マイクロバスで出張サービス こちらは老舗の眼鏡屋さん 3代目店主が仕掛ける起死回生の一手とは… 静岡・磐田市
女性客:「今までなかったでしょ。親切でいいと思いますよ」
男性客:「いいですね。こういうのはね。いないね。便利でね」
人々が喜ぶこのバスの正体とは・・・
静岡県磐田市駒場にあるメガネ店「おおいし」。創業から70年以上、メガネの販売や時計の修理などを手掛けている老舗です。
店を切り盛りするのは3代目の大石剛生(おおいしたけお)さん。細かい作業を丁寧にこなしていきます。
時計・メガネ おおいし
大石剛生 代表:「その人その人やっぱり目の状況というのは違いますので、調べたりするときは本当に親身になって(メガネを)作っています。特に個人店はそういうふうなところがあるかと思いますので十分に配慮してやってます」
地域に根ざした店として長年続けてきましたが、最近ではコロナや常連客の高齢化などによって、客足が少しずつ遠のいていると言います。
大石さん:「やっぱり来店される方っていうのは、少し少なくなったのかなというのは実感としてありますね」
マイクロバスの中は眼鏡屋さん
コロナ禍前は時計の電池交換などを含め月に60人以上の利用客がありました。しかし最近では一人も客が来ない日もあります。
そこで起死回生の一手として大石さんが考えたのが、マイクロバスを使った「移動メガネ店」でした。構想期間およそ1年半。老舗メガネ店の3代目が、こだわり抜いて作ったマイクロバスの中は…!?
Q:こちらの機械はどういったもの?
時計・メガネ おおいし
大石剛生 代表:「これが目の視力を詳細に測っていくものになります」」
Q:これはお店にあるものと?
大石さん:「同じ。こちらの方が実は言うと後継の機種ですのでより詳しく(検査が)できるものになる」
時間のかかる修理や、広いスペースが必要な作業以外、実店舗とほとんど同じサービスをすることができます。
品揃えも、順番待ちのソファーも
大石さん:「フレームに関してはこちらにありますので、こういった形で、お店ほど並べることはできないんですがこちらに乗せるという形で対応しています。」
陳列できるメガネのフレームは250本以上、様々な年代や好みに対応しています。そして順番待ち用のソファーもしっかりと装備しています。これだけでもメガネ店としては十分な設備ですが、車の後ろにはこんなものまで・・・。
大石さん:「ここで乗ってもらった状態で、後はこっちのリフトで、一番上まで来ますので、これで自分で入っていただく」
車いすでも利用できる仕様にしました。
資金は、中小企業の設備投資を支援する国の補助金を活用。
中古のマイクロバスを知人にリフォームしてもらうなど、極力出費も抑えました。それでも設備や機材などを合わせ、もう一軒店が開けるほどの費用がかかったと言います。
老人ホームに出張サービス
この日、大石さんが依頼を受けて向かったのは磐田市内にある老人ホーム。今回が初めての訪問です。施設までは、もちろん自分で運転します。
時計・メガネ おおいし
大石剛生 代表:「本日はよろしくお願いします」
老人ホームの担当者:「お待ちしておりました。きょうはありがとうございます」
最初の依頼は、歪んだメガネの調整です。
大石さん:「鼻のとこ曲がってますね。じゃあちょっとこれ直します」
女性客:「いやうれしい」
こちらの女性は、5年前に運転免許を返納しているため、なかなかお店まで行けなかったと言います。歪んだメガネはその場で調整。あっという間に元通りです。代金は出張代として300円。
こちらの男性は・・・
男性客:「腕時計くらい」
大石さん:「腕時計か。持ってきてなかった」
思いがけず、時計修理の依頼が・・・。始めたばかりのサービス、お客さんの声はとっても貴重です。修理は次回ということで、今回はサービスで視力検査を行いました。
大石さん:「きょうは作らなくても大丈夫そうなので。目も結構しっかり見えていると思いますので。出張サービスでの料金は、店頭価格に10%がプラス。それでも、珍しい移動メガネ店に利用者は・・・」
男性客:「いいですね。こういうのはね。いないね。便利でね」
女性客:「親切でいいと思いますよ。装着がとても悪いなと思っていたんですけどなかなか行く機会がなくて行かなかったです。今直していただいてよかったです」
課題乗り越え続く挑戦
移動手段が限られる高齢者から大好評の移動メガネ店ですが、サービスは始まったばかり。課題もあります。
時計・メガネ おおいし
大石剛生 代表:「周知徹底というところが一番難しい部分。うちがやってるよってところは広まっていかない部分はある」
5月からスタートした移動メガネ店ですが、5月の稼働日数はわずか3日。そんな状況を打破しようと、大石さんは車両を実際に見てもらいながらの説明会をスタートさせました。この日訪ねたのは、浜松市内にある老人ホーム。
大石さん:「こういうふうな形で(メガネが)入っていますので選んでいただいて」
朝霧の園
松本昌久施設長:「今外出ができないので来ていただいて選べるといいかなと思う」
松本昌久施設長:「なかなか検査ってできなかったりするのですけど、ここでできるってことを聞いたらやはり高齢者の方も、よりいいメガネを作りやすくなるかなという印象を受けた。どうしてもご家族さんにメガネを替えてほしいとお願いしたりするがなかなかこのご時世行かれなかったりここに来られなかったりするのでこういう機会があればいいかなと思いました」
手応えは上々。今後は福祉施設だけでなく、移動手段が少ない山間部でのサービス展開も視野に入れ、利用者の増加を目指しています。
大石さん:「うちの経営も苦しくなっているという打開策の一つですので、そういった意味ではフットワーク軽く皆さんのところへ行くことができればなと思っている」
厳しい時代を乗り越えるため、老舗メガネ店の挑戦は続きます。