【袴田事件】『命の恩人』村山元裁判長と対面 姉ひで子さんは涙浮かべ 元裁判長「2人が元気なうちに無罪判決を」

 3月、東京高裁で裁判のやり直しが認められた いわゆる「袴田事件」。29日に静岡地裁で開かれる2回目の三者協議を前に、弁護団が袴田さんの出廷免除と検察の迅速な対応を促すことを求める意見書を裁判所に提出しました。

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「袴田さんは裁判所に出頭を強制されることが恐怖」

 25日午前11時ごろ、静岡地裁を訪れたのは弁護団事務局長の小川秀世弁護士と10人を超える支援者です。弁護団は、再審公判での袴田さんの出廷免除と検察が速やかに立証方針を決めるよう裁判所が指揮することを
求める意見書を静岡地裁に提出しました。

画像: 「袴田さんは裁判所に出頭を強制されることが恐怖」

弁護団事務局長・小川秀世弁護士(25日):「(袴田さんは)裁判所に出頭を強制されるということに関しては、敏感に反応して、ものすごい恐怖なんです。裁判所には出なくていいということをはっきりと、早く確認していただくのが袴田さんの不安を取り除いて平穏に生活できるということが基本だからそれを早くしてもらいたい」

 弁護団は15日、長年の拘置所生活で幻覚や妄想などの症状が現れる拘禁反応によって、袴田さんには訴訟能力がないという精神科医の診断書を静岡地裁に提出したということです。

 一方で検察は、4月行われた三者協議で立証方針を決定するのに「7月まで猶予が欲しい」という考えを示しています。

再審開始決定を出した村山元裁判長

画像: 再審開始決定を出した村山元裁判長

1966年、旧清水市でみそ会社専務一家4人が殺害された事件で、一度は死刑が確定し、3月に再審開始が決まった袴田巌さん(87)。19日、姉のひで子さんと向かった先は、都内で行われた、いわゆる再審法について考える集会です。

 登壇したのは、2014年、静岡地裁で再審開始決定を出し、袴田さんの釈放を認めた村山浩昭元裁判長。おととし12月に退官した村山元裁判長は、集まった支援者らを前に、2014年の決定について振り返りました。

村山浩昭元裁判長:「誰がこの判決を書いたかで信用してはいけない。どのような有名な裁判官でも間違う時は間違うという思いがあったので」

「批判を受けても釈放するという結論になった」

 「拘置を継続することは耐えがたいほど正義に反する」として48年ぶりに袴田さんの釈放を認めたことについては・・・。

画像: 「批判を受けても釈放するという結論になった」

村山浩昭元裁判長:「健康状態が非常に危ぶまれていた。その辺を考えた結果、あとでどういう批判を受けようとも、私たちとしては釈放するしかないという結論になった」

 決定を出して以降、その背景について口を閉ざしていた元裁判長。公の場で語り始めたのは、「現行の再審法を改正したい」という強い思いがありました。

村山元裁判長:「袴田事件に関わってから、改正が必要だなということを真剣に考え始めた。どうしてこんなに時間がかかるのかということ。条文、規定がないからこういうことになっている。なぜ、それが今まで見過ごされてきたのかということ自体が問われなければいけない」

対面時、ひで子さんは涙を浮かべ

 優しい表情で袴田さんを見つめる村山元裁判長。集会の前、袴田さんと姉のひで子(90)さんと念願の対面を果たしていました。

姉 ひで子さん:「(巌には)あなたを助けてくれた裁判長さんだよ。お礼を言いなさいと言って、(巌は)何か言っていました。お礼だと思います」

画像1: 対面時、ひで子さんは涙を浮かべ
画像2: 対面時、ひで子さんは涙を浮かべ

 2人が村山元裁判長と裁判所の外で会うのは、初めてのこと。ひで子さんは村山元裁判長に、「命の恩人」だとお礼を伝えました。

 その瞬間に立ち会った支援者は、特別な空間だったと話します。

画像3: 対面時、ひで子さんは涙を浮かべ

支援者 猪野 二三男さん:「ひで子さんは本当に感極まって、もう目に涙が溢れてるんですよ。非常に興奮なさってましたね。(村山元裁判長は)私こそお会いできて嬉しいと。ひで子さんの周りには、支援者がたくさんいて支援していると言っているけど、本当はひで子さんにエネルギーをもらっているんじゃないですかと、そんなことまで言っていました」

画像4: 対面時、ひで子さんは涙を浮かべ

村山浩昭元裁判長:「命の危機にさらしたのは、捜査機関であり検察官であり裁判所です。(巌さんとひで子さんが)歩いてお見えになって、立っておられたし、それで安心しました。巌さんが生きておられてよかったです。お二人が元気なうちに、無罪判決になってほしい」

 弁護団の事務局長として、40年 再審無罪を訴え続ける小川秀世弁護士は。

画像5: 対面時、ひで子さんは涙を浮かべ

袴田事件 小川秀世事務局長:「再審公判はこれからで、検察官は彼を被告人として有罪の立証をするということもあり得る。にも関わらず、今の段階で村山元裁判官が(2人に)会われたということ自体は、本当に村山元裁判官の再審開始決定が、絶対に揺るがないぞみたいな、そういうことを伝えたという風に印象としては受ける」