「本命」浜松市長に大きなハードル、県内出身の官僚も…難航した自民の候補者擁立作業 静岡県知事選の舞台裏
「自民党県連の中沢公彦幹事長が店の中に入っていきました。今、浜松市長の鈴木康友市長が車から降りてきました。中沢幹事長に続いて店に中に入っていきました」
自民党県連の当時の幹事長、中沢公彦県議と、浜松市の鈴木康友市長。1年後の知事選に向けた極秘会談を、静岡朝日テレビのカメラが捉えていました。自民党の「本命」だった鈴木市長は出馬に前向きな反応を示したといいます。
ただ、そこには大きなハードルがありました。浜松市の行政区再編問題です。
関係者によると、鈴木市長の最大の後援者である鈴木修会長が、「行政区再編の条例化までが市長の公約だ」として、難色を示したというのです。
浜松市 鈴木康友市長会見(4月13日):「要請があったのは事実だが、私の積年の課題である区の再編も道半ばですし、それを放り出して、別のステージに行くのは考えられない」
その後、自民は県内出身の官僚に出馬要請したものの、実現しませんでした。そして、自民党県連が最後に白羽の矢を立てたのが、岩井茂樹氏でした。
自民関係者「川勝氏の土俵に乗ってはダメ」
選挙戦に入り、川勝平太氏が叫び続けたのが、「命の水を守る」という言葉です。
川勝氏演説(静岡・葵区 3日)
「命の水を守るために、私たちは立ち上がっている」
一方、岩井氏は選挙戦前半、リニア問題にほとんど触れませんでした。
自民党県連関係者
「リニアを争点化しようとする『川勝劇場の土俵』に乗ってはダメだ」
自民党本部の推薦を得た岩井氏は徹底的な組織戦を展開。決起集会にはコロナ禍にも関わらず、大勢の支持者が集まり、党本部からは大物議員が続々と応援に駆けつけました。
石破元幹事長 富士宮市
「何で人口が減るのか?」
加藤官房長官 浜松・浜北区
「やはり地方をしっかり活性化していきたい」
上川法務大臣 静岡・葵区
「いまの知事は12年終われば、もし仮に負ければ、こういう場合にはバイバイ、軽井沢に帰ってしまう人です。そうでしょ?」
大井川にこだわる川勝氏
川勝氏の陣営内でも、大井川流域以外でリニア問題ばかり取り上げることに慎重論もあったといいます。
しかし、川勝氏は県東部・三島市でも…。
川勝氏演説 三島市
「『富士の根を幾年くくる白雪の清き水湧く柿田川』という歌があるじゃないですか。地下水脈すごく大事なんです。実は大井川も南アルプスの地下水脈があって…」
県西部・浜松市でも…。
川勝氏演説 浜松・中区
「向こうは武装している、お金と組織と権力で、そういうものに負けてどうするんですか、浜松市民が」
そして、県都・静岡市でも…。
川勝氏演説 静岡・葵区
「ましてや、ここ(静岡市)とは直接関係ないからといって、62万人の人の命の水がかかっているのを、黙って静岡県民は放っておけますか? 絶対にできない。そんなことしてはなりません」
選挙戦中盤、情勢調査で川勝氏のリードが伝えられると、岩井氏も演説時間の多くをリニア問題に割くようになります。
岩井氏演説 島田市
「水は命の源、決して『政争の具』に使ってはいけないと思います。本当に大井川のことを神聖に思うのであれば、このようなやり方は間違っている」
しかし既に選挙戦は、リニア問題を前面に打ち出した川勝氏ペースで進んでいました。
川勝氏 焼津市
「当初は川勝だけなき者にすれば、そういうものすごい脅迫というか圧力があって」
川勝氏 浜松・南区
川勝氏:「全力疾走するとさすがに」
市民:「川勝知事頑張ってください」
川勝氏:「ありがとうございます」
市民:「南アルプスを守ってくださいね」
川勝氏 静岡・葵区
陣営:「大井川の自然を守る者は誰だー?」
市民:「平太―!」
陣営:「静岡県を誰よりも良くしようとしているのは誰だー?」
市民:「平太―!」
最終日の19日、静岡市で行われた「最後の訴え」で、この選挙戦で初めて、川勝氏の妻、貴美夫人がマイクを握りました。
川勝貴美夫人 静岡・葵区
「私どもは12年間静岡におります。これほど静岡を愛している人はいない。それが川勝平太です」