幅10センチ…平均台の東京五輪メダル候補、芦川うららの決断「水鳥体操館に残って五輪に出ます」 静岡・富士市出身
「来年は試合があると信じて、目標を持って、その試合までに自分のやりたいことが発揮出来たらいい。そういう気持ちで1月4日の練習に気持ちを新たに参加してください」
2020年は飛躍の1年
去年の大みそか。2020年最後の練習を終えた静岡県富士市出身の体操・芦川うらら選手。高校3年にして、東京オリンピック種目別・平均台でのメダル獲得が有力視される彼女にとって、2020年は飛躍の1年でした。
芦川うらら選手:「コロナがあって、いろいろ試合がなくなってしまって、モチベーションを保つのも大変だったけど、試合の面では結果を残すことが出来て、周りでたくさん支えてくれる方々がいて、そういう人たちに対するありがたみを感じました」
舞台は高さ1メートル25センチ、幅10センチ
高さ1メートル25センチ、幅10センチの台の上で、ダイナミックな演技とその芸術性を競う体操の平均台。競技中の視界は、上下左右が目まぐるしく変化し、わずかしかない足場でアクロバットな技を決めるには超高度な技術が必要になります。
中野結香アナウンサー:「靴が両足並んで、入りきらないほど細い平均台の上。少しでもズレれば落下してしまう種目なのですが、芦川選手は平均台から目線を外した高難度の技を多く実施しているんです」
芦川選手の演技の中でも難しい技の一つ、「交差輪とび」を見てみると、平均台からは完全に目線が外れています。にもかかわらず、台にピタっと吸い付くような着地。オリンピックは1年延期されましたが、高難度かつ安定した演技に磨きをかけ、先月の全日本体操選手権・種目別決勝では初めて日本一を手にしました。
ただ、オリンピック予選を兼ねたW杯も3月に延期され、ランキング1位でメダルの有力候補と目される芦川選手もまだ正式には出場が決まっていません。
芦川うらら選手:「(ランキングの)ポイントは1位になっているけど、まだ一戦あるし、気が抜けない状態なので、W杯最終戦も優勝することを目標にしています。(オリンピックの延期は)すごくショックというわけではなくて、2021年になったということは、自分の演技の質とか技を磨く期間が増えたととらえられたので、良かったかなと思います」
平均台が得意種目になった理由
変化を前向きに捉えて成長につなげた芦川選手。この「前向きさ」が平均台のスペシャリストとなる原動力でした。
小学2年生からコーチを務める水鳥政弘監督が、驚きのエピソードを教えてくれました。
水鳥政弘監督:「なぜ平均台が得意の種目になったかというと、それ以外の跳び箱とかマットとか床とか跳馬ですね。そういう運動はどちらかというと得意ではなかった。なので、平均台の練習をたくさんやって、作品として出来上がっているか、僕たちは指導しながら、そこを目指しました」
芦川選手:「初めて小学4年生の時に県ジュニアに出て、平均台以外の種目が全然できなくて、いろんな人に負けてたんですけど、平均台があったから、個人総合が上の方にいったので、そこから平均台を頑張ろうと思いました」
平均台の存在…「人生を変えてくれた」
中野アナ:「芦川選手にとって平均台ってどんな存在ですか?」
芦川選手:「自分の人生を変えてくれたものだと思います」
毎日のように静岡市の練習場まで足を運ぶ芦川選手。正月三が日は、束の間ながら貴重な連休です。大学入試に向けて勉強に励む同級生もいる中、芦川選手はある決断をして、新しい1年を見据えていました。
芦川選手:「来年は(大学に)進学せずに、水鳥体操館に残ってオリンピックに出るということにしました」
家族と相談して決断…母「すごい」
地元静岡から世界に挑む。家族と相談しての決断でした。
母、孝子さん「自分の子のことを、こんなこと言うのはおかしいと思うけど、あ~すごいなって。それが本当のところの気持ちで。せっかく1年もらったんだから、後悔しないように思い切って挑戦してもらいたいなと。そういう時間が増えたと思って頑張ってもらいたいです」
姉はジュニアのアジア大会で優勝…競技者しか分からない悩みも相談
母親とともに彼女をそばで支えるのが、姉の七瀬さん。今は競技から離れていますが、ジュニアのアジア大会で優勝するなど、国際舞台でも活躍する姿を妹に見せてきました。
姉、七瀬さん:「競技をやっている人にしか分からない悩みもあるので。何年か前、(うららが)本当に全部の技が怖くなった時期があって、そういう時にどうしたらいいんだろうと、相談というか悩みを聞いていました」
芦川選手:「体操から離れたいと思ったこともあります。お姉ちゃんに相談して、自分のペースでやればいいんだよって声をかけてもらって、それで、最後まであきらめずにできたので、本当に支えてくれることがありがたいなって思います」
「いつも通りの演技をして、東京五輪の平均台で決勝進出を」
支えてくれる人たちへの感謝を胸に、迎えた2度目のオリンピックイヤー。日本を代表する平均台のスペシャリストが静岡から世界に挑みます。
芦川選手が書いた色紙には…
「いつも通りの演技をして東京五輪 平均台で決勝進出」
芦川選手:「やっぱり、一生に一度のチャンスを絶対に逃したくないので、笑って終われる1年にしたいなと思います」