静岡駅前のガス爆発から45年 爆発に巻き込まれた新聞記者が爆発の記憶をたどる

15人が亡くなり200人以上がけがをした静岡駅前のガス爆発事故から45年。爆発に巻き込まれた新聞記者が当時の記憶をたどりました。
「45年前の8月16日 ここで何があったか知っていますか?」
22歳・公務員の男女
男性「ここで、ですか…。すいません、分かんないです」
女性「分かんないです」
17歳・高校2年生・女子
「静岡のなんか大空襲」
「昨日終戦じゃん」
「あれ?じゃ違うか、やばい」
中学1年生、40代女性、40代男性)
中学1年生「分かんないです」
40代男性「いや、知らないです」
10組に聞きましたが、7組は知りませんでした。
爆発に巻き込まれた新聞記者
1980年8月16日静岡駅前の地下、紺屋町ゴールデン街でガス爆発事故が起きました。
午前9時半頃、1回目の爆発。
ガス管が損傷し、およそ30分後に2回目の大爆発が起きたのです。
死者15人、負傷者は223人にものぼる大惨事となりました。
事故に巻き込まれ、爆風に吹き飛ばされた当時の新聞記者です。
Q:どうも初めまして
「どうもお招き戴いて、ありがとうございます」
元朝日新聞静岡支局の社会部記者、齊藤隆さんです。
今は北海道大学の名誉教授を務めています。
24歳だった斎藤さんは当時記者1年生。
事故以来、45年ぶりに現場に足を踏み入れます。
齊藤隆さん
「これですよ、間違いないですよ」
Q:ここから?
「はい、ここからこっちに下りました」
「そんなに急いだ記憶はないんですけども、もうここから下ったら、現場はもうすぐに分かった」
Q:どっち側?
「こっちです」
「これがその当時使っていた45年前のカメラです」
「こんな感じで撮りました。何回か露出を変えて」
1回目の爆発後、現場に張り詰めた緊張感はありませんでした。
齊藤隆さん
「消防士さん自体あんまり緊迫感がなかったんですよね。近づいても怒るような口調じゃなくて、危ないから外へ出なさいっていうような感じだったんで」

2回目の爆発が
その直後。
齊藤隆さん
「写真を撮って、夕刊に間に合わせるように帰ろうっていうふうに思ったんですけれども。振り向く余裕もなく、爆発。2回目の爆発があって、お腹から突き上げられるように、ふわっと浮いて。気がついたらがれきの山の上に尻餅をついて、背中もついていたので」
「電灯は全部消えていて真っ暗でした」
暗闇では「おーい」「おーい」と人を呼ぶ声が。
齊藤隆さん
「それでさまよい歩いていて。懐中電灯が動いているのを見つけました」
「被災した消防士さんでした。」
「それで、ここですよ」
Q:ここですか?
「ここに灯を見つけて、消防士さんの方が先に見つけて、すすすっと外に出られたんで、あぁ助かったって思いました」
「ここに1人の方が倒れて」
「この階段の真ん中辺だったと思います」
「はっきり覚えているのは、ヘルメットを脱いだように、頭が割れていた。なのでこの方が亡くなったんだなっていうのはもう一目でわかりました」
地下で撮った写真は、その日の夕刊と翌日の朝刊に掲載されました。
Q:痛みとかを…痛みを感じたにしたのはいつぐらいだったんですか?
「病院行ってから」
全治1ヵ月の重傷でした。

第一通報者は
現場近くで今も果物店を営む西村幸彦さん。
第一通報者です。
西村幸彦さん
「(1回目の)爆発した時は、私たまたま店の辺りにいた、その辺にいたんですね」
「地下の入口ありますね。そこから降りてったら、もう地下の電飾看板なんかとか、天井の中から埃がものすごい打ち出して、ものすごく、すごい爆発力を感じたわけですね」
「で、これはガスに違いないと。ガスが爆発したんだと」
「その奥に行って電話借りまして。で周りの人に、それで通報したんですけど」
「そうこうしているうちに、ウーっと(消防車が)やってきたから、それで私の方からトントントントンと走ってきまして、店に着いた数秒後ですね、数秒後に大きな爆発が起きた」

社会が忘れていいわけない
あの時現場にいて年齢も一つ違いの2人。初対面でしたが数十分話し込みました。
地下の現場は、記憶を抱え続ける苦しさを感じさせました。
齊藤隆さん
「やっぱり近づいてくると、ドキドキしてくるというのがあって、あぁやっぱり忘れてないんだなって思いました」
「やっぱり忘れたかった。できれば近くによりたくなかった」
ガス爆発事故から45年。
現場付近には今、事故がここで起きたことを知らせるものは何も残っていません。
齊藤隆さん
「個人的には忘れるっていうことは悪いことじゃないんじゃないかと思う。やっぱり非常につらい体験を思い続けていく、かかえ続けていくっていうのはやっぱ本当につらいことなので」
「ただ、社会が忘れていいわけないよねっていうのが別にあって。それを教訓として残していかなきゃいけないことがある」
「きょうはそれがよく見えなかったんで、ちょっと残念かなって思いました」
