長さ63メートル重さ140トンの橋げたが落下…バイパス工事現場の事故で8人死傷 /今週の静岡
「揺れが10秒続いた」
6日木曜日の午前3時すぎ、静岡市清水区の国道1号・静清バイパスで、工事中の橋げたが落下し、2人が死亡、6人が重軽傷を負いました。橋脚の上に橋げたをのせて、所定の位置に移動させる作業中に、長さおよそ63メートル、重さおよそ140トンの橋げたが落下しました。
近隣住民(60代):「ゴーっというようなね、地震じゃなくて、多少揺れて、それが10秒とか、それぐらい続いた」
近隣住民(40代):「ガシャーンと音、落ちて、鉄パイプみたいな音がして、びっくりして見に行った」
当時、現場には、作業員およそ20人と、警備員10人ほどがいました。警察などによりますとと、落下した橋げたに8人が巻き込まれ、作業員の53歳の男性と51歳の男性の2人が亡くなりました。
作業員「原因が分からん」
なぜ、こうした事故がおきてしまったのでしょうか。
事故当時、現場にいた作業員は…。
現場にいた作業員:「(警察などに状況は)2、3回言った」
Q.工事はしっかりやっていた?
A.「やっていました。わからん、原因がわからん」
事故が起きた現場で働いたことがある作業員は…。
別の日の作業員:「安全設備もしっかりしていて、こっち側から見てもやりやすかった。
別の日の作業員:「うちらの工程に関しては、全然余裕があった。急いでやってる感じではなかったと思う」
Q.安全管理には気を付けていた?
A.「無理して作業しろとかもない。なんで起きたのか逆に知りたいぐらい」
業務上過失致死傷の疑いで現場検証
そうしたなか、7日、現場では…。
伊地健治アナウンサー:「今、午前9時21分です。厚生労働省のヘルメットをかぶった4人の男性が事故現場の中に入っていきます。労災事故の観点からの調査ということなのでしょうか」
林輝彦アナウンサー:「午前10時すぎです。警察車両が、橋げたが落下した現場に入りました。きのうに引き続き、これから実況見分が行われます」
関係者によると、亡くなった2人は橋げたとともに地上に落下したことが新たに分かりました。
警察は「業務上過失致死傷の疑い」で現場検証し、事故当時の作業方法や安全管理に問題がなかったか調べています。140トンもの鋼鉄製の橋げたが、未明に落下した今回の事故。事故現場の近くに住む人たちが、当時の状況を語りました。
近隣住民 70代:「ドドドンというような2回に分けて伝わってくるような感じで、それと同時に地震かなと思うぐらい揺れも伴って」
近隣住民 80代:「はじめは地震かと思った。雷か地震かと思ったら、あまりにも(音が)大きかったからびっくりした」
また、事故発生直後、現場を見たという人は…。
近隣住民 30代:「地震かなと思ったら、旦那が橋が落ちたのではないかと言われて、(家の)窓を開けて外を見たらこんな状態で、従業員の声も聞こえて。あとは旦那が外に出て様子を見に行ったら、そこの玄関の所から人がぶら下がっているのが見えると言っていたので、怖かった」
交通にも大きな影響
また、この事故により、交通にも影響が…。静清バイパスは、事故があった地点で、片側1車線の対面通行となっています。
伊地アナ:「国道1号バイパス、事故現場付近に来ました。下り線では、いまだ落下した橋げたが道路に横たわっているのが見えます。そのため、こちら上り線を使って対面通行を行っています。ご覧のように、トラックなど多くの車がノロノロ運転をしていて、渋滞がおきています。もう車が連なっている状況です。事故からまる1日以上がたって、7日の金曜日午前9時半をすぎたところなのですが、こうした交通に与える影響は甚大なものとなっています」
国土交通省静岡国道事務所では、東名高速や「しみずマリンロード」などへの迂回を呼び掛けています。
静岡国道事務所によりますと、5日水曜の夜から、6日未明にかけて行われていたのは、橋脚に乗せた鋼鉄製の橋げたを、水平方向にずらす「横取り」という作業。無事に作業が終了すれば、現在のバイパスの上に「橋げた」が架かる予定でした。
ところが、横取り作業で橋げた部分にはめ込む際に、何らかの理由で落下してしまったのです。
長年、橋の建設工事に携わった経験があるという現場近くの住民に、話を聞くことができました。
橋の建設工事に携わった経験がある近隣住民:「作業手順がどこかで正しく機能しなかった。(正しく機能する)ためには、作業員の連携(が必要)。今は、年齢がいった人が多くなって、若い人が育っているかどうか、そういう問題もありますよね。機械がうまく作動しないときに、どうすればいいか、すぐその時に(対応)できればいいが、(無理に)やってしまうと、場合によっては結果として悪い状況になる」
静岡・難波市長「人命優先は当然。供用開始が遅れても許容せざるを得ない」
今回の「静清バイパス」の事故を受け、静岡市の難波市長は…。
静岡市 難波喬司市長:「2人の尊い命が失われるという大変痛ましい事故が起きてしまったことを大変残念に思っている。事故で亡くなられた方のご遺族の皆様に心からお悔やみ申し上げますと共に怪我をされた皆様の回復をお祈り申し上げます。2度とこのような事故を起こさないよう、一刻も早い原因究明と対策が出されることを望んでいる」
国道1号バイパスの高架化は国の事業ですが、静岡市も3分の1の費用を負担しています。
開通時期に影響が出る恐れを、記者から問われると…。
静岡市 難波喬司市長
Q.橋げたの撤去はすぐにはできない状況と思うが、ある程度時間がかかることについて、どういった影響を見込んでいる?
A.「安全重視ですね。これが一番大事だと思っている。渋滞のこともあるが、今回おそらく事故調査をされて、一定程度の結果が出るまでは、次の工事に移れないと思うので、やはり工事の安全が大事ですので。人命優先というのは当然ですから、人命に関わらなくても工事の安全が優先ですから、しっかり原因究明されてから工事がなされると思っています。したがって、仮に供用開始時期が遅れることは、これはもう許容せざるを得ないと思っています」
2人の命が奪われ、6人が重軽傷をおった今回の事故。工事を発注した静岡国道事務所は、大学教授らでつくる、事故調査委員会を設置。11日火曜に1回目の委員会を開催する予定です。