【リニア】『田代ダム』案…JR社長「関係者に個別に了解とりたい」 静岡県「ご遠慮いただきたい」
JR社長 2027年開業は遅れると明言
Q.2027年開業は難しいとのことだが、遅れるとはまだ言っていないという認識か?
JR東海 金子慎社長「違う、もう遅れるということを何回も申し上げている」
Q.遅れるということか?
JR東海 金子慎社長「そうだ」
改めて、2027年の開業が遅れるとしたJR東海。その最大の要因としているのが、いまだ着工が見えない南アルプスの静岡工区です。2月からJR東海は、同じ南アルプスの山梨工区で地質や湧水についての調査を目的とした「高速長尺先進ボーリング調査」を開始。静岡と山梨の県境から約800m離れた場所をスタートし、県境100mほどに近づいてからは慎重に作業を進めるとしています。
JR社長 静岡県の懸念解消のためボーリングのデータを提供する
ただ、このボーリングについて、静岡県の川勝知事は…。
静岡県 川勝平太知事(2月):「彼ら(JR東海)の示された根拠が崩れているとこちらは見ているので、水資源の保全が図られないのではないかという強い懸念がある。何を急がれているのか、という感じがする。今ボーリングをする差し迫った必要性は必ずしもない」
県は、静岡県側にあるとされる断層帯と山梨県側の地質のもろい区間が繋がっているとして、ボーリングで静岡県側の水が山梨県側へ流れ出るのではないかと反発。慎重に作業を進めるという県境から「100m」という設定についても、根拠があいまいだとして、JR東海へ説明を求めていました。
これに対し、JR東海の金子社長は…
JR東海 金子慎社長(9日):「今ここまで先進坑を掘ってきている。先進坑を掘るためには、高速長尺先進ボーリングをあらかじめやって、トンネル掘削に関する情報を得ることは、掘削の前段として必要。今やっている工事について必要」
金子社長は、ボーリングを山梨県側でのトンネル掘削に必要な作業としたうえで、集めたデータは、静岡県の懸念を解消するために提供すると説明しました。JR東海がホームページで公表しているデータによると、ボーリングは、3月4日現在で50m進み、現状では、ほとんど水は出ていないとしています。
JR東海 金子慎社長(9日):「(県境から)100m近くまで行くときに、静岡県内の水資源に、私たちは影響を与えることはないだろうと思っている。静岡県からは懸念があると質問をもらっている。100mというのも私たちなりに、大変余裕を持った区間と認識しているが」
「田代ダム」案について…JR「個別に関係者の了解を取りたい」
そして、大井川の水をめぐる、もう一つの問題にも動きが…。それは、県が求める「全量戻し」の対策としてJR東海が提示している「田代ダム」の活用案です。この案は、トンネル工事で山梨県側に流れ出た水を計測し、その分、東京電力のグループ会社が管理する「田代ダム」の取水量を減らすというもの。流域市町の中からも前向きな声が上がる一方で、県は、水の少ない冬場にも大井川へ水を戻すことができるかなど、懸念を示していました。
JR東海 金子慎社長(9日):「東京電力リニューアブルパワーから言われていることは、流域の関係者の理解、協議を始めることについての了解が前提だと言われているので、いま了解を得る努力をしようとしていたところ」
8日、JR東海は、田代ダムを管理する東京電力リニューアブルパワーとの協議を始めることについて了解を求める文書を県に送りました。そこには、JR東海が流域関係者に対し、個別に確認を取る方針が示されていました。
静岡県 個別の了解確認は『ご遠慮いただきたい』
これを受け、県は9日、新たな文書をJR東海へ送付。そこには…
「個別に了解を確認することは、ご遠慮いただくようお願い致します」
文書の中で、県は大井川流域の市町や利水団体と「大井川利水関係協議会」を組織していて、その規約に「JR東海との連絡や交渉は県を通じて行う」と書かれていると説明。個別の接触を避けるよう、JR東海に求めました。その上で県は、JR東海が協議会メンバーに説明する場を早急に設けたいとしています。
また、知事はコメントで「一方的な通告ではなく、双方向のコミュニケーションによる真摯な対応を強く要請する」と、JR東海に対し苦言を呈しました。
JR東海 金子慎社長(9日):「何とかたくさんの理解を円満に得て、前に進めたい、進めばいい、そういう努力をしたい」