弟を信じた57年…姉ひで子さんの闘い「再審をひたすら願って」 袴田事件…半世紀を経て開いた「再審の扉」 /今週の静岡

20日
「特別抗告断念という知らせが来ました」「万歳!万歳!万歳!」
袴田ひで子さん(90):「57年闘って、やっと再審開始になったんです。もっと早くならなかったのかと思うが、そんなことはどうでもいいんです。再審開始になることをひたすら願って闘ってきました」

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弟を信じた57年…姉ひで子さんの闘い「再審をひたすら願って…」 袴田事件…半世紀を経て開いた「再審の扉」 /今週の静岡

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半世紀以上を経て開いた「開かずの扉」

画像: 半世紀以上を経て開いた「開かずの扉」

伊地健治アナウンサー(東京高裁 13日):「再審開始!再審です。東京高裁は袴田事件の再審開始を認めました」

事件から57年。「再審開始」を認めた東京高裁に対し、検察は…。

東京高検
「承服し難い点はあるものの、申立事由があるという判断に至らなかった」

 特別抗告を断念。

袴田事件弁護団事務局長 小川秀世弁護士(20日):「検事から電話をもらいまして…。私、何と言ったかというと、ありがとうございましたと。本当にうれしかったものですから(泣)。僕はただ、袴田さんを早く無罪にしてあげたいというのが第一です」

 半世紀以上の時を経て今週、開かずの扉が開きました。

袴田ひで子さん(21日):「巖のことは私の運命だと思っている」

 袴田事件の57年は、袴田巖さんの姉・ひで子さんの闘いでもありました。

事件から57年…無実を訴え続け

Q.きょうはどんな日になるといい?
ひで子さん:「再審開始になることを願っている。ありがとうございます」

 1966年、旧清水市のみそ会社の専務一家4人が殺害された袴田事件。警察はみそ会社の住み込み従業員で、元プロボクサーだった当時30歳の袴田巖さんを逮捕。袴田さんは裁判で一貫して無実を主張しましたが、1980年、死刑が確定しました。

画像1: 事件から57年…無実を訴え続け

 それから42年あまり。この日は東京高裁が袴田さんの裁判のやり直しを行うかどうか判断を出す日です。

ひで子さん(タクシー内):「そんな私はドキドキすることはない。こうなっていれば」
Q.お守りとかあったりする?
A.「そんなものは全然ない。もともと最初から神も仏もないということでやっていたから。だから縁起担ぐということはしない」
Q.自分の力で?
A.「そんな生やさしいもんじゃない」

画像2: 事件から57年…無実を訴え続け

 袴田家6人きょうだいの5番目だったひで子さん。長年の拘束で拘禁症となった3歳年下の巖さんを信じ、57年間、弟の無実を訴えてきました。巖さんが東京拘置所にいたときは、毎月のように面会にいったそうです。

ひでこさん:「(昔は)私たちはまだ見捨てていないよ、と巌に知らせにいかなきゃと思って。そういうつもりでいったね。面会できてもできなくても行った。それしか方法なかった」

 20年前。70歳だったひで子さんは、職場の2階に住み、経理の仕事をしながら弟を支えていました。

ひで子さん:「お菓子買うとか、便箋も買わないし、この頃は。ともかく、お金があれば安心していられるでしょ。だから、ともかくお金だけは困らないように入れるようにしている」

 面会の度、巌さんに差し入れるお金を欠かしたことはありませんでした。

Q.事件がなかったらどんな人生に―
A.「たぶん180度違ったでしょうね。平々凡々と暮らしていたかもしれないし」

9年前、一度は開きかけた「再審の扉」 ところが…

画像: 9年前、一度は開きかけた「再審の扉」 ところが…

2014年。
「再審開始です。再審開始です」

 静岡地裁は「再審開始」を認め、袴田さんを48年ぶりに釈放しました。
しかし、検察の抗告により、再び再審の扉は閉ざされます。

弁護団長 西嶋勝彦弁護士:「とても、わたしたちはこれを承服できませんので、直ちに特別抗告する…」

 立ちはだかる高く厚い再審の壁。

「(釈放された)今は悲しいってことはない。すべからく笑顔で向かっていく」

3月13日

都内(13日)

伊地健治アナウンサー(13日):「ちょうどいま、袴田巌さんの姉ひで子さんが東京高裁に入るところです」

 東京高裁の判断が示される3月13日。報道陣や支援者で道路が埋め尽くされる中…。

伊地アナ(13日):「再審開始! 再審です! 東京高裁は袴田事件の再審開始を認めました」

 掲げられた「再審開始」。東京高裁が、裁判のやり直しを認めました。

袴田巌さんの姉 ひで子さん(13日):「皆様ありがとうございます。再審開始になりました。本当にうれしいです。もう57年闘ってきましたからね」

検察「特別抗告断念」

 翌日の国会での報告会でも、多くの人に祝いの言葉をかけられていたひで子さん。検察が期日までに特別抗告しなければ、再審開始が決まります。

市民:おめでとうございました。
ひで子さん:ありがとう。

 弁護団や支援者は、検察に特別抗告を断念する要請書を提出。その動きは各方面に広がりをみせました。

 そして、特別抗告が期限となった3月20日。

袴田ひで子さん(90)
支援者「検察ね、特別抗告断念するって」
ひで子さん「おー!」
支援者「やったじゃん」
ひで子さん「本当!?」

袴田ひで子さん(90) 
「今ね、ニュースが入ってね。検察が特別抗告を断念したって。だから完全に無罪。完全に勝った」

画像: 提供:袴田さん支援クラブ

提供:袴田さん支援クラブ

ひで子さん:「もう、きのうまでの疲れがふっとんじゃった。57年間、60年近くなりましたけどね、こんなに嬉しいことはありません。57年もふっとびました」

支援者提供
「かんぱーい!よかったおめでとう!」

 夕食は、巖さんが食べたいといったお寿司で、支援者と3人でお祝いをしました。

画像: 検察「特別抗告断念」

袴田巌さん「闘いには協力が必要です」

 その翌日の再審開始報告会では、巖さんもマイクを持ちました。

画像: 袴田巌さん「闘いには協力が必要です」

袴田巌さん(87):「私が袴田巌でございます。がんばろうという闘いでございますので、闘いには協力が必要です。みんなの協力があって勝ち抜ける。よろしくお願いします」(会場から大きな拍手)

ひで子さん「最後のひと踏ん張り」

 ようやく確定した再審開始にみんな笑顔です。

日本プロボクシング協会袴田巌支援委員会 新田渉世委員長
「本当は我々がひで子さんを勇気づけないといけないのに、ひで子さんに勇気づけられて(笑)。ひで子さんとみんなの力が結集して、この結果に結びついたと実感する」

弁護団事務局長 小川秀世弁護士
「ひで子さんは全然へこたれないし、何があっても意に介さないマイナスのことに関しては。そういう姿勢は一貫してかわらない」

ひで子さん
「再審開始になったからと言って、裁判が終わったわけではありませんからね。これからですよ。もう頑張っていくしかない。最後のひと踏ん張り」

画像: ひで子さん「最後のひと踏ん張り」