和食中心の飲食店グループが焼き肉、回転ずし、そしてベーカリー&カフェ開店 事業拡大続く「なすびグループ」の戦略 静岡市
客:「食パンを買いました。すごいですね」
客:「こちらの食パン。おいしそうで楽しみです。家族みんなでいただきたいと思います」
手にしていたのは、もっちもちの食パン。生地を24時間以上熟成させてから焼くのが特徴で、その工程によって、しっとりとした口当たりと小麦本来の甘さがひきだされるそうです。
パンを販売するのは…。
10日、静岡市のグランシップにオープンした店、ベーカリー&カフェ「ギャレイ」。
角食パンをメインとしたベーカリーの対面販売と、カフェスペースでは料理も提供しています。仕掛け人は、県内で和食を中心とした飲食店を展開するなすびグループの藤田圭亮社長。
なすびグループ 藤田圭亮社長:「客層を広げることがより重要であるということはコロナ前から分かっていたこと。コロナによってそれが加速された。よりスピーディーに決断することが重要だと」
このほかにも10月、焼き肉、回転ずしといった新業態の店を相次いでオープンさせるなど、コロナ禍で飲食業が苦境に立たされる中で、その勢いは止まりません。コロナ禍でも前進する、なすびグループに密着しました。
開店5カ月前 妥協を許さない社長の発言
5カ月前の6月初旬。オープンに向けて準備が進む店に、藤田社長の姿が…。この日、カフェメニューの試食会が行われていました。
なすびグループ 藤田圭亮社長:「パンがうまい。やっぱりね、パンが一番」
静岡県内18店舗を運営してきた、なすびグループ。藤田社長からは妥協を許さない発言もしばしば…。これは、上に丸いチーズをのせたボロネーゼ。
チーズ割ると…。
なすびグループ 藤田圭亮社長
「中のクリームがドロッとでるイメージですかね。思ったよりドロッとしませんね…。いや 本当に本当に…」
社員:「おかしいな…」
藤田社長:「こういう感じですか?」
社員「もうちょっとドロッとします。やり直します」
藤田社長:「そうですね」
作り直したボロネーゼは…。
藤田社長:「前より全然いいと思う この(チーズの)大きさ」
藤田社長:「パッと見たときにワーッと驚きにつながるような、そういう商品ということを考えています」
若者の宴会離れ…個人・ファミリー客向けの店舗を
団体客の利用が多い和食店を主に展開してきたなすびグループ。新たにベーカリーやカフェといった個人やファミリー向けの店舗をオープンさせる計画を進めていました。
きっかけは、新型コロナです。外出自粛要請や緊急事態宣言に伴う休業によって、売り上げが例年と比べ、9割ほど減少した時期もあったといいます。
なすびグループ 藤田圭亮社長:「若者の宴会離れだったり、アルコール離れというものが、コロナ前から徐々に徐々にですが始まってきたわけですね。ですので、コロナによって10年後に来るものが、10年早く来たと私は思っております。そこの需要はなくならないとしても、やはり減ってくる。減ってくる穴埋めというものも、今までとは違う考え方のビジネスモデルを、どのように構築していくということが非常に重要じゃないのかな。まず専門店であること。何がお客様にお召し上がりいただくかというところが明確であること。みんなが好きなもの。また新たな客層をとっていくということが必要だと考えている」
コロナ禍の新しいスタイル「ピクニックセット」も提案
25歳の時、父親が経営していた会社を引き継いだ、藤田社長。しかし、当時は赤字経営。いまの役員や従業員たちとは「家族」のように、苦楽を共にしてきたといいます。
藤田社長が大事にしていること。
なすびグループ 藤田圭亮社長:「一番大きいのが、社員の安心というところ。社員も安心してなすびグループの中で仕事ができていくと、より積極的に攻められる」
社員同士のコミュニケーションを特に大事にしていて、自ら状況を聞いて回ります。
なすび 副総料理長 勝又信さん
