を1個1個拾って真摯に受け止めて、それを会社を変える材料にして変わってほしい。変えるように努力してほしい。それが出来ないのであれば、昔のままのビッグモーターです」
番組では井川翔馬さんが申し立てたパワハラ訴訟についてビッグモーター側に問い合わせてみました。その回答は…。
ビッグモーター
「係争中の案件につきコメントは差し控えたい」