1本1400万円の伝説のウイスキー生んだ蒸留器など3つのこだわりで… 静岡市の奥座敷オクシズ生まれのウイスキー
琥珀色の輝き。「シングルモルトウイスキー静岡プロローグK」。その名の通り、静岡の原料や水にこだわって生み出されました。
全国で場所を探して、たどり着いたのがオクシズ
静岡市中心部から車で約40分。葵区玉川地区。「オクシズ」の自然豊かな山間にあるのが、ガイアフロー静岡蒸溜所です。4年前、代表の中村大航さんが、この地にほれ込み、市内では初めてのウイスキーの蒸溜所を作りました。 ガイアフロー静岡蒸溜所 中村大航代表取締役:「全国で場所探しをしたんですが、なかなかいい場所が見つからなくて、この場所に来た時に周りを見たら、すごく自然の恵み、山の恵みの豊かな所だったので、それを生かそうと思ったんですね」
旧清水市出身の中村さんは、8年前まで家業の機械部品メーカーの社長をしていました。
ガイアフロー静岡蒸溜所 中村大航代表取締役:「スコットランドに8年前に行ったときに、ベンチャーで作っている小さい蒸留所を見て、こういうふうな小さい規模でウイスキーを作って、そしてお客さんとつながっていける、そういう仕事をしたいなと思った」
こだわりは「独自性」と「静岡」
親族に会社を引き継ぎ、2012年、ゼロから新会社「ガイアフロー」を設立。6億円を投じて設備を整えました。 ガイアフロー静岡蒸溜所 中村大航代表取締役:「正直やらずにはいられなくなってしまって、勇気とか、そんなのなくてがむしゃらにその後走った感じ」
中村さんがこだわっているのが「独自性」と地元「静岡」です。ウイスキー作りは大麦麦芽を発酵させ、蒸留。樽に詰めて3年以上寝かせてようやく出来上がりですが、工程一つ一つに、そのこだわりがつまっています。
こだわり(1) 木製の発酵槽(原料を発酵させる容器)
金属製のものが使われことが多い発酵槽ですが、ここでは静岡県産の杉で作った全国的にも珍しい木製の発酵槽を使っています。 木製の場合、季節や湿度で収縮するため、水が漏れるなど、金属製よりもメンテナンスが欠かせません。実際、この日も大阪からこの発酵槽を作った職人が、水漏れを防ぐために来ていました。
木桶職人、上芝雄史さん:「かなり輪が緩んでるのを発見しました。一応は増し締めして、今のところ状況を見てるけど、もうぼた落ちはなくなっていると思います。ぼた落ちはなくなってて、あっ、今一カ所出ました。ここまだやってませんね、すみません」
木製のメリットは…
手間はかかりますが、それ以上に大きなメリットがあると言います。 木桶職人、上芝雄史さん:「結局、発酵菌が発酵して発酵熱が出るんですけど、金属の容器とかプラスティックの容器だと、それが全部外に逃げてしまう。(木製の場合)発酵菌の活動が非常に活発になるので、思うお酒になる」 発酵槽でできた「もろみ」は、蒸留することでアルコールを凝縮します。蒸気で間接的に加熱する方法が主流ですが…。
こだわり(2) 世界でここだけ! 薪による直火蒸留
ガイアフロー静岡蒸溜所 中村大航代表取締役:「これは世界で一つしかないと言われる、薪の直火で蒸溜をする蒸留器ですね。それのかまどです」
ガスよりも火力や温度調整が難しいにもかかわらず、中村さんは薪での直火蒸留を選択しました。オクシズの豊かな自然環境を有効利用するため使う薪は地元の山から切り出された間伐材です。さらにかまどに合うよう、数千万円かけ、蒸留器はスコットランドのメーカーに特別に作ってもらいました。
こだわり(3) 伝説の蒸留器
2015年に1本1400万円の値が付いた伝説のウイスキーを生んだ軽井沢蒸溜所の蒸留器を購入。
今回、静岡蒸溜所が発売するウイスキーはこの蒸留器から生まれたものです。 南アルプスの清らかな伏流水。オクシズの間伐材。世界で唯一の蒸留法。そして伝説の蒸留器。一手間も二手間もかけ、2016年12月に最初の原酒が樽に注ぎ込まれて3年以上。樽の中でゆっくり眠っていたウイスキーがいよいよ目覚めの時です。
数年後には静岡が詰まった一杯を
ガイアフロー静岡蒸溜所 中村大航代表取締役: 「うれしい気持ちと皆さんの反応はどうなんだろうという、ちょっとドキドキした気持ちと両方ありますね」
2020年11月には、静岡県焼津産の大麦と県の研究所が開発した酵母を原料としたウイスキーの仕込みを開始しました。静岡がぎゅっと詰まった一杯を楽しめるのは数年後ですが、中村さんははっきりとその先を見据えています。
ガイアフロー静岡蒸溜所 中村大航代表取締役: 「私自身すごく地元が大好き、愛してますので、その良さをウイスキーという形で表現できたらいいなと。それを世界中の人が飲んで、楽しい気持ちになって、静岡ってどんな場所なんだろうと思って、遊びに来てくれたらいいんじゃないかな」
(2020年12月19日放送)