「僕らからすれば社長がオッケーといったものに関しては、安心していけるのかなと。僕らがそこにどれだけ食いついていけるかなと日々挑戦してます」
社長と社員たちとで出し合ったアイデアが新店舗には盛り込まれていました。無料でレンタルができる「ピクニックセット」。コロナ禍の新しいスタイルを提案しています。
なすびグループ 営業副本部長 大畑守さん
「テイクアウトの料理をいろいろ用意しているので、コーヒーと一緒に公園とか芝生広場で楽しんでいただければなと思っています。店の中というよりも外は換気がよくて気持ちいいと思いますので楽しみながら感染対策ができるかなと」
オープン当日 社長「たくさんのお客さんに試していただきたい」
密になりやすい入り口は広くゆとりある空間に、カフェスペースのついたても、店内に調和するデザインに統一しました。アフターコロナを見据えた、「安心」を感じるカフェでなすびグループの挑戦が始まります。
オープン当日。
なすびグループ 営業本部マネージャー 福島久訓さん
「きょうたくさんお客さん来てほしいですね。テイクアウトもだからね、普段のレストランだけだったら100人くればすごいなって」
なすびグループ 営業本部部長 大畑守さん
「ランチで1500円とか2000円するわけだし、パンも高級なものになるので皆さんに楽しんでいただけるように、スタッフが全員一丸となって頑張るだけです」
しかし、ここでもコロナによる影響が。感染を避けるため、パン焼きを担当するスタッフたちの研修機会を十分に確保することができませんでした。オープン当日でも先輩の指導を受けながら、メモを取ります。
焼きスタッフ
(パン取り出して)「良さそうだね、大丈夫、大丈夫」
藤田社長も様子を見に訪れます。
なすびグループ 藤田圭亮社長
「商品力が非常に強いものができているので、とにかくたくさんのお客様にぜひお試しいただきたいなと。もうそれだけですね」
生産が追い付かない事態に
試食を重ねたテイクアウトメニューもそろって…。いよいよオープンの午前11時。
なすびグループ 営業本部部長 大畑守さん
「オープンします! きょうはパンのお買い求めで?」
正午すぎ。
カフェも利用客で満席に近い状態です。それでも訪れる客の大半の、お目当ては…パン。
ターゲットにしているファミリー層の姿も多く見かけました
ディレクター
「パン好きな人!」
子どもたち
「はーーーーい!」
母 30代
「公園に行きがてら、こちらちょっと寄ったりとか来やすいと思います」
店ではこんなやりとりも…
客
「パン欲しかったんで…、また来ます」
(電話するスタッフ)
「申し訳ございません。ご予約いただければ、その分用意させていただきますので」
焼き上がりの時間をずらしていましたが、来店客のオーダーが殺到し、生産が追い付かない事態も…。夕方4時には予約客のパンのみを残して、テイクアウトメニューが終了。
そして、いよいよ閉店の時間…
ベーカリーという新規事業に挑戦した、その成果は…
なすびグループ 営業本部部長 大畑守さん
「テイクアウトの方も合わせて203人。とりあえずホッとしたところはある」
(移動して)
「お疲れ様です! きょうは203人です!(拍手)
「まずは第一歩」
なすびグループ 営業本部部長 大畑守さん
「パンの数はこれでマックス。これ以上焼けない。焼こうとするなら朝2時間ぐらい早く来て…」
きょうの課題は、すぐに社長に伝えます。これがなすびグループの社長と社員の距離感。
なすびグループ 藤田圭亮社長
「コロナ前であっても、コロナ禍であってもコロナが落ち着いたとしても、やはりそのお客様の喜び、これはどっちがお客さんが喜んでくれるんだろうということを判断基準にしなければいけない。この街の風景の一部になれるような、その店舗であり続けたい。でここからスタートして言って県内外にしっかりと通用するブランドを築いていきたいということですね」