【リニア】静岡・川勝知事が都内で会合行脚…沿線知事や自民党幹部から厳しい声
リニアの建設促進目指す「期成同盟会」総会
川勝知事は31日、リニアに関する会合や要望活動のため、都内3カ所をかけ回る、“リニア行脚”とも言える一日を過ごしました。その皮切りとなったのが、リニアの建設促進を目指す「期成同盟会」の総会です。
静岡県 川勝平太知事:「トンネルを掘ると2つの問題が出る。一つは水、もう一つは建設残土です。田代ダムの取水抑制、ならびにツバクロ沢の盛り土360万立方メートル。それから藤島沢の要対策土の10万立方メートル」
各県知事から相次ぎ“苦言”
静岡県の現状を伝え、理解を求めた川勝知事。ところが、リニア開業を見据えて街づくりを進める沿線の知事から相次いだのは、“苦言”ともとれる声でした。
期成同盟会会長 愛知県 大村秀章知事:「南アルプス静岡工区の工事はまだ着手できていない状況。これは関係の皆様方に英知を結集してもらい、1日も早く“より良い”解決策を見いだして進めてもらうように強く望む」
山梨県 長崎幸太郎知事:「南アルプス静岡工区における大井川の減水対策案については、早期に水問題の解決に向けた関係者間の協議が整い、速やかに工事が着工されることを山梨県としても“強く、強く”期待する」
長野県 阿部守一知事:「まさに静岡工区の問題は、開業時期に直結する“極めて重要な課題”であり、これは静岡県の問題であると同時に、沿線地域すべての共有の問題と考えている」
岐阜県 古田肇知事:「“線路はつながってナンボ”。全関係者が一丸となって、一つになって前に進めていく。これが大事ではないかと思っている」
さらに、まだルートが決まっていない三重県の知事からも…。
三重県 一見勝之知事:「名古屋以西の工事が、名古屋以東の工事が遅れることによって遅れるということは、ぜひ避けてもらいたいと思っている」
静岡県に対する厳しい意見が飛ぶ中、山梨県の長崎知事からは、こんな提案も…。
山梨県 長崎幸太郎知事:「静岡県の懸念は、リニア全通に関わる重大な問題で、期成同盟会のメンバーで共有し、意見を表明することが大事だと考える。そのため、当面期成同盟会で意見を交わし合う場を設けるべく、まずは事務方で調整を始めたらどうかと考える」
この提案に、会長を務める愛知県の大村知事も賛同し、速やかに事務方での協議を検討していく考えを示しました。
国交省…早期の全線整備に協力求める要望書
総会のあと、川勝知事は“リニア行脚”2カ所目となる国交省へ。期成同盟会のメンバーとともに、早期の全線整備に向けて国に協力を求める要望書を提出しました。
自民党本部
その後、知事が姿を見せたのは、自民党本部。ここではリニアに関する特別委員会が開かれ、川勝知事をはじめ、リニア沿線都府県の知事らが出席しました。
冒頭、古屋委員長のあいさつでは、川勝知事に向けたのか、こんな発言が…
自民党リニア特別委員会 古屋圭司委員長:「この同盟会の正式名称は、リニア中央新幹線建設促進協議会(期成同盟会)で、建設反対協議会(期成同盟会)ではない。沿線の知事として、国民として、われわれ国会議員として、リニア建設に向けてしっかり調整をして進めていくということが何よりも大切」
そして、参加した知事たちには、こんな要望も…。
自民党リニア特別委員会 古屋圭司委員長:「各知事からは忌憚のない意見を頂戴したい。時にはバトルがあってもいいと思う」
「バトルも辞さない」そんな言葉で始まった、特別委員会。非公開の席上で、川勝知事は改めて「水や盛り土などの問題が解決できれば、できる限り協力する」と発言。
また、山梨県の長崎知事は、静岡県がJR東海に止めるよう求めている静岡と山梨の県境に向かう「ボーリング」について、作業員の命にかかわる極めて重要な調査であり、JR東海に「進めるよう求めるべきだ」と発言しました。
「生きている間にリニアに乗りたい」
自民党の委員からは…
「生きている間にリニアに乗りたいと、切実に言われる」
「動かさないということは、ちょっとやりすぎ。大局的な議論をしてほしい」
川勝知事に、態度をやわらげるよう求める声が相次ぐ中、最後に古屋委員長からは釘をさす言葉が…。
古屋委員長
「期成同盟会に入った以上は同じ方向を向くべき。全国様々な事業で、皆問題を抱えているが、知恵を出して解決している」
川勝知事「厳しいというより励ましの言葉だと思った」
1時間以上に及ぶ会議を終え、取材に応じた川勝知事は…
Q.古屋委員長から最後に厳しい言葉が飛んだと思うが?
A.「いや、厳しいというより励ましの言葉だと思った。この気候のいい時に、特別委員会の先生方には燕沢。これは国交省の山体崩壊の頻度で一番危ないところと言われていて、その現場を見てもらうとわかる。現場を見ればそれが不適切であると一目瞭然であると私は思っているので」
Q.長崎知事がボーリングに、改めて理解を求める発言が委員会内であったが?
A.「山梨県の長崎知事が、高速長尺先進ボーリングについて明解な見解を繰り返されて、この問題は極めて全体を左右しかねない重要な問題なので、期成同盟会の中で部会を作ったらどうかと総会で話して、今、特別委員会で大村会長が、それをやっていくとおっしゃって、ですから我々が持っている情報を共有できる。それが決まったのは非常に大きい。ですから、これは期成同盟会に入った大きな価値だと思う。今回の長崎知事の発言によって、全期成同盟会の関係者に共有できるようにしていこうと、同時にそれを解決するために知恵を絞ろうということになった」
静岡・川勝知事:(長崎知事と握手して)「本当にありがたい。ありがとうございました」
『静岡空港新駅』
一方、31日の期成同盟会の中では、リニア開業よるメリットの一つとして、ひとつの案を検討する考えが示されました。
山梨県 長崎幸太郎知事:「国際空港と高速鉄道が結節する『静岡空港新駅』については、これまでに例のない画期的な駅になると考えている」
山梨県の長崎知事が「これまでにない」と語ったのは、リニアの全線開業後、静岡空港に新駅を建設する構想です。
牧之原台地にある静岡空港は、その真下を東海道新幹線が走っています。これまで日本には、空港と隣接した新幹線の駅はなく、県もこの新駅建設に向けて、2014年から6年間にわたり、総額およそ4750万円の調査費を計上してきました。
一方、JR東海は、掛川駅と静岡空港の間が短く、東海道新幹線の高速性が生かせなくなるとして、建設の可能性を否定しています。
今回の長崎知事の提案に、川勝知事は…
静岡・川勝知事:「空港新駅の可能性を言ってもらい、これは本当にありがたいこと。ただ、牧之原台地は大井川の右岸にあり、空港自体も大井川の水によっている。水の問題と、この空港新駅の問題は関係しているので、会長のリーダーシップのもと、研究会が建設的に行われることを切に望む」