静岡市の台風被害に対する行政対応について「市長個人についての検証はしていない」 自問自答する田辺市長、市は今回の反省を「教訓」にできるのか?
「適切な行動だったかどうか、私自身今でも自問自答しています」
1日、静岡市の田辺信宏市長が“反省の弁”を口にしたのは…。
行政対応に関する中間報告が発端
伊地健治アナウンサー:
「承元寺取水口です。たくさんの流木やガレキなどが、詰まってしまっているのがわかります」
去年9月、静岡市に甚大な被害をもたらした台風15号をめぐる対応についてです。
静岡市清水区では最大6万3000軒が断水、床上・床下浸水の被害は合わせて6000棟余りにのぼり、市民生活に大きな影響をもたらしました。
田辺市長の答弁の発端にあるのは、市がまとめた行政対応に関する中間報告です
「市長個人についての検証はしていない」
今回静岡市は「自衛隊への災害派遣要請」や「災害ごみの仮置き場開設」など、10項目について、問題点やその原因、改善策を公表。
中間報告では、災害対策本部の設置が遅れたことや、市民のニーズに応える情報発信ができなかったなどの課題が挙げられましたが…。
静岡市危機管理総室 一柳明俊 総室長:
「市組織としての対応はどうだったかという観点で検証したので、市長個人についての検証はしていない状況」
災害対策本部の本部長を務める市長が対象となっていないことに、記者からの指摘が相次ぎました。
Q.行政のトップである市長の検証がなくて庁内検証というのはどういうことなんでしょうか。全く矛盾していませんか?
静岡市危機管理総室 一柳明俊 総室長:
「災害対策本部として検証しておりますので、最終的な責任は本部長である市長にあると考えておりますけれども、現時点で検証することは考えていない」
Q.最高責任者として指揮したのは田辺市長で、この部分の論証や考察がなくて、なぜ検証と言えるのか?
静岡市危機管理総室 一柳明俊 総室長:
「現時点では組織としての検証を進めてまいります」
市は今後有識者との意見交換や市民アンケートを実施するなどした上で、今年度中に最終報告をまとめるとしています。
その過程で市長の責任を検証すべきとの意見が出れば、「検討材料」にするそうです。
「電話番号は教えてもらえなかった」
田辺市長は発生翌日の午後に断水の原因となった興津川の取水口を視察。
しかし、その日の午前に地域の敬老会と祭りに参加していたことがのちに判明し、物議を醸しました。
また、有事にもかかわらず、川勝知事との不仲がクローズアップされた場面も―
Q.どうして道路1本隔てた100m向かいにいる知事と電話1本しない?
静岡市 田辺信宏市長:
「知事とは電話ができない。知らない、携帯番号を。かつて(番号を)教えてもらおうと思ったこともあったが残念ながら教えてもらえなかった」
静岡市は今回の反省を「教訓」にできるのか
自身の一連の対応が検証されていないことについて、1日、田辺市長は―
静岡市 田辺信宏市長:
「今回の検証の目的は災害対策本部がどう機能したのか、何がうまくいって、何がうまくいかなかったのか、このことを明らかにして、今後の防災・減災の対策につなげていくということである。一連の対応の中で、私はその時々で把握できていた情報を基に判断をしてきた。その把握できた情報に不足があったことも含めて私の責任であると理解している」
Q.敬老会や祭りに参加したことは、適切な情報の報告を受けて認識していればあんなことはしなかったという反省があるということでしょうか?
静岡市 田辺信宏市長:
「それもひとつあるかもしれません。しかし、私は別の大義であの場に寄った。あれが適切な行動だったかどうか私自身今でも自問自答しています」
Q.市長の行動として適切だったと今振り返っているのかどうか聞かせいただきたい
静岡市 田辺信宏市長:
「先ほどから申し上げているが、今でも自問自答をしております」
リーダーの対応を検証することなく、静岡市は今回の反省を「教訓」にできるのでしょうか。
静岡市 田辺信宏市長:
「私の最終的な責任、政治的・道義的な責任は負います。一方で、誰が市長になっても静岡市のこれからの災害対応力・危機管理能力を向上していかなければいけない。ですから、それは行政の各所、どこが足りなかったのかということをきちんと検証する。それが大事なんだと、これは切り離されるべきだと私は思います」