リニア推進の愛知県知事が静岡・川勝知事をチクリ「静岡工区は建設促進と書かれていない」 トンネル工事「環境の影響」協議始まる

 リニア中央新幹線の静岡工区の工事に伴う南アルプスの生態系への影響や環境保全策について協議する国の有識者会議が8日、都内で行われました。

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リニア推進の愛知県知事が静岡・川勝知事をチクリ「静岡工区は建設促進と書かれていない」 トンネル工事「環境の影響」協議始まる

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リニアのトンネル工事めぐる協議が新局面に

 リニア新幹線のトンネル工事をめぐる協議は、8日から新しいフェーズに入りました。

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国交省鉄道局 上原淳局長:「JR東海の様々な説明に対して、静岡県を始めとする関係者の納得が得られない状況が続いたことから、今回この有識者会議におきましては、新たな委員構成のもとで、リニア中央新幹線静岡工区における生態系等の環境保全に関する議論を行い、これを踏まえて、引き続きJR東海に対して指導・助言を行ってまいりたいと考えております」

 委員を務めるのは河川や環境などの専門家8人で、そのうち3人は静岡県の専門部会の委員です。

 会議の座長には生態系管理学を専門とする北海道大学の中村太士教授が選ばれました。

 これまでトンネル工事による大井川の水量への影響を検証するため、おととしから13回にわたって開催されてきた国の有識者会議。

 一方、8日から始まったのは「環境保全」に関する議論です。今回の会議をめぐっては…。

岸田文雄総理大臣(先月28日):「静岡県からの行政要請を受けて、環境保全に関する国の有識者会議、これを速やかに設置したいと思います」

「環境保全」に関する初会合

 8日の初会合では事務局の国交省鉄道局から今後の進め方について、秋ごろまでにかけて関係者へのヒアリングや現地視察を行う案が示されました。

 これに対して委員からは…。

東京大学(地下水学)徳永朋祥教授
「地域の実情をよく理解しないと、議論が非常に難しいのではという印象を持っている。現地視察の機会を早く持てるとありがたい」

静岡淡水魚研究会(県専門部会委員)坂井隆彦会長
「静岡県でどのような議論があったかを説明しないと、他の先生方の理解が十分進まないのではないか」

河川情報研究所(河川生態学)辻本哲郎所長
「生態系という視点では様々なことが関わってくる。これまで水利用の議論をしてきて、水利用に関わる生態系の問題に限定するのか」

国交省鉄道局 担当者
「水に限定するということではないと考えています」

大同大学(環境地盤工学)大東憲二教授
「トンネルを掘った時に、地表の水がどんな影響を受けるのかが一番大きな問題。工事の影響を受ける地下水と地表の水の関係を明らかにする方法をJR東海に考えてもらうか、この会議で何らか提言することがスタートだと感じている」

 国交省は環境保全の議論にかかる時間は「まったくめどが立たない」

画像1: 国交省は環境保全の議論にかかる時間は「まったくめどが立たない」

 国交省鉄道局は環境保全に関する議論にどのぐらいの時間が必要かについて、「まったくめどが立たない」と説明しています。

 会議終了後、オブザーバーとして参加した県の難波理事は―

画像2: 国交省は環境保全の議論にかかる時間は「まったくめどが立たない」

静岡県 難波喬司理事
「座長から非常に丁寧に進めていくような方向性が示されましたので、しっかりとした検討や議論がされるのではないかと期待しております。その一方で、この問題は2014年に環境影響評価が行われて、国土交通大臣意見、環境大臣意見が出ております。その後、JR東海から十分な環境影響評価、追加的な調査が行われていないことが問題の根本にありますので、しっかりとそこを議論していただくとか、ご指導いただくのが大事じゃないかと思っております」

 静岡工区のみ未着工となっているリニア新幹線。JR東海が目標とする2027年開業は極めて厳しい見通しです。

画像3: 国交省は環境保全の議論にかかる時間は「まったくめどが立たない」

愛知県知事は川勝知事に不快感

愛知県 大村秀章知事(6日):「あの場でいきなり紙を持って来るとは思いませんでしたので、そこはちょっと普通は、常識的には、普通は事前にこういうことをしますよって話があるもんですわな、普通社会人ならね」

