【今年の静岡】リニアめぐる静岡県とJR東海の対立…大井川流域住民は
農家「水が減ったら補償をもらってもなんともならない。とにかく減らさないで」
藤枝市で稲を育てている田森喜治さん。会社員から専業農家になって3年目。リニア新幹線工事の議論の行方を注視しています。
農家 田森喜治さん:「稲作では水を大量に使います。農業用水の今後が気になります。(水は)減ってしまった場合、補償してもらっても、なんともならない。とにかく減らさないでほしいのが一番」
トップ会談も議論かみ合わず
6月、トンネル工事をめぐって、JR東海の金子慎社長と川勝知事が直接、会談しました。
金子社長:「2027年に何とか完成させたい。ゴーサインは難しいと受け止めたらいいのか?」
川勝知事:「仮に知見で戻せない、危ないとなったらどうするか?」
金子社長:「乗り越えていきたい。非常にポジティブな気持ちでいる」
2027年の開業を目指すJR東海は、金子社長みずから知事に直談判。ただ、議論はかみ合わず、進展はありませんでした。
国の有識者会議…静岡県副知事が批判
また、4月から始まった国の有識者会議は、大井川の流量や地下水への影響について一定の見解を示しつつも、課題解決の着地点は見えていません。
今月8日の会議では、「現時点で想定されるトンネル湧水量であれば、トンネル掘削完了後に湧水量の全量を大井川に戻すことが可能」との見解を示しましたが、難波副知事は前提条件がついていると批判しました。
静岡県 難波喬司副知事:「湧水量の全量を大井川に戻すことが可能であることを、有識者会議が確認したということが強く出すぎる。誤った理解をされる可能性がある、違うとらえ方をするような表現はできれば避けてほしい」
地元「大井川の水は命の水」
一方、JR東海は流域住民の理解が工事着工の大前提とし、議論については進んでいるという認識を示しています。
JR東海 金子慎社長:「有識者会議は、これまで会を重ねているが、それぞれ資料を出していて到達点を確認して進んでいる着実にこれまで進んできたなということと、これからも一生懸命やっていく」
60万人をこえる流域住民の生活を支えるとされる大井川の水。藤枝市自治会連合会会長の小林一男さんは国の有識者会議の動向を冷静に見ています。
藤枝市自治会連合会 小林一男会長:「専門家会議も開かれているが、素人にもわかるように情報公開してもらえればいいが、まだ全面公開されていないし、結論も出ていない。今の時点では専門家会議の検討を踏まえて、結論出るまでは待っていこうというのが実態」
「巨大なトンネルを作ることで、その影響が非常に不明確、不鮮明で、それで不安を持っているというのが実態」
「大井川の水は命の水。恩恵を被っている。これからも、この地域の人たちは生活するうえで、水とは切っても切れない関係。将来に向けて安心して生活できるということが、みなさんの基本的な願い」
工事中の一定期間、山梨側に湧水が流出することについての議論は、来年に持ち越され、生物多様性については、議論は進まず、課題は山積みのままです。県とJR東海が住民の理解を第一に、議論を進めていくことが求められます。
今年最後の会見で川勝知事は…
静岡県 川勝平太知事:「JR東海として有識者会議、または地元の理解が得られるまでは事業は凍結すると表明をすると、安心して有識者も議論に集中できる。安心感が一挙に高まると思う次第」
23日、ことし最後の会見に臨んだ川勝知事。リニア中央新幹線のトンネル工事をめぐり、流域住民の理解が得られていないとして、静岡工区の工事について凍結を表明するべきだと、JR東海に求めました。また、リニア問題を議論する国の有識者会議に対しても、改めて苦言を呈しました。
川勝知事:「運営に問題があるという認識が深まった。座長コメントは印象操作と言われてもしかたがない。結論ありきではないか等、極めて厳しい意見が出ている」
国の有識者会議はこれまでに7回実施。静岡県は会議の全面公開や座長コメントの協議を公開することを、国交省に求めています。