【リニア】「田代ダム」案に流域市町と静岡市は前向き 静岡県は「慎重」
島田・染谷市長「ほとんど水は出ていない」
「水」について不安を抱いている流域自治体からは…。
静岡・島田市 染谷絹代市長(4月27日):「現実にはですね、ほとんど水は出ていません。これから先、水が出る可能性のある所もあるということですから、ここはしっかり協議の上に進めて頂きたいなと」
ボーリングへの一定の評価を示した島田市の染谷市長。
静岡県「県境付近の地下水がどちらのものか調べてから」
一方で、県は…。
静岡県 川勝平太知事(4月27日):「行政区の境界(県境)で自然は分かれているわけではない。(地下水を多く含む)破砕帯が地下で連携していることから、この水がどちらのものかは行政の問題ではないので、我々としては深い関心がある」
県は、県境付近の地下水が、静岡と山梨のどちらのものなのか調べた上でボーリングを進めるべきだと、慎重な姿勢を崩していません。
リニア工事により、大井川の水が減ってしまうことへの懸念から、一枚岩となって対応を続けてきたはずの、県と流域の市や町。しかし、このボーリングに対する姿勢にも見え隠れするような「考え方のズレ」が、県と大井川流域の間で出てきています。そこに今、新たに加わろうとしてきている自治体が…。
静岡・難波市長はリニア問題に積極的に関わる姿勢
静岡市 難波喬司市長(4月13日):「流域という面でいうと、静岡市も流域なんですね。ですから、大井川の流域市町が作っているものに参加していないというのは、普通に考えると変だと思う。加わらないという選択はない」
県内でリニアが走るのは南アルプスの地下。全て静岡市です。その静岡市の難波市長は、かつて知事の右腕として最前線に立ってきた経験から、リニア問題に積極的にかかわる姿勢を示しています。その一つが、大井川の水に対する懸念や要望をJR東海に伝えるための組織「大井川利水関係協議会」への参加でした。しかし…
静岡市 難波喬司市長(4月26日):「“どういう形かは別“にして、利水協議会のメンバーの皆さんとはしっかりとした連携をしていきたいと思っている」
静岡市の協議会参加はNO
協議会への参加にはこだわらないと、わずか2週間でトーンダウン。実は、この背景にあったのが流域の市や町からの反発だったのです。
島田市 染谷絹代市長(4月27日):「立ち位置が違う中で、急に一緒にと言われても私どもはすぐには難しいのではないかと思っている」
染谷市長は、会見の中で、静岡市が大井川の水を使っておらず利水者ではないこと、そして、リニア工事に関する協定をJR東海とすでに結んでいることなどを理由に、他の流域の市や町との立場の違いを強調。静岡市の協議会入りに対し、事実上の「NO」を突き付けました。
島田市 染谷絹代市長(4月27日)
Q.いずれは可能というニュアンスは残していないと?
A.はい。
島田・静岡市長ともに「田代ダム案」に前向き
ただ、この状況は、大井川の水を巡る「あの話題」になると一転します。
島田市 染谷絹代市長(4月27日):「安全安心な私たちが望む水を返してもらう手段としては、田代ダムの取水抑制案しかないと思っていますので」
静岡市 難波喬司市長(4月25日):「県の副知事をしていたときから、この案はいいと思っていた。有力な案として、実現に向けて進めていくべきだ」
トンネル工事によって山梨県に流れた水と同じ量だけ、大井川からの取水量を減らすという「田代ダムの取水抑制案」。これについては、大井川流域の市町と静岡市は前向きな姿勢で一致しています。
ところが、県はこの案に対しても慎重な姿勢を崩しておらず、「水利権」をめぐって、県とJR東海の間で文書による応酬が続いています。
県内でも複雑な動きを見せはじめた、リニア問題。解決の糸口は見つかるのでしょうか?
(5月10日放送)