「袴田さんは無罪の心証」告白の熊本元裁判官死去 弁護士「熊本さんがくれた力で無罪にする」 袴田事件

 いわゆる「袴田事件」で、死刑囚の袴田巌さんに「無罪の心証」を持っていたことを告白した元裁判官の熊本典道さんが亡くなりました。83歳でした。

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 関係者によりますと、静岡地裁の元裁判官、熊本典道さん(83)は11日午後3時ごろ、福岡市内の病院で亡くなりました。

 熊本さんは静岡地裁の裁判官として、1966年に旧清水市で一家4人が殺害された袴田事件の審理を担当。1968年に袴田巌さんに下された死刑判決文を書きました。

 しかし、2007年に守秘義務を破って、当時、袴田さんに「無罪の心証を持っていた」と異例の告白をしました。

熊本典道さん(2007年):「あれだけ長時間連日調べられてね、自白しない人がむしろ少ないと思うよ。僕の心の中ではね、無罪だと間違ってないと思うけどね」

 熊本さんは近年、肺炎などを患い、入院生活を送っていましたが、今月初めに体調が悪化し、袴田さんの姉・秀子さんが見舞いに訪れていました。

袴田秀子さん「あえて言ってくれて、大変ありがたかった」

画像: 袴田秀子さん「あえて言ってくれて、大変ありがたかった」

 死去の一報をうけて、秀子さんは。

袴田秀子さん:「黙ってりゃ、黙ってて済むこと、熊本さんにすれば、知らん顔して。だけど、あえて言ってくれたというのは、私たち、家族は大変ありがたいと思っている」

 袴田さんは、長年の拘置所生活の影響で、精神障害の症状がありますが、2年前に熊本さんと、死刑判決が出た法廷以来、50年ぶりに対面していました。

袴田秀子さん:「巌に話したけど、午前中はおかしいから、あんなことをうそいっているというから、午前中は黙っている」

弁護士「熊本さんに与えてもらった力で、袴田さんを無罪に」

画像1: 弁護士「熊本さんに与えてもらった力で、袴田さんを無罪に」

 袴田事件弁護団の小川秀世弁護士も突然の死を悼みます。

小川秀世弁護士:「熊本さんはこの事件の裁判の誤りの、ある意味象徴ですからね。その方が亡くなったのは、そういう意味では大きいと思っています。熊本さんが最後のお仕事として、我々に力を与えていただいたわけですから、その力で私たちは袴田さんを無罪にすることができるし、しなきゃいけない」

画像2: 弁護士「熊本さんに与えてもらった力で、袴田さんを無罪に」

東京高裁が決定取り消し

 袴田事件をめぐっては、2014年に静岡地裁が一旦は再審開始を決定しましたが、2018年に東京高裁がその決定を取り消しました。  現在は最高裁が裁判のやり直しを認めるかどうか審理しています。袴田さんは現在84歳。事件発生から54年が経ち、関係者の高齢化が一層進んでいます。