【リニア】「ボーリング」も平行線…JR東海「調査」 静岡県は「工事」 大井川沿岸では「リスク回避になるのでやってほしい」の声も

静岡県 森貴志副知事(4日):「工事の一環であるとか調査。どちらであっても今、高速長尺先進ボーリングを山梨側から静岡側に進めることは認められない」

画像1: 【リニア】「ボーリング」も平行線…JR東海「調査」 静岡県は「工事」 大井川沿岸では「リスク回避になるのでやってほしい」の声も

 静岡県の森副知事が言及した“ボーリング”に関する県の認識。これはリニア中央新幹線の建設工事に伴うものです。現在、JR東海は山梨県側から静岡県に向かってトンネルを掘り進めています。これはリニアが実際に走る「本線」ではなく、「先進坑」と呼ばれる作業用トンネルですが、工事の進捗は県境まで1kmを切っている状況です。

 そうした中で今、JR東海が希望しているのが「ボーリング調査」です。

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JR東海 金子慎社長(11月25日):「いきなり大きな断面のトンネルを掘ることに比べれば、このボーリングをすることによって、いろんな危険を避けるための情報、あるいは湧水の状態等、いろいろ情報が得られるので、これをやった方がいいだろうと申し上げている。何か小さいものでも何か危険があるので、やめた方がいいということにはならないというよりは、やっぱりやった方がいいのではないかというのが私たちの考え」

県専門部会「県外に水が出たら、どうやって返すの」

画像: 県専門部会「県外に水が出たら、どうやって返すの」

 リニアのトンネル工事を巡っては、本来は大井川に流れるはずの水が、山に穴を開けることで山梨県側に流れ出てしまうという懸念が指摘されています。4日に開かれた県の専門部会でも、委員からから同じような指摘が相次ぎました。

県専門部会 塩坂邦雄委員:「(県外に水が)出たときにその水が仮に静岡県の水だとしますよね。それをどうやって返すのかを気にしないといけない。それが膨大だったら返せない」

県専門部会 丸井敦尚委員:「静岡県の地下水を大井川に全量戻すという約束をしていたと思うが、(水が県外に出て)どれだけの影響がある、どれだけ安心なのか、どれだけ危険なのかが一般の方々が判断しやすいように教えていただきたい」

JR「水資源利用に影響を与える可能性は小さい」

 一方、JR東海側は…。

JR東海担当者:「仮にボーリングの先端が県境付近の断層帯に差し掛かったとしても、流入する湧水が静岡県内の地下水に影響し、大井川の水資源利用に影響を与える可能性は小さいと考えられる。なお、静岡県内の区間を掘削中に湧水量が管理値を超えた場合には、掘削を中断し対応を検討する」

画像: JR「水資源利用に影響を与える可能性は小さい」

 「ボーリング調査中に流出する水は少ない」とし、調査終了後に、流出した水を静岡県へ返す方針であること改めて伝えました。

 ただ、これに委員からは…

県専門部会 森下祐一部会長:「流出した量をきっちり評価して、その分を戻すという原点が崩れてしまう。戻す方策までセットにして提案していただきたい」

川勝知事「これは施工中(工事中)の調査」

 「ボーリング」については、川勝知事もたびたび会見で言及しています。

画像1: 川勝知事「これは施工中(工事中)の調査」

静岡県 川勝平太知事(11月29日):「掘ると水が出るということはほぼ確実なので、調査が独立してされるものではない。(土木学会が出した本によると)施工中の地質調査の中に先進ボーリングが入っている。ですから、これは施工中(工事中)の調査。高速長尺先進ボーリングについて何となく調査だけと言っているが、これは関係者は施工中のトンネル工事の一環としてやるんだということは常識になっている。それを金子社長が調査・調査と言うので、そこに引きずられて、『それはいいことだ』という人もいると思うが、本来の調査をやる時間が十分にある。それをなさっていただきたい」

画像2: 川勝知事「これは施工中(工事中)の調査」

 県は、リニアに関して、静岡県内での工事を現状認めていません。JR東海があくまでも「調査」だとしているボーリングについても、県の認識では「工事」であり、つまり認めることはできないという立場です。

島田市長「リスク回避のためにもやってほしい」

 ところが、大井川流域の市や町の意見は、県とは異なります。

画像: 島田市長「リスク回避のためにもやってほしい」

島田市 染谷絹代市長:「科学的な根拠を持って議論を進めていく。そのひとつの土台となるものなので、リスクを回避するためにもやっていただきたい」

さらに、斉藤国交大臣は…

斉藤国交大臣(6日):「3日(土)。大井川流域8市2町の主催により、島田市において市町の首長と国の有識者会議委員との意見交換会が行われました。高速長尺先進ボーリング調査の必要性や有効性などの質問に対し、専門家から説明が行われ、御出席された市町のおおかたの首長さんは、『ボーリング調査を行った方がいいのでは』という意見であった、との報告を受けています。国土交通省としては、この(ボーリング)調査について、今後、静岡県とJR東海との間で行われる具体的な計画に関する議論を見守りたいと思います」

副知事「今の現段階では認められない」

 現在、JR東海だけでなく、大井川流域とも意見が平行線を辿る形となっている県。県の専門部会終了後、森副知事は…。

森貴志副知事:「根本的に今回の高速長尺先進ボーリングについては、実際に水がでてしまう。水が出てしまうけれどもそれを戻すということも含めて(流域市町に)話が実際にされているのか疑問がある。水は全量戻しが前提でこの議論が進んでいるので、先進ボーリングによって水が山梨側に流出することが、きょうの話の中でわかったので、やはりそれは今の現段階では認められない」

       (12月8日放送)