画像1: 愛知県知事は川勝知事に不快感

 先週開かれた、中部圏知事会議で、静岡県の川勝平太知事が突然、壇上で大村知事に歩み寄ると、そのまま書類を手渡したのです。その書類というのが…。

愛知県 大村秀章知事(期成同盟会総会 都内 3日):「川勝知事から本同盟会への加入申請をする旨の意向が文書とともに提出されました。今後、会員の皆さまにご意見をうかがいたいと考えております」

 静岡県を除く沿線9都府県で構成される「建設促進期成同盟会」の加盟申請書です。

静岡県 川勝平太知事(2日 中部圏知事会議後の共同会見):「できる限り静岡県としても協力したい。反対しているということではなくて、南アルプスを守る、命の水を守るということを両立させなくてはなりません」

画像2: 愛知県知事は川勝知事に不快感

愛知県 大村秀章知事(6日 定例会見):「今回は建設促進に賛同だというのは書いてありまして、ですが、肝心の静岡工区については建設促進って書かれておられませんので」

 静岡県は3年前にも加盟を求めましたが、実現せず、今回が2回目の申請です。

静岡県 川勝平太知事(5月26日 自民リニア特別委後の取材):「私は入りたいと言ったにも関わらず、会長の大村さんから断られたといった訳です。そうしたら、今度は古屋さんから大村さんに振られて、『皆さん、川勝さんを期成同盟会に入れましょうよ』と」

 再申請のきっかけとなったのは、5月開かれた自民党のリニア特別委員会です。この会議で、山梨県の長崎知事が言及したというのが…。

静岡県 川勝平太知事(5月26日 自民リニア特別委後の取材):「田代ダムで取っている水を戻して差し上げるのはいい案だと思う。山梨県として推していると」

 JR東海がトンネル工事による水量の減少対策として示した田代ダムの活用案です。大井川上流の田代ダムでは、東京電力の発電のために山梨県側に水を流していますが、工事で流れ出る水と同じ量、取水を抑制することで川の水量を維持する計画です。

静岡県 川勝平太知事(5月25日 定例会見)
「山梨側に流れているんですね。早川町の方に流れているわけです。これを取り返したいと誰もが思いますよ」

水が流れる山梨・早川町長は「取水抑制案を提案」

画像: 水が流れる山梨・早川町長は「取水抑制案を提案」

 その山梨県早川町の辻一幸町長が静岡朝日テレビの単独取材に応じ、田代ダムの取水抑制案は早川町が提案したものだと明かしました。

山梨県早川町 辻一幸町長
「発電所で電気を起こしている部分だが、それを(静岡工区の工事で)減る分だけ返すことができないかという提案を1年以上前から工事の地元として提案してきた。水の問題もよく分かりますので、思い切って訴えたわけです」

 辻町長は6年前、町を訪れた川勝知事と面会しています。

静岡県 川勝平太知事(5月25日 定例会見)
「早川町の町長、東京電力の方々、一滴の水も譲らないと言われました」

 当時を振り返って、このように話していた川勝知事。しかし、その辻町長が田代ダムで水を抑制する案を受け入れられると表明したのです。
発電による、町への電源交付金が減額される可能性もありますが…。

山梨県早川町 辻一幸町長
「交付金が減るとなったら、JR東海が責任を持つなりして、東京電力に対しても早川町に対しても、応分の手当てをすることは当然のことだろうということは訴えています。環境とか、災害対策とか、水の問題とかを、もう少しみんなが納得するような形で出てくればいいと思っています。理解しないまま、ここで返事ができないというのが川勝知事の心境だろうと思うんです。私はその心境を同じ条件下で見ていて分かる。私は分かるから、一歩前に出て発言させていただいているというのが、今の私の心境です」

静岡市長は「取水抑制案」に期待感

 田代ダムが位置する静岡市も電源交付金が減額となる可能性がありますが、田辺市長は取水抑制案に期待感を示しています。

画像: 静岡市長は「取水抑制案」に期待感

静岡市 田辺信宏市長
「交付金の減少という影響があるかもしれません。しかし、静岡市への影響は早川町よりもさらに限定的であると考えています。私は議論すべき案だと思っている」

Q. 検討に値するということか?

A.「おっしゃる通り」

Q.知事はトンネル工事と別の話と言っているが、トンネル工事着工の条件に関連して、田代ダムの案は、検討の余地があるということか?

A.「私はトンネル工事と一体のものだと思っている。やはり合意形成をしていくことが大事なので、大きな議論の進展のきっかけになることを静岡市しては期待している」