浜松市には従業員4人に1人が66歳以上の職場も 年金いつからもらいますか…75歳からの繰り下げ受給が可能に

 公的年金の制度が4月から変わりました。一つは、65歳からが基本となっている年金の受給開始について、現在は66歳から70歳まで繰り下げが可能ですが、4月からさらに75歳までの繰り下げが可能となりました。

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 もう一つは、年金をもらいつつ働く60歳から64歳の場合、これまでは給料と年金の合計が28万円を超えると年金の支給停止が始まりましたが、その額が47万円にまで引き上げられます。

 老後もより長く、多様な働き方を選択できるようにすることが狙いです。みなさんは、何歳まで働き、いつから年金をもらいますか?

いつから年金をもらいますか?

静岡市民 40代女性:「本当は60歳で辞めたいなと思ってますけど、多分65歳ぐらいまでは働くことになるかな。生活の面で結構、みんなが働かないと厳しい時代にはなるのかなとは思ってます。人不足というか」

Q.年金は何歳からもらおうと思ってます?

A.「65歳か70歳、仕事を辞めたらかな、とは思います」

静岡市民 40代男性
Q.何歳まで働く予定ですか?
A.「65歳です」
Q.年金は何歳から?
A.「65歳で、特段深い理由はありません」
Q.世の中の流れで?
A.「普通でいいと」

東京都民 40代:「65歳だとまだ子どもが小さいので、もう少し大きくなって子どもが成人するまでは働こうかなと思っている。年金は70歳か75歳くらいからもらい出す感じがいいかなと思う」

藤枝市民 50代男性:「60歳からもらえるんだよね。太く短くいく人と細く長くいく人とあるわけじゃん。自分は太く短いタイプなもので、たぶん。納めているのにもらわずに死んじゃうことになっちゃうでしょ」

従業員4人に1人が66歳以上

 公的年金の新たな制度は、いつまで働き、いつから年金をもらうかといった、老後の多様な選択をこれまで以上に柔軟にバックアップします。

 多くの選択肢の中から、働き続けることを選んだ高齢者を積極的に活用する企業があります。浜松市にある静岡県セイブ自動車学校。高齢者の雇用を積極的に行っていて、指導員や事務、送迎車の運転手など、66歳以上の従業員27人が働いています。(全従業員106人)

静岡県セイブ自動車学校 送迎車運転手(68)
「私は68歳になりました。他のところで働いていて定年をすぎたので あと70歳までということで」
Q.年金でもらう額だけだと生活は?
A.「そうですね。家族もいるものですから、どうしても」

画像1: 従業員4人に1人が66歳以上

静岡県セイブ自動車学校 教習指導員(74)
「指導員とか事務の仕事をやっています」
Q.年金だけだと生活が?
A.「それもありますけど、年取らないようにするにためにはなるべく仕事をした方がいいと思って」

 自動車学校の社長は、高齢者には若い人とは違った良さがあるといいます。

画像2: 従業員4人に1人が66歳以上

セイブ自動車学校 早川和幸社長:「私どもの仕事っていうのは、どちらかというと教える仕事なんですけど、サービス業的な接客業的な仕事ですから、それには長年培ってきた経験というのは非常に大事なんです。お客様にも若い方もいれば、年配の方もお見えになるわけでね。それに適時合わせられるのが、高齢者の良さかなと思ってますけどね」

寮母さんは66歳

 年金をもらいながら働き続ける高齢者が自動車学校の寮で住み込みで働いています。富田純子さん66歳。

画像: 寮母さんは66歳

 合宿寮の寮母 富田純子さん(66)。富田さんの仕事は、免許取得にやってくる自動車学校の生徒たちが泊まり込みで生活する寮の管理や食事の用意。

合宿寮の寮母 富田純子さん(66) 
「どう?おいしい?ありがとうね」

 春休みシーズンのこの時期は合宿免許の繁忙期。取材したこの日も20人以上の生徒が寮生活を送っていました。寮をまかされた富田さんにとって一年で一番忙しい時期です。

 食事以外の身の回りのことは生徒自身が行うことになっていますが、10代や20代前半の若い男性が多く、中には洗濯機や乾燥機の使い方が分からず、富田さんが教えてあげることもあるといいます。

