【リニア新幹線】田代ダム案突然の前進か? 水問題解決に光明か?
リニア問題をめぐり 田代ダム案を示していたJR東海に対し静岡県は14日突如東電との協議入りを認める文書を送りました。背景にいったい何があったのでしょうか。
貴社におかれましては、東京電力リニューアブルパワーと協議を進めていただくようお願いします」
14日静岡県からJR東海に送付された文書。
そこに記されていたのは、いわゆる「田代ダム案」について、県が“GOサイン”を出したという内容です。
大自然の中で目を引くエメラルドグリーンの湖。
大井川の最も上流に位置する「田代ダム」は東京電力のグループ会社が管理していて、大井川から水を取り、発電のために山梨県側へ水を流しています。
リニアの工事によって川の水が減る懸念のある「大井川の水問題」。
この解決策として去年4月にJR東海が提案したのが、ダムの取水量を調整してそれを大井川に還元する「田代ダム案」でした。
ただ、この田代ダム案を巡っては・・・
Q:今まで知事は全量戻しを求めてきたが、それに叶う解決策になる?
川勝知事(去年4月):
「ならないと思います。突然足蹴にされて、ちゃぶ台をひっくり返して「これ持っていくぞ」という感じになっている。その乱暴さには改めて会社の体質を垣間見る思いがした」
さらに現地にも足を運び、自らメガホンをとる場面も。
川勝知事(去年8月:田代ダム):
「今6〜7割。きょうの(ダムの)取水量は。ほとんどが田代ダムの方に取られている」
数々の場面で川勝知事は「田代ダム案」について、厳しい意見を突きつけてきました。
川勝知事(去年12月):
「田代ダムの取水抑制をすると、それが全量戻しの代替案だという、そういう言い方をJR東海がなさったわけですね。しかしながら、そもそもJR東海さんが取水抑制をするべき田代ダムの水利権を持っているわけではありませんから、部外者なわけですね。南アルプストンネル工事と田代ダムの取水抑制は別の事柄です」
これに対してJR東海は・・・
JR東海・金子慎社長(当時)(去年12月):
「私たちは地域に提案してよろしいかということを東電さんにお願いをして、それはいいですよと仰っていただいているわけです」
「3つの前提条件」
そうしたなか今年3月、JR東海は「田代ダム案」に関する協議を東京電力側と始めるための“3つの前提条件”について、大井川流域の市や町に理解を求めました。
JR東海・中央新幹線推進本部・澤田尚夫副本部長(3月):
「この“3つの条件”は東電から言われている条件。向こうからこういうことを確認してほしい、こういうことで理解してほしいと言われている」
東電側が示した条件。
それは、この田代ダム案を実施するのは
「トンネル工事中のおよそ10カ月間に限る」こと。
そして「県内でのボーリング調査に伴う水の流出への適用も含む」こと。
最後に「東電側の水利権に影響を与えないこと」の3つです。
これに、大井川流域からは・・・
島田市・染谷絹代市長(3月):
「田代ダム取水抑制案については、ほぼ全員が了解した。少し待ったと言ったのは県だけだった。(県は文書を)できるだけはやくまとめて、返して具体的な議論に入れるといい」
なぜ県は“待った”をかけたのか。
その理由について川勝知事は・・・
川勝知事(3月):
「水利権と関係ないと言われても、それが本当に関係ないかどうかは、JR東海が関係ないというのとは別にして議論するべきもの。軽々に水利権と関係ないと言うには、少し詰めなくてはならないと認識している」
その後、4月に県はJR東海に対し、「水利権」について、
「ダム案を根拠に水利権に関わる主張をしない」と修正案を送りました。
ところが・・・
JR東海・丹羽俊介社長(4月):
「当社の認識と静岡県の認識に相違がないことを確認するために、本日(4月26日)静岡県に文書を発信した」
再びJR東海から確認の文書が届きます。
田代ダムをめぐる県とJR東海との“やり取り”はこれを機に動きのない状況が続いていました。
静岡県から「GOサイン」が
ところが、ここに来て静岡県側から「GOサイン」が出る形に。
その背景の1つにあるとみられるのが、おとといの知事会見でのこんな場面です。
Q:リニアの関連で一点だけ、田代ダムの関係を伺いたいんですけれども、公式の表向きの動きとしては4月26日にJR東海が県に対して前提条件の文言についての見解を問う文書を出したのが最後になっていると思います。現在の協議状況についての認識をお伺いできますでしょうか
川勝知事(13日):
「これは去年の4月に突然出てきた案だった。これはもちろん、田代ダムの水利権を持っている東電さんの了解があるものと思ったんですけれども、それがとれないまま今日に来ているということでありまして、まだ明確な東電から、あるいは東電からJR東海を通してですね、田代ダム取水抑制案について、実現可能性について明確なご返事がまだ届いてない。少なくとも私の所に届いておりません。もし届いていれば、JR東海はすぐ持って来るでしょう。
Q:今の質問は現在のやり取りにおいてJR東海はその「前提条件」、これでいいですか?っていうの県に確認している段階というのを我々は承知しているんですが・・・
【県の担当者】今は大井川利水関係協議会の会員と今後の対応について調整しているところでございます。
Q:つまりそのボールは県側にあるという?
【県の担当者】現在は県の方で調整しています。はい。はい。他に?
Q:この問題に関しては、知事が言っていたことが間違っていたということでいいですか?
川勝知事(13日):
「そうですね。正確な情報を今初めて知りました」
Q:内部で報告が上がってなかったんですか?
「はい。今初めて知りました」
事務方との情報共有がうまくいっていなかったことが明らかに。
4月の時点で止まっていたやりとりは、きのうの文書をもって回答されました。
川勝知事(13日):
「水はみんなのものであり、同時に誰のものでもある、誰のものでもないという、そういう性質のものではないかと思っております」
ここにきて、南アルプスの水についてや、ボーリングをめぐる考え方など、これまでの主張よりもより柔軟な意見が出始めている静岡県。
今後、田代ダム案についても前提条件を東京電力側が了承すればより本格的な協議が始まることになります。