バス置き去り事件から1カ月 こども園の再開に複雑な心境の保護者も 安全管理態勢の検証どこまで…

静岡県牧之原市で、送迎バスに園児が置き去りにされ死亡した事件からきょう5日で1カ月。3日に再開した園では職員らが黙とうを捧げました。

献花に訪れる人は…

久須美舞記者:「痛ましい事件はこちらのこども園の駐車場で起きました。現場に設置されている献花台には1カ月経った今も多くの人が訪れています」

 9月5日、川崎幼稚園の送迎バスに3歳の女児がおよそ5時間置き去りにされ、熱射病で死亡しました。現場には事件から1カ月経ったこの日も、朝から献花台に手を合わせる人の姿がありました。

献花に訪れた人:「4回目か、来たの。あまりにもかわいそうで小さな子があんなことで…」

画像: 献花に訪れる人は…

 そして女児の死亡が確認された午後3時34分。職員ら14人が事件の起きた駐車場に集まり、手を合わせて女児の冥福を祈りました。園は職員一同の名前でコメントを発表しました。

「悲しい事故を起こしてしまったことを真摯に受け止め、川崎幼稚園が安全になるようご遺族様のお気持ちに寄り添うよう、誠心誠意尽くしてまいります」

牧之原・杉本市長は…

一方、牧之原市の杉本基久雄市長も事件を振り返りました。

画像: 牧之原・杉本市長は…

牧之原市
杉本基久雄 市長:「(事件は)社会、そして市民に大きな悲しみと憤りを広げたというふうに思っています。(法人には)二度とこのような事故を起こさない安心安全な保育を行って頂きたい」

 牧之原市はまた、子どもでも押す事ができるクラクションを市内の送迎バスなどに早急に導入する方針を示しています。

 捜査関係者によりますと、女児は上半身の服を脱いだ状態で発見され車内から飲み干したとみられる空の水筒も見つかりました。

こども園側の対応は…

 園は会見で、事件が起きた4つの原因を挙げていました。

画像1: こども園側の対応は…

▼園児がバスから降りる際の確認不足、
▼降車時のダブルチェック態勢が整っていなかったこと、
▼クラスの補助職員が登園情報を確認できていなかったこと
▼登園する予定の園児がいなかったにもかかわらず、保護者に問い合わせをしなかったこと です。

 こうしたことから、園は専門家の意見を踏まえ園児の確認を4回行うなど安全管理マニュアルを改定。保護者への説明会を行い了承を得たとして、3日に保育園部のみ再開しました。6日には幼稚園部も再開するということです。

増田多朗 新理事長:「園再開を望む声というのが、保護者のみなさまからもいろんなところから上がってきて」

画像2: こども園側の対応は…

 当時バスを運転していた元理事長に代わり新たに理事長に就任した増田多朗理事長。3日、遺族には園の再開について説明を続けていることを明かしました。

増田多朗 新理事長:「ご遺族様のご理解というか納得というものは得られないと思います。何度か連絡しましたが、特に反対というご意見はありませんでしたので」

保護者の心境は複雑…

園に子どもを通わせる保護者は複雑な心境を語りました。

画像: 保護者の心境は複雑…

保護者:「暑くて辛かったとは本当に思うんですけどね…。残りの在園児たちを見捨てないでほしいというふうには思っていた。子どももお友達も人間関係もすでに出来上がっているというのと、先生方とも信頼関係も出来上がっているので、再開していただけてよかったと思う」

 市によりますと10月1日現在、事件発生当時に在籍していた園児167人のうち22人が転園を希望し、
そのうち16人が退園しました。

男児の祖父(69):「最後にしてほしかった。それから1年も経たないうちに(静岡で)また同じことがあって、やるせない気持ちになった」

 2021年7月29日、福岡県中間市で当時5歳の男児が、保育園の送迎バスに置き去りにされ亡くなった事件。9月26日に初公判が行われ、バス内に男児を8時間以上置き去りにし熱中症で死亡させた罪に問われた元園長ら2人が起訴内容を認めました。わずか1年前に福岡県で起きた事件を、なぜ繰り返してしまったのでしょうか。

安全管理態勢の検証進む

事件の4日後には県と牧之原市が特別監査に着手し、安全管理態勢の検証を進めています。

静岡県 こども未来課
鈴木安由美 課長:「漫然と進めてしまってはいけないということで、常に危機意識を高く持って頂くことかなと思っている。マニュアルも作っていただきたいということもあったが、それを関係者がみんなで確認する機会を頻繁につくるだとか、訓練をするとか、そういうところを常日頃からやっていただけるように今後は進めていければと思っている」

 事件があった園に対しては10月中旬にも結論を出す見通しで、調査の結果次第では事業停止や事業認可の取り消しなどの可能性があります。

画像: 安全管理態勢の検証進む

 一方政府は事件を受け職員が園児を見落とさないように、通園バスにブザーなどの安全装置の設置を義務付ける方針を示し、ワーキンググループで協議を始めました。
 また県警は業務過失致死の疑いで元理事長と園を家宅捜索していて、捜査を続けています。