市が市議会議員を提訴する異常事態に 土地の所有者めぐり事態は泥沼化の様相 静岡県沼津市

駐車場の土地を巡って静岡県沼津市が沼津市議を訴えるという問題が起きています。いったい何があったのでしょうか?

白鳥衛記者:
「あちらに見えるのが問題となっている駐車場です。現在車は停められていないが、有料駐車場として貸し出していた車2台分の土地が山下市議のものかどうかが争点となっています」

 問題となっているのは、この「駐車場2台分の土地」です。

沼津市 頼重秀一市長:
「市が市議会議員を対象として提訴するということを今回の議会に上程した。そういう意味では、私も政治家のひとりですから、極めて重たい内容であるという認識」

 沼津市が「訴える」という相手・・・それはなんと、現役の市議会議員。

「私は悪徳議員として糾弾される」

山下富美子沼津市議 14日:
「『本来のこの土地が誰のもの』というところの基本的な資料も出ないまま今日に来ました。今や私はこの駐車場料金を取った非常に悪徳な議員だということで、これから糾弾されるわけですけども、まずその(沼津市の)行為を知ってもらいたい」

「私は悪徳議員として糾弾される」
強い口調でこう語るのは、現在5期目の山下富美子市議です。

 沼津市によると、山下富美子市議は、沼津市大岡の自宅の隣にある“自身の所有する土地”を、月極駐車場として貸し出していました。

 ただ、市が土地の登記簿などを調べた結果、そのうち2台分が“市の土地だった”ということが判明。

沼津市は200万円の返還を求める

 沼津市側は山下市議が駐車代として10年間で得たおよそ200万円を返還するよう求めているのです。

沼津市 建設部 杉山泰彦部長:
「市から不当利得の返還請求をしてきた相手方ですが、明確な回答が無いまま時間ばかり経ってしまい、その後最終的に支払わないという回答があった。このことから、市の土地で不当に利得が発生している現状から、公平・公正の観点から返還してもらうべきと考えて提訴の議案を提出した」

 そもそも、この問題が浮上したのは去年9月、議会への匿名の通報がきっかけでした。

 この時、山下市議は市の指導を受け入れていて、去年9月末までに駐車場としての利用を中止しました。

 その後、市は山下市議に対し、今年の6月末までに駐車代の返還を求めましたが、これに山下市議が応じなかったため、9月14日、返還を求め提訴するための議案を市議会9月定例会に提出しました。

市の登記ミスを主張

 なぜ、山下市議は、支払いに応じなかったのでしょうか・・・。

山下富美子沼津市議 14日:
「私の疑問はこの土地、本当に誰のものなのか。基本的にその確証となる資料が、開示請求をしましたが、ほとんど出てきませんでした。市に提訴された土地は私のものです。証拠が見つかったが、市は必ずこの事実に基づいて提訴を取り下げてほしい」

 山下市議は「問題となった市の土地は、元々父親が所有していたもので、およそ30年前に、付近の橋を拡幅する際、父親が別の土地を市に譲渡し、その代わりに問題となっている土地を取得した」と説明。

 さらに、市は去年9月に問題が発覚するまで駐車場としての利用されていた“実態”を認識しておらず、問題の土地に関する資料の開示請求を何度求めても応じなかったといいます。

 こうした背景もあり、山下市議側は「市は登記をしなかったのではないか」と、“市の登記ミス”を主張しています。

山下富美子沼津市議 14日:
「文書機関が保存期間、30年が過ぎた。ちょうど今年が30年。今年の3月31日が文書保存期間ですが、私が開示請求している頃はまだ充分あったはずです。そういう意味では、文書保存期間が過ぎたとか文書がないとかということで、ほとんど資料は出されないまま今日に至っている」

 山下市議は、問題の土地が市の土地であることを裏付ける資料が
市から提出されていないことを疑問視し、逆に、会見の中で土地が自らのものだと裏付ける「土地の売買契約書」や「確約書」などを示しました。

20日の会見で沼津市は

 一連の山下市議の主張に対し沼津市は20日の定例会見で・・・

Q(市有地だと)信じる根拠は、契約書のあるなしではなく、登記が市のものになっている以上の根拠を市は持っている?

沼津市 建設部 杉山泰彦部長:
「それが一番の根拠だと考えている。登記、登記、登記簿が、登記が市の土地なので逆に市のものじゃないという証明をそちら(市議)側がするべきだと思う」

 市は、山下市議がどんな資料を持っているにせよ、問題の土地は、登記上市の土地であることは間違いないと主張しています。

 今後、山下市議は自分の土地と裏付ける“証拠書類”をもとに沼津市と協議を続け、市の姿勢が変わらなければ、逆に沼津市を提訴する考えを示しています。

 一方、沼津市は、山下市議の会見で示された資料を確認したうえで、仮に提訴される運びとなれば、弁護士と相談して適切に対応すると話しています。