富田さん:「お母さんというよりおばあちゃんですね。 口うるさいおばあちゃんだと思う。いろいろ世話焼くものですから」

三重県から浜松市へ

 富田さんは夫の弘さん(63)とともに、住み込みながら寮の管理を行っています。夫婦でこの寮で働き始めたのは4年前。以前は三重県に住んでいました。夫の弘さんが53歳で工具メーカーを早期退職。以後、夫婦で配達の仕事などをしていました。子どもたちはすでに独立していて、6年前、愛犬ハルちゃん(6)を飼い始めました。

画像: 三重県から浜松市へ

富田さん(66):「孫よりかわいいと言ったら怒られますけど、そういった部分も往々にありまして、配達をしてたときは、やっぱり夜遅くなったりすると、すごくハルがかわいそうだったので、ずっと一緒にいられると、いいかなと。ワンちゃんを飼っていいという部分で、そこが第一条件だったので」

 愛犬といつでも一緒にいたいと、夫婦は三重県外も視野に新たな仕事を探していました。そんなとき、静岡県で募集していた、自動車学校の寮での住み込みの仕事を見つけました。すぐに夫婦での浜松行きを決めたといいます。

富田さん(66):「松阪市にあった家も2軒処分してこちらに来たんです。あるとやっぱり里心じゃないですけど、起きるかなと思って、心機一転、甘えなしに、みたいな感じで。主人が60歳になったときでしたので、4年前。今年の7月で足掛け5年になります」

働き続ける65歳以上が得する制度

 高齢になっても働き続けることを選び、静岡にやってきた富田さん。富田さんのように働き続ける65歳以上が得をする公的年金の新たな制度もあります。それが4月から始まる「在職定時改定」です。

 通常、厚生年金は加入年月の長さに応じて増額されますが、これまで65歳以上で働く人の場合、70歳になるか、仕事を辞めるタイミングまでは年金の増額がありませんでした。それが、4月からの「在職定時改定」制度では、65歳以上で働き続ける人の厚生年金が毎年一定額、増額されるようになります。

 仮に月額20万円の賃金を得ている人の場合、新たな制度ではもらえる年金が1年でおよそ1万3000円増え、65歳から70歳まで働き厚生年金保険料を納めた場合、これまでより合計13万円多く厚生年金をもらえることになります。

 現在66歳の純子さんは今年から、63歳の夫、弘さんは、さ来年からこの「定時在職改定」の対象になります。

 公的年金と給与、二つの収入がある富田さん夫婦。年金2に対し給与8の割合だといいます。一方で月々の支出を聞いてみると…。

富田さん:「こちらの方で管理をしているので、家賃とかそういった分は発生しませんが総額で13万円くらいですかね。年金では無理だと思います」

 内訳は食費がおよそ6万円。若者向けのこってりした料理とは別の食材を買う必要があるといいます。そのほかに車のガソリン代や車検代などもあります。

 そんな中、富田さんの年金だけでまかなっている支出もいくつかあります。

富田さん:「第一に孫に投資するみたいな感じですけど、初節句だの入園だの云々いう部分で、お祝い事ですのでそういった部分に。二つ目に、ここエレベーターがないものですから、毎日の生活は大変で、やっぱり足とかそういったもののメンテナンスをしないと。生活習慣病の病院と今だったら歯医者と接骨院に通っている。三番目にやっぱりハルちゃん。10で考えると大体、孫4、医療費3、ハルちゃん3くらいですかね」

 在職定時改定の制度で年金の受給額が上がれば、お孫さんへのプレゼントも、愛犬のエサ代などにも これまで以上に支出ができます。

Q.今回の制度改正で年金が上がることについては?
富田さん:「それは良しする部分です。うれしいことだと思います」

 そんな富田さんですが、年金をもらえる老後になっても働く理由は、足りない収入を補うためだけではないといいます。

富田さん:「いい年してそんな所で働いて、みたいなことを言う人もいるかもしれないが、やっぱり年を重ねてしかできない仕事ってあるじゃないですか。今、若い子と接しているといろんなこと、情報とか入ってくるの。気持ち的には若くいられるかなという部分、そこがやりがいかな」

 高齢になっても働き続けることは お金以外にも得られるものがある、という富田さんの考え方も、老後に対する多様な価値観の内の一つです。

 4月からの公的年金の改正は、人それぞれの価値観に応じて、いつまで働き、いつから、いくら年金をもらうかをより柔軟に選択できるようになっています。

       (3月29日放送)