“タナベノマスク”回収へ 「税金を使った政治活動」と誤解の恐れ 田辺静岡市長が市内高校生に配布した不織布マスクで波紋
「今回オミクロン株との戦い、10代とりわけ高校生が鍵を握っている。ぜひチラシとマスクを全校生徒にお配りをいただいて」
静岡市内にある27の高校のすべての生徒、1万9000人に無料で配布するため、先週、学校に発送された、田辺市長の似顔絵付き不織布マスク。全国民に配られた“アベノマスク”ならぬ、いわば“タナベノマスク”です。
この“タナベノマスク”が、いま回収される騒ぎになっています。
マスク配布し「一緒に頑張りましょう!」
1月27日、田辺市長は市内の高校生とオンラインで意見交換を行い、このマスクを高校生全員に配るので、利用してほしいと語りかけていました。
田辺信宏市長:「お手元にこのようなチラシとマスクがありますか?マスクと一緒に2人に託しますので。市長の思い、受け取ってもらえるようお願いする」
問題のマスクには、感染予防を呼びかけるメッセージとともに田辺市長の名前と、「一緒に頑張りましょう!」とこぶしを突き上げるマスク姿の市長のイラストが描かれたシールが貼られています。
ドタバタ“回収劇”
ただ、来年春には静岡市長選挙が控えています。さらに高校3年生と2年生は、来年春の市長選の有権者になる可能性があります。一部からこんな指摘が上がったといいます。
ネット上の声:「高校生に配布するマスクに、市長の名前・似顔絵のイラストって…。来年は静岡市長選だし、18歳以上の高校生には選挙権があるし、上手く考えたな」
市はこうした指摘を受け、きのうマスクを回収することを決めました。すでに生徒の手に渡ったマスクは回収せず、まだ生徒の手元に届いていない1万1000枚は学校から回収し、市長のイラストが入っていないマスクと交換するということです。
実はおととし、栃木県足利市でも同様の事例があり、問題視されていました。静岡市はそうした問題を知らなかったのでしょうか。
静岡市担当者:「市長のイラストやメッセージを入れることで効果的に伝わると思った。そのような見方をする人がいるということにまで思いが及ばなかった。イラストを入れるというのは市長の指示ではない。ただちに法的に問題はないが、誤解を招かないように別のマスクと取りかえる」
専門家「違法ではないが、誤解を招きかねない」
波紋を呼んだ“タナベノマスク”。
今回の行為は、「税金を使った政治活動」と誤解されたり、「公職選挙法の寄付行為の禁止」に抵触するおそれはないのでしょうか。専門家は・・・。
静岡大学(政治学)
井柳教授:「今回は違法ではないと思うが 、ただやはり来年の春に 静岡市長選挙があることを考えると 、やはり田辺市長に立候補の意欲があるかどうかわからないが 、市長の名前とかイラストの入ったものを配布するというのは、やはり選挙を意識した活動というふうな見られかねない、誤解を招きかねない、ということで やはり公職選挙法上もそういったことは控えるべきだということが、法の立場という風に言ってもいいかと思う。したがって違法ではないが 今回回収したというのは対応としては当然の対応だったんではないかと思う」
Q,税金を使った政治活動という風にも誤解されかねない面もあると思うが?
静岡大学(政治学)
井柳教授:「そうですね、まあ税金を使った 政治活動という風にとられてもおかしくない側面があるかなと言うところはある。そういう点で言うと、やはり今回本人も周囲も慎重な対応が必要だったんではないかと思う。回収したマスクも誤解を受けないような形での有効活用をしていただければと思う」