沼津市が市議を提訴へ…議長「前代未聞の議案」 「駐車場2台分の土地」の所有者は市議か市か 静岡・沼津市

沼津市議会 髙橋達也議長(25日):「前代未聞の議案が出てきて、『提訴する』という議案ですので、これは…議会としては慎重に議論していかなければいけない」

 沼津市議会の議長が「前代未聞」と語る“ある問題”。いま全国からも注目を集めています。

 それは…。「市が現役市議を提訴へ」

市議「自分のもの」 沼津市「土地は市のもの」

 25日行われた沼津市議会9月定例会には、問題の渦中にいる人物の姿がありました。現在5期目の山下富美子市議です。  市内の土地をめぐり、山下市議は「自分のもの」だと主張する一方で、沼津市側は「土地は市のもの」だと主張。土地の所有者をめぐり、泥沼化の様相を呈しています。

山下富美子沼津市議(14日):「『本来のこの土地が誰のもの』というところの基本的な資料も出ないまま今日に来ました。今や私はこの駐車場料金を取った非常に悪徳な議員だということで、これから糾弾されるわけですけども、まずその(沼津市の)行為を知ってもらいたい」

沼津市 頼重秀一市長(20日):「市が市議会議員を対象として提訴するということを今回の議会に上程した。そういう意味では、私も政治家のひとりですから、極めて重たい内容であるという認識」

「駐車場2台分の土地」

 沼津市によると、山下富美子市議は沼津市大岡の自宅の隣にある、“自身の所有する土地”を1994年ごろから月極駐車場として貸し出していました。ただ、市が土地の登記簿などを調べた結果、
そのうち2台分が“市の土地だった”ということが判明。沼津市側は山下市議が駐車代として10年間で得たおよそ200万円を返還するよう求めているのです。

 ところが、市の要求に対し、山下市議は…。

山下富美子沼津市議(14日):「市に提訴された土地は私のものです。証拠が見つかったが、市は必ずこの事実に基づいて提訴を取り下げてほしい」

 山下市議は、「問題となった市の土地は、元々父親が所有していたもので、およそ30年前に、付近の橋を拡幅する際、父親が別の土地を市に譲渡し、その代わりに問題となっている土地を取得した」と説明しています。

 これに対し、沼津市は…。

沼津市建設部 杉山泰彦部長(20日):「登記が市の土地なので、逆に市のものじゃないという証明をそちら(市議)側がするべきだと思う。それが一番の根拠だと考えている、登記簿が」

 市は登記上、問題の土地が市の土地であることは間違いないと主張。しかし、市が「登記が一番の根拠」とするのに対し、山下市議は「そもそも土地を市が買い取った書類が存在しない」と反論しています。

山下富美子沼津市議(14日):「そもそも私には、この父が売った土地が約64坪、平成五年にね。その契約書や資料がどんなものがあるかわかりません。換地のお金を払ったという証拠を、沼津市の代理人弁護士の方に出してほしいと、(これまでに)依頼をしています。しかし、『文書保存期間が過ぎて保管していない』『文章がない』ということが繰り返された」

 山下市議は、土地が自らのものだと裏付ける“証拠書類”として、父親が市と交わした「土地の売買契約書」や「確約書」などを示し、“市の登記ミス”を指摘しています。

 一方で市は「登記しないことは考えられない」としたうえで、「そもそも払い下げの申請がなかったため、契約をしていない」と説明しました。

沼津市建設部 杉山泰彦部長(20日):「確約書、私どもは古い資料がそれぐらい(確約書)しかないから、その中で相手方と払下げする、しないなどのやりとりはあったと思われますが、実際そもそも払下げを申請するのは相手方でございまして、最終的にはそちらから申し出がなかったから契約はしていない。あくまでも登記上の市の土地でございますので、そういう認識でいる」

 双方の言い分が全くかみ合わない状況の中、9月14日に市は、山下市議に対し、市の土地で得た不当利得の返還を求め提訴するための議案を市議会9月定例会に提出しています。

市議会議長は…

 この「異例の事態」に議長が取材に応じました。

沼津市議会 髙橋達也議長(25日):「それぞれ登記の問題や売買契約などおっしゃっているので、そこはきっちりと静観していきたい。議会としては議案を審議するのが職責なので公平・公正の観点から、過去の経緯も踏まえて判断したい」

 沼津市が提出した「市議を提訴するための議案」は、10月16日の市議会最終日に採決が行われます。もし可決されれば、市は提訴に踏み切る方針です。

 (9月26日放送)