かつては川勝知事と田辺市長の『場外バトル』も 静岡市の歴史博物館オープンその目玉は /今週の静岡
静岡市 田辺信宏市長:「本日から博物館はグランドオープンとなりました。きょう(13日)は決してゴールではなく、新しいスタートであります。市民にとって大切な歴史を受け継ぐ公共の資産であります。どうぞ市民の皆さま方にはこの博物館をそれぞれの思いの中で育てていだだきますよう節にお願いを申し上げます」
戦国時代末期の道と石垣
去年7月にプレオープンした歴史博物館。総事業費およそ62億円。これまでは無料で観覧できる1階のみ公開されてきました。
林輝彦アナウンサー:「静岡市歴史博物館の目玉は何と言っても、まずは1階部分。戦国時代末期の道と石垣がそのまま残されているんです。つまり、戦国時代を生きた人々はまさにこの道を歩いていたということになります」
長いスロープをのぼると、13日から公開が始まった有料エリアに(基本展示観覧料 一般 600円 小・中学生 150円)。2階と3階の展示室には徳川家康や今川義元に関する資料など、常時およそ130点が展示されています。
家康元服の際に着用した鎧(よろい)の復元
その中でも目玉となっているのが―
林アナ:「静岡市歴史博物館、何といっても注目なのがこちらです。徳川家康が元服した際に着用したとされる鎧の復元なんですね。かなり細かいですよ。模様もそうですし、糸も当時おそらくこの色だっただろうというものを再現しているということなんですね」
こちらは家康が成人を迎えて初めて鎧を着用する「着初め」という儀式の際に、今川義元から贈られたとされる鎧のレプリカ。静岡浅間神社に所蔵されているものをおよそ4年半かけて再現しました。
静岡市歴史博物館 中村羊一郎館長:「作られた当時の色彩とか、その他全部を元通りに復元して戻した。鎧の糸、紅糸威(くれないいとおどし)が植物性の繊維で丁寧に染めたものですし、胸のところにある模様なども非常に丁寧に作られてある。できた当時とほとんど変わらないものだと思う」
また、久能山東照宮に所蔵されている、家康が関ケ原の戦いや大坂の陣を共にしたとされる甲冑のレプリカも目玉の一つです。
東海道を1つの屏風に…
林アナ:「さて3階に上がってきました。まず上がって目の前に見えるのが立派な屏風なんですね。東海道を1つの屏風にまとめて描いたものでして、こちらの屏風は見方があります。まずこちら江戸、そしてそのままずっと横に行きますと、品川、さらに神奈川、そして平塚と続きます。こちらは静岡市街地のエリアですね。一番端が安倍川です。ずっといって大井川までいきます。そして掛川・袋井・見附というふうに、1つの屏風で当時の東海道の様子を楽しむことができるんです」
3階では、江戸時代前期に描かれたとされる屏風がお出迎え。歴史に思いを馳せたあと、展望ラウンジからは―
林アナ:「美しい景色が広がっていますよ。雲がほとんどなく、晴れ渡っていると、これだけきれいに富士山を拝むことができるんですね。ぜいたくな景色ですよね」
歴史博物館では2月26日まで「徳川家康と駿府」をテーマに開館記念企画展を開催。家康自筆と伝わる肖像や、「着初め」の鎧の実物が特別に公開されています。
来場者は…
開館時間を迎えると、早速多くの来場者が展示に見入っていました。
愛知から 50代:「きょう開館するというので、主人が取ってくれました。素敵な展示でよくわかります」
富士市民 60代:「鎧とかすごいなと思って。テレビで見たり本で読んだりするのと、やっぱりそこに行くのと全然違うなって」
静岡市 田辺信宏市長:「歴史博物館を城下町・静岡の中心に整備をしたいというのは、昭和の頃からの30年来の構想でありました。昭和、平成でまた時代が続いて、私自身が市長としてアンカーの役割を務めさせていただくことになったというのを大変うれしく、また光栄に思っております」
知事と市長の『場外バトル』
1980年代に構想がもちあがった静岡市の「歴史博物館」。2015年に基本計画が策定され、きょうきのうの全面オープンに至りました。建設に向けては、田辺市長とあの人の“場外戦”が…。
静岡県 川勝平太知事(2016年):「ただのハコモノを造るというのは無駄遣い。突然その場所に62億円を使って造るということにはもう少し再考を要する。反対ということです」
2016年、川勝知事は「歴史博物館」は必要としながらも、62億円もの事業費がかかることから反対の意向を示しました。さらに…。
静岡県 川勝平太知事(2016年):「やっぱり駿府城を造ると。それを博物館として機能を持たせると」
当時持ちあがっていた駿府城公園での天守閣再建構想。川勝知事はまず、公園内に駿府城を再建し、そこに博物館機能を持たせることを提案しました。
ここから2人の対立がヒートアップします。
静岡市 田辺信宏市長(2018年):「(知事の提案の)実現可能性…発掘調査は始まったばかりですし、この発掘調査も文化庁とのやり取りの中で、かなり長期にわたることが想定される。そのあと天守台のこともあります。となると、(駿府城での)博物館、いつのことになるか分かりません」
静岡県 川勝平太知事(2018年):「歴史博物館が必要なのは知っているが、それをここに建てるのは別の話。いったんガラガラポンにするべき」
静岡市 田辺信宏市長(2018年)
Q.知事が静岡市はハコモノ建設をやめてしまえばと
A.「そんなことおっしゃったの? 世界を意識した都市経営の中、必要な所作をしていく。適正にその理念の中で投資していく」
翌年には駿府城公園の発掘調査で豊臣時代の石垣が発掘され、県が意見書を静岡市に提出しました。
「駿府城跡地の遺構は、それ自体が博物館機能を有しており、将来を見通せば二重投資となるリスクがある」
これに田辺市長は…。
静岡市 田辺信宏市長(2019年):「まったく二重投資ではない。歴史文化施設や東御門、巽櫓、坤櫓、そして発掘中の駿府天守台の遺構全体をフィールドミュージアムとして、1つの博物館に見立てた計画です」
ところが、その翌年には…。
静岡市 田辺信宏市長(2020年):「海洋文化施設、清水庁舎、そして歴史文化施設です。一旦停止をしたという決断をきょう機関決定した」
新型コロナウイルスの対策に予算を念出するため、事業の一時凍結を余儀なくされました。今期で市長を退く意向を示した田辺市長にとって、13日の全面オープンは、いわば“集大成の1つ”となりました。
紆余曲折あった歴史博物館について、川勝知事は―
静岡県 川勝平太知事(11日):「まあ立派な建物ができましたね。その目玉の一つが、結局、戦国末から徳川さんの時代の遺構じゃないでしょうか。ソフトで何をされるのかというと、レプリカを置くということでしょう。レプリカはどういうレプリカかというと、将軍の鎧だとおっしゃる。将軍の鎧の本物は東照宮の博物館にあるわけですね、この歴史博物館にどういうソフトを持ち込むかということが問われると思う」