「救助は命がけ」…無謀な富士登山に「救助有料化」求める声 埼玉でできても静岡で難しいワケ 数々の高い壁とは 静岡県

無謀登山防止に静岡県ワーキンググループの初会合

 富士山への閉山期の登山をめぐり、対策を強化する動きが進む中、救助費用の有料化や登山禁止のルールづくりには、一筋縄ではいかない様々な「壁」があります。

救助も「命がけ」 (提供:静岡県警)
救助も「命がけ」 (提供:静岡県警)

 19日、静岡県庁では、無謀な富士登山を防ぐための取り組みなどを検討する、県のワーキンググループの初会合が開かれました。会合には、登山規制や登山管理を行う富士山世界遺産課をはじめ、県道の通行規制を行う部署や消防ヘリを担当する部署などが参加。山岳遭難救助隊を持つ県警もオブザーバーとして加わりました。

 会議の多くは非公開で行われましたが、閉山期間中の安全対策については大きな話題なったようです。

静岡県のワーキンググループ初会合(19日)
静岡県のワーキンググループ初会合(19日)

富士山周辺自治体のトップも知事に要望

 また、同日には富士山周辺の自治体のトップらが知事室を訪れ、閉山期間中の登山禁止を条例で定めることや、救助費用の有料化を求める要望書を鈴木康友知事に提出しました。

 要望書を提出した中には無謀な登山者に対し、度々「苦言」を呈してきた富士宮市の須藤秀忠市長の姿もありました。

富士宮市 須藤秀忠市長
(5月11日)「(現在は)自己責任になっていない。遭難したら助けてもらえばいい。それではとんでもない話」
(6月8日)「地元としては迷惑な話」

富士山周辺自治体トップが鈴木康友知事(左)に要望書提出(19日)
富士山周辺自治体トップが鈴木康友知事(左)に要望書提出(19日)

富士宮市長「救助も命がけ」

 鈴木康友知事に対しても19日、直接訴えました。

富士宮市 須藤秀忠市長
「我々も、消防署員とかいろいろな部下も命がけでもってやらなきゃならない、そういう思いをさせたくない」

静岡県 鈴木康友知事
「国としても富士山という特定の山だけではなく、全体にも関わることだということで、割と慎重に対応…」

残雪がある富士山での救助活動 提供:静岡県警
残雪がある富士山での救助活動 提供:静岡県警

知事「国全体にかかわる」

富士宮市 須藤秀忠市長
「私らの狙いは富士山に限って言っている話で、全国の山にそういうふうにしろとは…」

静岡県 鈴木康友知事
「もちろん。ただ、法律というのは全国にかかってくるので…」

富士宮市 須藤秀忠市長(右)
富士宮市 須藤秀忠市長(右)

 周辺自治体からの要望に対して、県も対策を練っている最中ですが、県は法的なハードルが高い問題でもあるといいます。

静岡県危機管理部 大嶋文彦理事:「登山規制をする上では、登山の自由という部分と公共の福祉という観点から、どこまで強く(規制を)かけるかという論点がある」

 閉山期の登山禁止については、現在、閉山期の登山ルートは「通行禁止」としていて、違反すれば罰則もありますが、未整備の別ルートを通ることや禁止の柵を越えることもできてしまうのが現状です。

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県担当者「一律での禁止は難しい、一部禁止などが現実的」

 実際に、山梨県や静岡県などでつくる適正利用推進協議会が出しているガイドラインにも「夏山期間以外の時期は、十分な技術・経験・知識としっかりとした装備・計画を持った者の登山は妨げるものではないが、万全な準備をしない登山者の登山は禁止する」としていて、全面的な「登山禁止」には至っていません。

 県の関係者からも、「登山規制の必要性は分かるが、登山の自由とのバランスから一律での禁止は難しく、登山計画書や装備などに一定の基準を設けるなど、一部禁止などが現実的なのではないか」などと頭を悩ませる声が上がっています。

救助有料化を始めた埼玉県との違い

 また、県のヘリ救助費用有料化については、それを阻む要因の一つに県警ヘリと防災ヘリの役割分担がないことがあげられます。富士山での遭難救助を担当するのは、それぞれ1機ずつある、県警ヘリ、県の防災ヘリ、静岡市消防局と浜松市消防局のヘリです。事案ごとに出動できる態勢も異なることから、これら管理者の違うヘリに明確な役割分担もなく、県の防災ヘリだけ条例で有料にすることは、法的な公平性からも難しいといいます。

 一方、埼玉県では2018年から対象山岳地域での防災ヘリでの救助を有料とする条例を施行していますが、埼玉県の場合は、遭難救助を行うのが県の防災ヘリのみであるため、こうした制度が可能だということです。県は、こうした埼玉県の事例なども踏まえ、山梨県と歩調を合わせながら、閉山期の登山対策について検討していくとしています。

 今年もまもなく、富士山は山開きを迎えます。「自己責任で登る」ことに、どこまで県が対応すべきか、管理・監視のコストも踏まえた現実的な対策を練るためには、多くの課題の検討が必要です。