【詳報】特別養護老人ホームで集団食中毒…利用者2人死亡 医師に聞く…原因となったO‐157とは 

 静岡県西伊豆町の特別養護老人ホームで、腸管出血性大腸菌Oー157による集団食中毒が起き、利用者と職員合わせて33人に症状が出て施設利用者の男女2人が死亡しました。

O-157
O-157

 西伊豆町の特別養護老人ホームで11月6日以降、利用者と職員合わせて33人が腹痛や下痢、血便などの食中毒症状を発症。県によりますと、この集団食中毒の原因は腸管出血性大腸菌O-157によるものだといいます。

県の担当者(15日):「原因食品だが11月3日の昼食に提供された給食を推定している。炊き込みご飯、サバの竜田揚げ、がんもどきの含め煮、そばサラダ、澄まし汁、果物のパイナップルとなっております」

静岡県の会見
静岡県の会見

 症状を訴えた33人のうち入所者の76歳の女性が11月11日に、ショートステイを利用していた81歳の男性が15日に死亡しました。2人の死因は今のところ分かっていないということです。

県の担当者:「なにぶん、ご高齢な方々ですので、死亡に至った方も急変した方もいる。今後注視していかないといけない」

 施設は、食事の提供を名古屋市に本社がある業者に委託していました。今回の食中毒について業者側は…。

業者の担当者:「大変申し訳なく思っております。保健所と協力し、原因の特定をはかっていきます。会社として誠心誠意対応してまいります」

 県は15日から、業者の集団食中毒が発生した特養老人ホームの事業所に対し、営業禁止を命じています。

 厨房では11人が勤務。20年以上働いているベテランがいる一方で、勤務して数カ月のパートタイマーもいたといいます。

 食事の提供を委託していた特養老人ホームの施設長が16日朝、取材に応じました。

施設長:「亡くなられた方もいるし、症状がまだある方もいる。そのことについては大変、事態としては重く受け止めている」

特別養護老人ホーム
特別養護老人ホーム

O-157は「幼児と高齢者が重症化しやすい」

 腸管出血性大腸菌O-157とは、どのようなものなのでしょうか。

浜松医療センター感染症管理特別顧問 矢野邦夫医師:「(症状は)一般的に、腹痛、下痢、血便、吐き気、発熱が見られます。(潜伏期間は)普通は3~4日だが、早いと1日、長いと10日ですから、10日間は(発症の可能性が)十分にありえる。この感染症は、幼児と高齢者が重症化しやすい。溶血性尿毒症症候群という合併症があり、感染して入院が必要となる方においては、溶血性尿毒症症候群が問題になっていると推測できる」

矢野邦夫医師
矢野邦夫医師

 O-157による大規模な食中毒は、9年前、静岡市で発生しています。2014年7月に開催された、安倍川花火大会で、露店の「冷やしキュウリ」を食べた510人が、O-157を発症。114人が入院しました。

 この食中毒には季節や温度は関係しているのでしょうか?

浜松医療センター感染症管理特別顧問 矢野邦夫医師:「菌に汚染された食べ物を食べれば、誰でも、いつでも感染があり得るので、時期は夏が多いと思うが、どんな季節でも発生する感染症」

 家庭でも、肉を調理する場合は、注意が必要だと言います。

浜松医療センター感染症管理特別顧問 矢野邦夫医師:「お肉を調理した まな板や包丁を、十分な消毒をせずに、サラダなどを調理しないでほしい。必ず熱湯もしくは消毒薬で洗浄したあとに、(調理を)お願いしたい。牛などの肉に感染の可能性があることを十分了解して対応してほしい」

施設は通常通り運営 施設長「手洗い・消毒を怠らず進める」

白鳥衛記者:「食中毒が発生した西伊豆町の社会福祉施設です。こちらの施設は1日100人ほどの利用者がいて、食事は多い時に昼だけで120食ほど提供するということです。ただ、今回の食中毒を受け、施設は食事の搬入の仕方を変更したということです」

 施設では業者が食材を調達し、施設内の厨房で調理員が食事を作っていました。今回の集団食中毒を受け、社会福祉施設側は、12日から県内の別の施設で作った食事を利用者に提供しています。

施設長:「感染経路が食中毒と厨房内からの発生と保健所から受けておりますので、私たちは日常から食中毒に限らず、感染対策の方は行っておりますけども、基本的な手洗いであったり、消毒であったり、そういったことを怠ることがないように進めてまいるというふうに思っております」

 運営法人によりますと、西伊豆町の施設の運営は、通常通り続いているものの、現在、数名の利用者が施設の利用を控えているということです。